第60話:天才・秀才・ばか/コンピュータ・AI編
2023年も12月に入り、本話が今年最後の話となってしまいました。COVID-19はある程度収束の方向になったようですが、一方でインフルエンザが異常に流行し、国内外を問わず、各地で歴史を塗り替えるほどの異常気象が発生、さらに政治的・経済的には、この先どうなるんだろー、と思える嫌な時代になってしまったように思えてなりません。良かったことと言えば、スポーツ界での日本と日本人の活躍しか思い出せません。せめて年末に向けては、楽しい“読み物”が欲しいだろうと勝手に決めつけ、しかも「第50話:復刻!天才・秀才・ばか さん」が、それなりに好評だったようなので*1、調子に乗って新シリーズ第2弾です。今回は、生活の一部と化したコンピュータやAI関連の用語をピックアップしてみました。
なお、当たり前ですが、本話はフィクションです。登場する個人・企業は全て架空のものです。
【CSV】
GMDPの教育訓練の場で、
(講師)今日は、コンピュータやAI関連について勉強しよう。まずは、CSV*2を知っている者はおるか?
天才:“Computerized System Validation”の略で、日本語としては「コンピュータ化システムバリデーション」と訳されます。医薬品の製造管理や品質管理に必要な設備や手順、工程が期待される結果を与えることを検証し、これを文書化することです。コンピュータを使用した機器やシステムは、オペレーティングシステムやアプリケーション等のソフトウェアが介在することになり、そのクオリフィケーションも含めたシステムとしてのバリデーションと言えます。
秀才:CSVと言えば、ISPEの発行している“GAMP 5”が有名ですね。最新版は、第2版でしょうか。
ばか:「コンピュータ化システムがバカです」の意味です。
講師:だったら、CSB(Computerized System Bakadeshon)だろ。
ばか:そこそこ、“V”と“B”のスペルの違いも分からないくらいバカなんですよ。
講師:それは君だよ!
【CSA】
GMDPの教育訓練の場で、
(講師)では、CSAについて知っている者はおるか?
天才:“Computer Software Assurance”の略ですが、米国FDAが2022年9月にドラフトガイダンスを発出しました*3。これは医療機器の製造または品質システムの一部として使用されるコンピュータおよび自動データ処理システムのためのコンピュータソフトウェアの保証についての推奨事項を提供するものです。その目的としては、高品質の医療機器への患者のアクセスを促進する革新的な技術の導入と使用を促進し、製造業者が動的で急速に変化する技術情勢に遅れを取らないようにし、さらに、FDA によって施行される法律や規制の遵守を促進するのに役立つというものです。
秀才:今までは、CSVとしてコンピュータ本体といったハードウェアに視線が向いていたものを、実際の使用における患者への影響評価といったリスクベースでソフトウェアに注目したように思えますね。しかも、医療機器だけでなく、医薬品も同様ということで、PIC/SのAnnex 11改訂のConcept Paper内にも引用されていますね*4。
ばか:あれは面白いですよねー。ラスベガスを舞台とする初期のシーズンのものが特に面白いですよね。えっ? 「CSI:科学捜査班」のことじゃないんですか!?
《筆者注》ちなみに、CSIは“Crime Scene Investigation”の略です。
【IT】
GMDPの教育訓練の場で、
(講師)CSVやCSAの一環として質問するが、ITについて簡単に説明できる者はおるか?
天才:“Information Technology”の略です、日本語に訳せば「情報技術」と言ったところでしょうか。コンピュータを使ってあらゆる種類の電子的なデータや情報を作成、処理、保存、取得、交換することと捉えられていますね。
秀才:最近では、当たり前すぎたためか、AIに取って代わってしまい、死語とは言いませんが、あまり使われない言葉になってしまいましたね。
ばか:結構怖い内容でしたよね。続編の27年後の話はイマイチでしたけど、少年少女時代の話となるとスティーヴン・キングは抜群と言えますよね。えっ! 映画「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」のことじゃないんですか!?
