ドマさんの徒然なるままに【第50話】復刻!天才・秀才・ばか さん


第50話:復刻!天才・秀才・ばか さん

この「ドマさんの徒然なるままに」、2019年2月掲載の第1話から、なんと5年目に突入しました。しかも、2021年2月の「番外」を除いて、いみじくも今回が第50話という節目を迎えました。筆者のアーティクルのうち、他誌となりますが、某誌オンライン*1のコラム「PMDAおじさんのつぶやき」の中で人気を博した「天才・秀才・ばかシリーズ」があります。そちらについては、なんだかんだ言って、ウィークリーのコラムということもあって11回も掲載していただきました。

今般、「ドマさんの徒然なるままに」の5年目突入、しかも第50話記念として、「天才・秀才・ばかシリーズ」の復刻版*2を執筆することにしました*3。他誌での掲載が2018年2月から12月でしたので、この5年間の間に新たにGMP担当になった読者もおられるかと思います。また、この5年間でベテランの域に達した方もおられるかと思います。いずれの読者にあっても、“ご愛嬌”の感覚でお読みいただくのも結構かと勝手に思っています。

なお、当たり前ですが、本話はフィクションです。登場する個人・企業は全て架空のものです。

 

【文書管理】
監査時の書面調査での質疑応答の場面で、
(オーディター)では、文書管理はどうなっていますか?
天才:実務作業については、QA(Quality Assurance)の文書管理責任者が各作業部門による文書管理の中心となって統括管理しています。SOP(Standard Operating Procedures)のみならず、製品標準書・MBR(Master Batch Record)も同様ですし、各種記録類も合せて管理しています。
秀才:ほぼ毎日作業はありますし、同時に記録も発生するため、文書管理としては膨大な仕事量が発生しますね。SOPについては、改廃に加えて定期的レビュー時などは、かなりの大仕事になってしまいます。
ばか:えっ? SOPとかMBRとか、そんな文書ってあった? 記録はコピー用紙にテキトーに書いてたけど、ポストイットで済ませていた時もあったかな!? 
《筆者注》もし、こんなことしていたら、確実にアウトです。ときに、本「ドマさんの徒然なるままに」の「チコちゃんに叱られそうな大人たち」シリーズの中、かなり近いレベルのとんでもない製造所が出てきたりしますが、本話はあくまで架空の物語ですので・・・。
 
【教育訓練】
監査時の書面調査での質疑応答の場面で、
(オーディター)では、教育訓練はどうなっていますか?
天才:教育訓練の長としては、QAの教育訓練責任者を設置し、各作業部門を束ねているといった状況です。トレーナーについては、教育訓練の内容に依存しますことから、それぞれの専門性と知識・経験を基に、目的に応じたエキスパートにお願いしております。全ての教育訓練は記録として残しております。
秀才:運営は、セミナー形式の集合教育もあれば、SOPの読み合わせや自習の場合などもあります。必要に応じて実技としての訓練も行います。外部の講習会に参加するような場合もあります。評価については通常はテストを行いますが、内容によっては自己評価の場合もあります。実技については、トレーナーの採点ということにはなりますが。
ばか:教育訓練って、俺、何か受けたことあったっけ? あぁー、先々週に、あの禿げ頭のオッサン、何か話してたなー。俺、寝てたから内容覚えてないけど。
《筆者注》ハッキリ言って、こんなことしていたら確実に指摘となります。教育訓練の目的は、作業員が目的とする作業を支障なく遂行しうるようにするためです。記録を残すためではありません。形式ばかり追っかけている会社さんにあっては、ご注意ください。
 
【自己点検・その1】
GMDPの教育訓練の場で、
(講師)自己点検について知っている者はおるか?
天才:「自己点検(Self-inspection)」と称する場合と「内部監査(Internal Audit)」と称する場合があるようで、国内外で、これら両者が異なるものなのかどうなのかが古くから議論されています。ただ、大事なことはその用語ウンヌンではなく、自社のGMPやGDPの組織内部としての自家清浄とも言える、CAPA(Corrective Action & Preventive Action)の一環としての改善活動を実施することと思います。
秀才:少なくとも、外部コンサルタント等によるチェックとそれに基づく改善行動とは異なりますよね。
ばか:あぁー、それは毎年やってますよ。毎年、たくさんの項目があってチェックするのが面倒なんすよね。「お酒はどのくらいの頻度で飲みますか?」とか、「タバコは吸っていますか?」「いつやめましたか?」「やめてからどのくらい経ちますか?」なんて、去年のデータ使ってくれたら分かるはずなのにねー。えっ、定期健康診断の問診票のことじゃないんですか!? 
《筆者注》健康診断時のチェック用紙、確かに「自己(健康)点検」と言えなくもないような気がしない訳でもありません。
 
