オーナーのプロジェクトマネジメント【第23回】

 今回は検証ステージ後の引き渡しについて、記載する。プロジェクトマネジメントにおける一般的な引き渡しは、コントラクターから製薬企業への引き渡しと、製薬企業内のプロジェクトチームからユーザー部門(生産部門)への引き渡しの2種類がある。今回はコントラクターから製薬企業への引き渡しについて記載する。。
 
参考 以前に記載した記事の目次
 1.  はじめに
 2.  プロジェクトステージの概要
 3.  何をマネジメントするか
 4.  プロジェクト計画に関連する主要な問題点
 5.  プロジェクトマネジャーの役割と責務
 6.  プロジェクトマネジャーの資質
 7.  プロジェクトで使用することば
 8.  外部への依頼範囲
  9-10. FS(Feasibility Study)ステージ
 11-13. 基本計画(概念設計)ステージ
 14-16. 基本設計ステージ
 17. 発注方式
 18-19. 詳細設計ステージ
 20-21. 製作・施工ステージ 
 22-26.
 検証ステージ【その1~5】


27. プロジェクトの引き渡し(コントラクターからの引き渡し)
(1)コントラクターからの引き渡し手順
 コントラクターからの引き渡し手順については事前に決めておく必要がある。この手順に従い引き渡しを受けることになる。

 コントラクターからの引き渡しには、一括引き渡しと部分引き渡しの2種類がある。プロジェクトの規模が小さい場合には一括引き渡しが可能であるが、大規模なプロジェクトにおいては一般的には部分引き渡しを採用する。部分引き渡しとは、例えばユーティリティ設備や付帯設備、生産設備などの検証が終了次第、段階的に引き渡されるような方法である。あるいは、さらにエリアごとに区切って段階的に引き渡されるような方法である。まずユーティリティ設備の引き渡しを受け、ユーティリティの運転については製薬企業にて行い、他の付帯設備や生産設備の試運転に必要なユーティリティを供給する。そして、付帯設備や生産設備はコントラクターにて試運転を行う。ついで、付帯設備や生産設備の検証が完了し、段階的に製薬企業に引き渡される。いずれにしろ部分引き渡しでは全プロジェクトを一括して引き渡すものではない。一括引き渡しの場合は、引き渡しに至るまでの試運転時の設備運転をコントラクターにて全て実施する必要があり、コントラクターにて数多くのオペレーターが必要となる。それは、結果的には製薬企業への見積り金額に含まれることとなる。部分引き渡しを行えば、コントラクターで準備するオペレーターは少なくてすみ、結果的にはコントラクターからの見積り金額は減少する。また、製薬企業にとっても段階的に引き渡しを受ける方が業務ピークを避けることができ、また、教育訓練も段階的に行なえるため、部分引き渡しはコントラクターおよび製薬企業にとって有利な方法といえる。ただし、この時期にコントラクターと製薬企業の作業員が同じようなエリアで作業をすることになるため、安全・防災などの管理を明確にする必要がある。
 
 引き渡し時の問題点として、引き渡し対象の設備の所有権、管理権、設備そのものを同時に引き渡されるとは限らない。例えば、契約条項によるが機器や建設資材が現地に納入された時点で所有権を引き渡される場合がある。また、コントラクターとの契約において模擬液試運転までを含んでいる場合、溶媒などを扱う模擬液試運転では設備の運転そのものはコントラクターでは安全上避けるべきであるため、水試運転完了時に管理権のみの引き渡しを受け、模擬液試運転終了後に最終引き渡しとする。したがって、引き渡しの方法を契約時点で明確にしておく必要がある。さらに付け加えると引き渡しが複雑であるため、設備や作業員に対する保険などに抜け落ちのないようにコントラクターと製薬企業との間で調整をする必要がある。

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