ジェネリック医薬品の四方山話【第7回】

~バイオウエーバー~

 米国のFDA(医薬食品局)では、ジェネリック医薬品に対する品質に対するクレームを常時受け付けていて、そのチェックが行われている。こうした例の中で、製品回収にまで進んだ事例を見ていこう。
 2007年に、FDAは一般名「塩酸ブプロピオン」を含む抗うつ薬で、グラクソ・スミスクライン(GSK)の「ウェルブトリンXL300mg」(徐放錠)を、テバのジェネリック医薬品「ブテプリオンXL300mg」に使用を切り替えた患者が、効果や副作用に関して好ましくない影響を経験したという市販後報告85件を受け取った。これらのうち78件は、先発からジェネリック医薬品に切り替えた後、うつ症状が悪化し副作用も出たという報告である。そして治療薬をもとの先発品に戻したところ、患者の半数以上はうつ症状の改善や副作用の軽減がみられたという。
 テバのジェネリック医薬品「ブテプリオンXL300mg」は2006年、FDAによって承認された。承認の根拠は「ブテプリオンXL150mg」が、先発の「ブテプリオンXL150mg」との比較で有効成分の塩酸ブプロピオンの血漿濃度測定による吸収速度と量に有意な差がみられなかったことにある。ただ300mgという高用量ではてんかん発作の危険があるので、健康人ボランテイアによる血液濃度測定による生物学的同等性試験は行われていなかった。
 つまり低用量における生物学的同等性試験をクリアしていることを理由に高用量の生物学的同等性試験を免除した例である。こうした生物学的同等性試験免除を「バイオウエーバー」と呼ぶ。こうしたバイオウエーバーは健康なボランテイア保護のため認められていることであった。つまり後発のブテプリオンXL150mgと300mgの間では薬物動態プロフィルに差があるとは考えられないということを前提に、高用量の300mgをバイオウエーバーで承認していたということだ。ではこのXL150mgの先発とジェネリック医薬品の血漿濃度・時間曲線を見てみよう。
 

(FDA資料:Review of Therapeutic Equivalence Generic Bupropion XL 300mg and Wellbutrin XL 300mg)

 この図表を見てまず気がつくのは、ジェネリック医薬品のブテプリオンXL150mgの最高血中濃度到達時間(Tmax)が、先発品のウェルブトリンXL150mgより2~3時間、早いということだ。ただ承認に当たってこのTmaxの時間差は承認要件には含まれていないので問題とはならない。承認要件の決め手は先発品とジェネリック医薬品の薬剤の最高血中濃度(Cmax)と時間的血漿濃度下面積(AUC)とが、両者の比較で90%信頼区間80%~125%内に収まっているということである。確かにこの両者は多少の差異はあるが、承認範囲に収まっていた。
 

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