製薬工場におけるヒューマンエラー対策の考え方【第11回】

前回、ヒューマンエラーの原因として「思い込み」を取り上げましたが、「思い込み」は人間が「行動」を起こす前の段階「判断」に関わるエラーにあたります。今回はこの「判断」を含め、人間が行動を起こすときの認知から行動のプロセスに着目し、ヒューマンエラーの原因とその対策について考えたいと思います。
 
ヒューマンエラーは人間が行動を起こす際の3つのプロセス、「認知(確認)」、「判断(決定)」「行動(操作)」の、いずれかの段階で発生すると考えられています。
「認知段階」のエラーは知識不足や理解が足りないときなど、認知レベルが低い場合に発生します。人は学習や経験に基づき獲得した情報を知識として記憶し、これを基礎に様々な行動に必要な判断を行いますが、知識が不十分だったり間違っていたりすると判断を誤り、正しい「行動」が実行されず、ヒューマンエラーが発生します。この認知段階のエラーに対しては、教育や学習による必要な知識の習得が有効な対策と考えられます。
 
「判断段階」のエラーは思い込みや焦りなどが原因で正しい判断ができないときに発生します。「思い込み」の影響を回避するためには作業プロセスに確認行為を追加し、標準作業として規定し関係者に教育・周知することが有効な対応の一つと考えられます。「焦り」などの行動特性が原因と考えられる場合は当事者の個性、業務適性、業務への取り組み姿勢などに加え、作業環境、業務プロセスなど幅広い視野からその原因を考察し対策することが望まれます。
なお、思い込みによるミスは、例えば、中途採用者が、他社での経験を基に自らの判断で作業を進める、といった場合にも発生しがちですので、雇用の流動化が進む昨今の状況下ではこのような点についても注意が必要です。
 
「行動段階」のエラーは、不注意や体調不良など当事者自身の問題により集中力が欠如している場合や作業技術が未熟な場合、また、機器の操作や製造の手順が煩雑で難しいことなどが原因となり発生するケースです。「集中力」の欠如に対しては、生活習慣や体調管理など自己管理に問題ないか確認し、必要に応じ改善指導を行う、また、作業の切りのいいところで短い休憩をとり、ストレッチ体操などでリフレッシュすることなどが有効と考えられます。特に、目視による異物検査などの場合、過度な集中力と目の酷使を伴うことから、通常より短い間隔で休憩や人員交代を行うことが推奨されています。

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