製薬メーカーにおけるコア人財の育成【第6回】

 1. 人事マネジメントと戦略「人事管理から人事マネジメントへ」
  1.3 戦略人事(人事部門の経営への積極参加)
 
 これまで、管理職の業務が「管理」から「マネジメント」へ、すなわち、「ヒトを引っ張っていくこと」から「ヒトの能力を引き出していくこと」へと大きく変わってきたことを述べてきた。このことは、管理職の業務にとどまらず、企業経営の大きな転換をも意味している。すなわち、働き方の多様化や雇用の流動化が起こり、長期雇用を前提とした「階層別マネジメント」から一人ひとりの役割と責任に配慮した「個別マネジメント」への転換も起こり始めているのである。これにより、人事の業務がより複雑になり難易度も増してきた。
 今回は、人事関連マネジメントが経営そのものであり、将来を決する重要な責務であり、経営とは切り離すことができないことを再確認してみたい。とくに、人財開発・育成の観点から深掘りをしたい。
 
 
 ハーバード・ビジネススクールのJohn P. Kotterによるヒューレット・パッカードに関する研究で、とくに創業まもない企業には「人事部門はいらない」という発表をしている。すなわち、人事関連マネジメントは経営そのものであり、経営とは切り離すことができないとしている。企業規模が拡大し、業務内容が多様化するにつれ、人事専門の担当部署が確かに必要になってくるであろう。しかしながら、人事部門は、これまでの企業存続のためのルーチンワークにとどまらず、将来に向けての基盤づくりを含む戦略策定及びその実践に大いに関わることが益々求められ、経営とは切り離せないことは確かである。
 奇しくも「経営を変える人事になるためには何が必要なのか。どの様な知識、スキルが人事には必要なのか」というメインテーマで、2013年5月から6月にかけて「HRサミット2013:「人事」×「経営」 経営に資する人事になる(主催: HRプロ株式会社 寺澤康介社長)」が開催された。筆者が、常日頃考えていたテーマが大きく取り上げられ、この集いを切っ掛けに多くの専門家とのディスカッションの機会が与えられたことに感謝したい。
 ところで、ミシガン大学のDavid O. Ulrichは、人事部門の役割を「戦略の実現」、「効率的経営の実現」、「従業員からの貢献の促進」、「変換の推進」として、次のように整理している。
 
 (1).戦略やビジネスのパートナー(Strategic partner)
 (2).変革のエージェント(Change agent)
 (3).管理のエキスパート(Administrative expert)
 (4).従業員のチャンピオン(Employee champion)
 
 とくに日本では、(3)及び(4)はともかく、(1)及び(2)が弱いと言われている。このことは、日本の大学には人事という専攻がなかったこと、そして、伝統的な企業では人事部門に必ずしも重要な人財を配置しなかったことに起因しているのかもしれない。今回は、人事部門、とくに人財開発・育成部署の(1)及び(2)に関わる役割と責任について考えてみることにする。さらに、(4)の社員の声を経営者に伝える役割と責任についても言及したい。

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