【自己点検・その2】
本年度自己点検に際して、
(QA長)今年度の自己点検について、●月■日までに実施し、その結果をご報告ください。
天才:はい、了解しました。昨年度の改善事項とその改善状況も含めて報告いたします。
秀才:個々の部門による自己点検も実施されていますので、我々QAによる自己点検とは区別して、両者を整理しておきます。
ばか:自己点検? 某国与党が「旧統一教会との関係云々」でやっていたアンケート調査みたいな奴ですか? 自己申告ですし、何の目的で、結果をどう今後に役立てるかも不明で、どれだけ正直に申告しているか疑問ですよね*4。あまり意味ないんじゃないですか!? 
《筆者注》某国与党の件を反面教師として解釈するのは勝手ですが、GxPにおける自己点検はキチンとやりましょう。ちなみに、この件については、ばかさんに同意です。
 
【治験薬】
GMDPの教育訓練の場で、
(トレーナー)本日は、治験薬についての話をするので、しっかり勉強するように。
天才:はい、了解です。治験薬は市販薬と異なり、製造条件や分析法などが開発途上で設計品質が確立していないことから、その品質の保証は市販品以上に厄介ですよね。
秀才:品質のデータ量も開発の各フェーズにより依存しますし、包装などは治験プロトコールにも依存しますので、治験薬のGMPは面倒ですよね。また、安定性も十分に把握できていないことから、GDPにおける温湿度対応も厄介ですよね。
ばか:もしかしたら、私がその役目ですか? いやー、困っちゃうなー。ちょっと嬉しい気もしなくないけど、出来るかなー!? 
(トレーナー)君、何を言ってるのかね?
ばか:えっ、今年の演武会の「痴漢役」のことなんじゃないんですか!?  
《筆者注》筆者、大学時代は合気道部でしたが、合気道は基本が“受け”のため試合がなく、演武となります。2年生のときに、先輩女子部員の相手の「痴漢役」でした。なぜ1年生の時じゃなかったかって? 受けが上手じゃないと“投げ飛ばされている”感が弱いからです・・・。
 
【コンプライアンス】
GMDPの教育訓練の場で、
(トレーナー)今日はコンプライアンス(compliance)の重要性について話をするが、コンプライアンスを一言で言える者はいるか?
天才:日本語で言えば、「法令などの遵守」を指しますよね。企業活動において社会規範に反することなく,公正・公平に業務遂行するということでしょうか。ただ、ときにコンプライアンスを「行政の言われた通りにやること」だとして、何も考えずに盲目的に従う会社さんがおられますよね。コンプライアンスを目的と勘違いし、目標にするような姿勢は疑問を感じさせますね。
秀才:医薬品関係としては「服薬コンプライアンス」という言葉もありますね。こちらは、処方された薬剤を指示に従って服用することを指しますよね。
ばか:そんなタイトルのTV番組がありますよね? えっ、勘違いだって!? それって「今夜くらべてみました」の略、“こんくら”だって!? いや、どっちでもいいですけど、“コンプラ”って面白いですか? 観たことないんで分からないんですよ。
《筆者注》「今夜くらべてみました」は、関東地方では昨年3月まで水曜よる9時00分~9時54分に日本テレビで放映されていたバラエティ番組です。
 