《筆者注》個人的には、少女ベバリー・マーシュ役を演じたソフィア・リリスが、妙にセクシーで好きです。
【IoT】
GMDPの教育訓練の場で、
(講師)では、ITに似たIoTと略称されるものがあるが、説明できる者はおるか?
天才:“Internet of Things”の略ですね。文字通り、モノがインターネット経由で通信することを意味し、元々はコンピュータ同士を接続するためのものとして取り扱われていましたが、現在ではスマートフォンやタブレット端末も接続され、さらにはテレビやデジタルカメラ、その他の家電等をインターネットに接続する流れになっていますね。
秀才:もはや、デジタル化していない製品もインターネットに接続できない製品も過去のものという時代になってしまいましたね。
ばか:ITだとかIoTだとか、紛らわしいし、略語多すぎだよ。
講師:ばか君、君の気持ちも分からないではないよ。
《筆者注》私も、ばかさんの気持ちが分かります。
【クラウド】
GMDPの教育訓練の場で、
(講師)では、最近はPCでも汎用されているが、デジタルの世界で言う「クラウド」を簡単に説明できるものはおるか?
天才:先生のおっしゃることは、クラウドコンピューティングということでの「クラウド」のことかと思いますが、ユーザーがインフラやソフトウェアを持たなくても、インターネットを通じて、サービスを必要な時に必要な分だけ利用する考え方のことですかね。
秀才:クラウドの出現によりハードウェアを購入したり、ソフトウェアをインストールしなくても各種サービスが利用できるようになったため、「クラウドサービス」なる言葉も出てきましたね。
ばか:「クラウドコンピューティング」だとか、「クラウドファンディング」だとか、クラウド、クラウドって言い過ぎなんじゃないですか。
講師:はっ、お前は馬鹿か!? 「クラウドコンピューティング」は“cloud computing”、「クラウドファンディング」は“crowd funding”で、そもそも“クラウド”の単語も意味も違うんだよ。
《筆者注》日本人にとって、“L”と“R”の発音の区別は難しい。
【DX】
GMDPの教育訓練の場で、
(講師)では、最近は「わが社のDX戦略」とかをよく耳にするが、そのDXについて説明できる者はおるか?
天才:“Digital Transformation”の略で、直訳すると「デジタル変革」という意味になります。企業がAI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術を用いて、業務フローの改善や新たなビジネスモデルの創出だけでなく、レガシーシステムからの脱却や企業風土の変革を実現させること、より分かり易く言えば、デジタル技術を社会に浸透させて人々の生活をより良いものに変えていくことを意味します。
秀才:本来はビジネス領域に限った言葉ではなく、より広義な意味を持っており、社会や組織・ビジネスの仕組みそのものを変革することを意味します。IT化のような既存の業務の効率化や生産性向上といった限定的な言葉とは根本的に異なりますね。
ばか:簡単すよ! 「デラックス」の意味でしょ。
《筆者注》“DX”という言葉を最初に見た際、何が「デラックス」なんだと思ったのは、絶対筆者だけじゃないと思う。
【AI】
GMDPの教育訓練の場で、
(講師)では、AIについて簡単に説明できる者はおるか?
天才:“Artificial Intelligence”の略で、日本語では「人工知能」と訳されますね。一言で言うのは難しいですが、敢えて言えば、言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピュータに行わせる技術で、コンピュータによる知的な情報処理システムの設計や実現をさせることあたりでしょうか。
秀才:一昔前のSF小説やSF映画じゃないですけど、AIに人間がこき使われる、なんて時代になってしまいそうで怖いですね。
ばか:CMソングにも使われた「ハピネス」がヒットしましたよね。映画「ベイマックス」のイメージソングの「Story」なんかもいいですねー。えっ! シンガーソングライターの「AIさん」のことじゃないんですか!?
