オーナーのプロジェクトマネジメント【第25回・最終回】

 前回で、プロジェクトステージをベースにした記載は終了し、今回は最終的なまとめを記載する。
 
参考 以前に記載した記事の目次
 1.  はじめに
 2.  プロジェクトステージの概要
 3.  何をマネジメントするか
 4.  プロジェクト計画に関連する主要な問題点
 5.  プロジェクトマネジャーの役割と責務
 6.  プロジェクトマネジャーの資質
 7.  プロジェクトで使用することば
 8.  外部への依頼範囲
  9-10. FS(Feasibility Study)ステージ
 11-13. 基本計画(概念設計)ステージ
 14-16. 基本設計ステージ
 17. 発注方式
 18-19. 詳細設計ステージ
 20-21. 製作・施工ステージ 
 22-26.
 検証ステージ【その1~5】
 14-16. 基本設計ステージ
 27. プロジェクトの引き渡し(コントラクターからの引き渡し)
 28. プロジェクトの引き渡し(製薬企業内の引き渡し)

29. プロジェクトマネジメントのまとめ
 
(1)プロジェクトは「人」による
 プロジェクトを適切に進めるための重要なポイントは、「人」である。特にプロジェクトマネジャー(PM)の資質によるところが多い。(第3回の5項、6項を参照)製薬業界のプロジェクトエンジニアリングの世界は狭いものである。例えば、A製薬会社のB氏がPMならプロジェクトはスムーズに進むと思えるが、C製薬会社のD氏ならうまくいかない、といった情報が流れるほど狭い業界である。製薬会社に限ったことはない。Eエンジニアリング会社のF氏がPMならスムーズに進むが、GゼネコンのH氏ならよく問題が発生するといった情報も流れる。情報は別として、実際に携わる人次第であるのは事実である。もちろん企業体質も問題ではあるが、同じ企業の中でも人による差が明確にある。
 発注側の製薬企業としては、このプロジェクトに携わる発注先のエンジニアリング会社やゼネコンのPMを指名できればよいが、タイミングや企業の事情があり、なかなか難しい問題である。そこで、見積段階でのヒアリングにおいてPM担当予定の方に質問を行い、スムーズな回答が得られるかなどを判断材料として、このプロジェクトに適している資質かを見抜くことも重要なステップである。とにかく、「人」による問題が起こってから対処するのでは時間的に間に合わない。
 一方、受注側が製薬会社のPMを選択することは不可能である。よほど裏工作のできるほどの強いパイプを持っている場合は別であるが、通常は、受注側は何も言えずに発注側のPMに従わなければならない。明らかに問題が発生する可能性が高いような指示を発注側のPMがおこなった場合に、受注側は問題点を明確にして発注側を説得する必要がある。あるいは問題が発生するかもわからないが、発注側のPMの指示どおりに従うといった場合もある。このように「人」および「人との関係」がプロジェクトに大きく影響する。
 発注側のPMは、受注側の意見具申に耳を傾けるように努力しなければならない。しかしすべての意見をすべて受け入れるのではなく、客観的にその意見を判断できる資質を要する。受注側の意見に対して、その意見を取り入れない理由を、正確に説明できることも重要である。
医薬品製造プラントは既製品ではなく、プラントごとに異なるものであり、まさしくハンドメイドであり、「人」が作り上げていくものである。工事や製作に使用するボルト一本のミスがあっても大きな影響が発生する。まさに、「人」しだいである。

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