エッセイ:エイジング話【第61回】

2024/03/15 施設・設備・エンジニアリング

布目 温

量と質

量と質

 医薬品は品質の良いものを継続して供給する義務があります。この義務はそう簡単に運ばないのが常です。特に、少量生産から大規模なロット生産へ移る過程において、クリアしなければならいポイントが幾つかあります。
 半ダースの湯呑なら、同寸法・同じ色調で作る自信ありですが、100個注文受けたら5~6個は寸法外れになります。ここは、プロ職人と素人の違いでしょうか? 
 米軍基地に近い沖縄読谷村(よみたんそん)にて作陶される作家、上江津(うえつ)先生を尋ねた時、「君は1つ1つ好きにつくれて羨ましい」と言われました。注文どおりに作るのがどの世界もプロなのです。

 医薬品造りにおいて許可を受けた集団のみが製造・販売出来るのです。製薬用水施設にもバリデーションが導入された頃に、なぜ、当たり前の書類を作り他の人がチェックするのか?納得できませんでした。
 ところが、安定した品質の医薬品を製造するには、安全な製薬用水を準備する必要があり、エビデンスとして書類保管が必要だったのです。
 さて、2023年9月に弁当を買って食べた人が体調不良を訴えた事故で、この弁当は青森県八戸(はちのへ)で製造された北海道産特選海鮮物贅沢丼だったと判りました。
 このニュースを訊き、新鮮な海鮮物を北海道から八戸まで移送する間に傷んだのかと思いましたが報道によると、嘔吐や下痢を発症した人は遥か離れた広島県マーケットで買い食べたと言うのです。
 次に、宮城県マーケットでわっぱ飯を買い食べたところ、嘔吐やしびれ症状が出たとの報道が続きました。この二つのお弁当は、同じお弁当屋さんが製造したと聞き驚愕しました。
 取材に応じたお弁当を食べた人は、「今思えばご飯がネバネバしていた」と言いました。これを受け八戸市保健所は、黄色ブドウ球菌とセレウス菌による食中毒だと断定し、追跡調査で食中毒原因は、八戸から岩手県へ発注していたご飯の管理に問題があったと断定しました。
 この問題とは、30℃と決めた温度管理を守らず、熱いままで岩手県から八戸まで運んだことだったのです。

 

 

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執筆者について

布目 温

経歴 布目技術士事務所
技術士 衛生工学部門:水質管理
1972年栗田工業(株)入社、1992年野村マイクロ・サイエンス(株)入社。2011年布目技術士事務所(製薬用水コンサルタント)開設。製薬用水のスペシャリスト。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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