【生成AI】
GMDPの教育訓練の場で、
(講師)では、生成AIについて簡単に説明できる者はおるか?
天才:“Generative AI”のことで、自動的にデータを生成する能力を持つ人工知能の一種です。データからパターンやルールを学習し、それに基づいて精度の高いオリジナルのコンテンツを生成します。例えば、文章を生成する場合、学習データから文章のパターンや構造を学び、それに基づいて新しい文章を作成することができます。
秀才:現在では、その使い方によって様々な生成AIがありますが、ChatGPTが出た当初は、新たな産業革命とか言われましたよね。
ばか:(志村けんのマネをしながら)先生、アイーン!
講師:死ね!
《筆者注》「生成AI」と「先生、アイーン」、何となく語呂が似ていません?
すいません、おバカな筆者をお許しください。
【Chat GPT】
GMDPの教育訓練の場で、
(講師)それでは、そのChatGPTについて簡単に説明できる者はおるか?
天才:GPTは“Generative Pre-trained Transformer”の略で、「生成可能な事前学習済み変換器」といったところの意味となりますが、ChatGPTについては、それをチャットによる対話形式でヤリトリできるものです。
秀才:OpenAI社がChatGPTを出し、お試し版を無償提供したことで一躍脚光を浴びましたが、デジタル業界で続々と生成AIが出され、日々進化していってますよね。
ばかA:ドマさんが「チョットGMP」とか言って、「ドマさんの徒然なるままに 第52話」で書いていませんでした?
ばかB:違うよ、chocoZAPの二番煎じだよ!
講師:A君、君にはイエローカード。B君、君はレッドカードで退場!
【ビッグデータ】
GMDPの教育訓練の場で、
(講師)では、ビッグデータについて簡単に説明できる者はおるか?
天才:一言で言えば、人間では全体を把握することが困難な巨大なデータ群のことでしょうか。一般的にはVolume(量)、Variety(多様性)、Velocity(速度あるいは頻度)の「3つのV」を高いレベルで備えていることが特徴とされています。また近年では、これにVeracity(正確性)とValue(価値)を加えた「5つのV」をビッグデータの特徴とするとも言われています。
秀才:総務省によると、「デジタル化の更なる進展やネットワークの高度化、またスマートフォンやセンサー等IoT関連機器の小型化・低コスト化によるIoTの進展により、スマートフォン等を通じた位置情報や行動履歴、インターネットやテレビでの視聴・消費行動等に関する情報、また小型化したセンサー等から得られる膨大なデータ」とのことです。
ばか:ビッグ(Big)があるならば、スモールだとかミディアムだとかもあるのかな? ラージじゃないから、それはないか!? もっとデカいのは、ビッガー(Bigger)で、さらにデカいのはピッゲッスト(Biggest)だってか!?
講師:ばか君、洒落で言っているのであれば、君はグレート(Great)だよ。
《筆者注》おぉーっ、講師が洒落で返したぞ!
【AR, VR】
GMDPの教育訓練の場で、
(講師)では、ARとVRについて簡単に説明できる者はおるか?
天才:ARは、“Augmented Reality”の略で、「拡張現実」と訳されています。現実の世界の一部をコンピュータ処理によって拡大・拡張させ仮想世界させる技術です。VRは、“Virtual Reality”の略で、「仮想現実」と訳されています。仮想の世界に現実の人間の動きを反映させて、現実ではないが現実のように感じさせる技術のことを言います。
秀才:ARは、端的にいえば、「カメラ越しの世界にCGを追加する技術」と言ったところでしょうか。それに対し、VRは、「現実世界の代わりとなるような世界をコンピュータ処理によって、丸ごと書き換えて再現し、ユーザーに体験してもらう技術」と言ったところでしょうか。
ばか:えーっ!? 先生って結構大胆ですね、AVRなんて。そのアダルトビデオ専用レコーダーって、モザイク消せるんですか?
