GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第15回】

1.品質方針と使命
 GMP省令が改正され、上級経営陣の責任についての条文が新設されるようだ。上級経営陣の責任は、ICH Q10医薬品品質システムガイドラインで求められていたが、法令化されることにより、今まで、指導の範疇であったものが、GMP省令違反となることを認識しなければならない。上級者経営陣の責任として、品質方針を示さなければならない。品質方針として、患者のための安心、安全、高品質を謳う企業は多いが、甚だ疑問に感じる。私は、これは、製薬企業の使命だと思う。また、薬機法やGMP省令等の遵守など、コンプライアンスを方針とする企業も多い。コンプライアンスの遵守は当然のことであり、製薬企業なら、薬機法やGMP省令を遵守することをわざわざ方針とする必要はない。
 多くの企業が従業員に目標を立て、その業務を遂行できているか報告をさせているだろう。医薬品品質システムガイドラインでも、経営陣が示した品質方針に沿って、品質目標を立て、その目標を達成するために、計画を立案しなければならない。逸脱0を品質目標として、その実効のためにSOPの遵守などを計画としていることもあろう。しかし、それでいいのか考えてほしい。本来、GMP省令第10条で、手順書や指図書に基づき製品を製造することが規定されている。手順書や指図に従わない製造は、コンプライアンスとして法令違反なのである。
 製薬企業は、そもそも医薬品供給者として、どのような使命を担っているのか、そして、従事者一人一人にその使命を果たすために、何をすべきかを品質方針として示すことが必要である。その為に、製造部門、品質部門、製造所のみならず、企業として、人事や営業、開発など、すべての部署がその方針に沿って、活動すべき目標を立て、実行することが医薬品品質システムガイドラインで求められている。それは開発から終売するすべての過程を通じ、品質システムを構築せねばならないということである。
 コンプライアンスとして、データの信頼性など当局の規制だけでなく、世の中が求める品質システムの構築は、より厳しくなっている。製薬企業がまずすべきことは、より安心、安全で高品質な医薬品の提供であり、本来業務である医薬品の品質管理を含めた生産供給の業務に支障がきたすような目標管理や報連相などの業務の負担を増やすべきではない。GMPは、手順や記録の作成など多く文書管理を求めているが、それは、医薬品の製造管理や品質管理の業務が適切に運用され、品質システムが構築されていることを証明する手段であって、本来業務を疎かにしては、本末転倒である。目標は、本来のルーチン業務の進捗管理のための手段として考えるべきで、新たな業務として負荷をかければ、多忙さからのヒューマンエラーを招くことになる。経営陣やマネージャーはその点を十分認識して、改正GMP省令の対策を行うことが肝心である。
 そもそも、目標とは計画を適切に実施することにより成し遂げられなければならない。目標が成し遂げられない無理なもの、夢物語となるなら、従事者のやる気もでない。「逸脱0」を目標としたとき、CAPAの有効性確認の実施などにより、再発防止の徹底が計画でき、実現可能かどうかリスク分析をすることが必要である。そのために、リスクマネジメントや品質照査としての年次レビューを行い、マネジメントにつなげ、次年度の品質方針を決定することとなる。「逸脱0」の目標の達成のために、逸脱の発生の報告を怠り、隠ぺいすることになったり、基準を歪めたりすることがあってはならない。新規製造品目に関する変更管理で、当初のリスク分析が甘く、予想外のリスクが発覚したなら、次の品目にリスク分析を徹底できるよう目標や計画を見直すことをマネジメントレビューで経営陣が指摘し、方針に反映しなければならない。

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