講師:君、再教育のしがいも無いので、出禁ね!
【アバター】
GMDPの教育訓練の場で、
(講師)では、アバターについて簡単に説明できる者はおるか?
天才:2009年のジェームズ・キャメロン監督によるSF映画「アバター(Avatar)」のことでしょうか。
秀才:そうじゃなく、本来の言葉の意味の話だよ! インターネット上で,顔・髪形・服装・持ち物などを自由に選択してつくったオリジナルのキャラクターで、自分の分身(化身)として,ネットワーク-ゲームやチャット-ルーム,掲示板などで利用するものの話ですよね。
ばか:「痘痕も靨(あばたもえくぼ)」って、「好きになった相手だったら短所も長所に見える」という意味ですよね。そう思われてみたいものですね。
講師:天才君は「弘法にも筆の誤り」ということにしておこう。ばか君、君には「馬鹿に付ける薬はない」という言葉を贈るよ。
【メタバース】
GMDPの教育訓練の場で、
(講師)では、メタバースについて簡単に説明できる者はおるか?
天才:“Metaverse”とは“meta-”と“universe”の合成語で、コンピュータの中に構築された三次元の仮想空間(社会)のことです。利用者はアバターを操作することで,仮想空間内の社会生活を送ることができるというものです。
秀才:SFの世界が、もはや現実のものとなったということでしょうか。一歩間違うと、本当の現実(Real World)との区別が難しくなってしまいますね。
ばか:オンラインゲームっすか!? 得意っすよ。
講師:ばか君、今回に関しては、必ずしも間違いとは言い難いんだよねー。
書いた本人が言うのも何ですが、マジに中身が薄いですねー(天才さん・秀才さんは、調査して整理したマトモな内容なので「中身が無い」とは言いたくない)。でも、“読み物”としては年忘れできる程度に仕上がっていませんか? 「バカおっしゃい!」というのであれば、それはそれで結構です。独りよがりであれ何であれ、自画自賛でモチベーションを上げることも大事ですよ。そうやって過去の嫌なことを忘れ、来年に期待することも必要ですよ。
ちょっと早いですが、読者の皆様方にあっては、良いお年をお迎えください。
では、また。See you next time on the WEB.
【徒然後記】
谷村新司のセイ!ヤング
この天才・秀才・ばかシリーズ、1970年代に文化放送で谷村新司さんがパーソナリティを務めていた深夜放送の中でやっていた三段オチの投稿企画のオマージュ(ハッキリ言えば、パクリ)である。筆者が主に聴いていたのは、まだアリスとしてヒットする前の1973年頃である。当時、大学生となり一人暮らしをしていた筆者にとって、ラジオは唯一の楽しみでもあった(当時、下宿生活でテレビを持っている学生は少なかった)。その後、アリスとして大ヒットを連発し、さらにソロとしても活躍するのみならず、楽曲を他のシンガーに提供するなどして成功したのは読者も知っておられるかと思う。そんな谷村新司さんが、今年の10月8日に74歳で亡くなった。ニュースを聞いて、たった6歳しか離れていなかったことを知った。音楽家としては、まだまだ活躍できる年齢である。深夜放送もそうであるが、数々の名曲をありがとうございます。ご冥福をお祈りします。
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*1:(天の声)好評だったって? お前、何を根拠に言ってるんだ。
(筆者) 一応アクセスランキングで第1位を獲得しましたからね。
(天の声)ふーん、そんなもんかねー。自分で朝から晩までクリックしてアクセス数を上げたんじゃね。
(筆者) そんなバカなことする訳ねーだーろーが。
(天の声)そんなバカなことだから、お前だったら、やりそうなんだよ。
(筆者) 天に代わって、天誅でござる。
(天の声)ぎゃーーー!
*2:以下、各項目に天才さん・秀才さんのコメントの参考にした代表的ウェブサイトを示しておきます。
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