【アダルタレーション(adulteration)】
GMDPの教育訓練の場で、
(トレーナー)アダルタレーション(adulteration)が分かるものはいるか?
天才:言葉の意味としては、「混ぜ物による粗悪化・不良化」のことですね。米国FDAのWarning Letters*5の“Subject(分類上の見出し)”にも“Adulterated”などとしてよく出て来ますよね。
秀才:製造に起因するもの、保管や配送に起因するものなど、原因は色々とありますので、注意が必要ですね。
ばか:うへっ、えへへっ。
(トレーナー)君、何を言ってるのかね?
ばか:だって、先生がいきたなり「アダルト」なんて言うから・・・。
(トレーナー)君、退場!
《筆者注》“adult”という語源については存じませんが、別の単語ですので、誤解無きよう。ましてや、「adult=成人映画」でもありませんので、これも誤解無きよう。
 
【オマケ:GMDP関連の執筆】
良い筆者 :GMP・GDPの正しい解釈と適切な運用に導くような、簡潔明瞭ではあるが論理的かつ妥当性のある解説が含まれており、読者のためになるものでなければなりません。
普通の筆者:初任者から中級、上級者にも役に立つような幅の広い内容が盛り込まれていることが望ましいですね。
悪い筆者 :ウケりゃ何でもいいのよ。こんなアーティクルなんかで勉強できる訳ないでしょ。
《編集担当者コメント》お前が言うんじゃない、降ろすぞ!
 

 

では、また。See you next time on the WEB.

 

 

【徒然後記】

駄菓子屋のおばちゃん
駄菓子、現在ではスーパー内のお菓子コーナーの一画に設置されている(さらに最近では子供誘導作戦としてホームセンターの一画にまで及んでいるという話がある)が、新型コロナウイルスのせい(お蔭?)で、おうち時間が増え、“酒のつまみ”といった感じで人気が上がったとか。

筆者、もろ昭和時代の真っただ中とも言える昭和30年代に幼少時代を過ごした(西願良平の「三丁目の夕日(夕焼けの詩)」の世界である)こともあって、駄菓子屋さんが遊び場の一環となっていた。小遣いは、一日10円といった時代であるが、それでもおやつがどうにかなるという時代でもあった。1枚1円のせんべいとか、5円のチョコレートもどき(チョコレート風味かもしれないが、今思えば本物とは言い難い)とかいうシロモノである。北関東の田舎町であったこともあり、10円で“もんじゃ”も食べれる。現在のもんじゃ焼きのような高級感はない。単に、うどん粉(長い間、小麦粉を指すとは思っていなかった)を水に溶いて、ウスターソースをどっぷりと入れて味付けしているだけのシロモノである。簡単に言えば、「トロトロに水っぽい、具の無いお好み焼き(?)」である。それを、複数の七輪に乗せた、どこかの工事現場からくすねて来たような鉄板の上で焼くのである(そのため位置により加熱むらと傾斜があり、ヘラによる防波堤越えが生じ、よくケンカになる)。今にして思えば、よくもまぁ、あんな小麦粉をソースでびちょびちょにして焼いただけの高血圧育成の“茶色スライム”のような物体を美味しいと思っていたことか。でも、ワイワイガヤガヤしながら1時間以上も過ごすことができた。こども世界での社交場であり、情報交換の場なのである。さらに夕刻になると、おばちゃんが「ちょっと、そこどかして!」と言って自宅の夕飯の用意を鉄板の上でし出すという有様である。

いくつかの駄菓子屋さんがあったが、自分の贔屓(ひいき)の店は決まっている。大方は、小学校への通学路の途中にある店である。それぞれの店の共通点は、必ず“おばちゃん(おばあちゃん?)”がいるということであろうか。小学生であった筆者にとっては、そのおばちゃんの実年齢は分からなかったが、自分の母よりは間違いなく上であった。面白いことには、筆者だけでなく、友達も誰しも、中学校に上がると行かなくなるということ。放課後のクラブで遅くなるということもあるが、主な原因は少しずつ大人になっていき、駄菓子屋卒業ということであったと思う。
筆者が贔屓にしていた駄菓子屋さん、最後に店の前を通ったのは、20代半ばであったような気がする。行かなくなってから10年余りが経過していた。その後あのおばちゃんがどうなったのか知らない。ひっそりと天寿を全うしたのであろうことを祈る。

ありがとう、おばちゃん。あなたの店の駄菓子を喜んで食べていた僕は、こんなに成長し、当時のおばちゃんの年齢さえも超えてしまったに違いない。でも、今でも想い出としておばちゃんは生きてるから。もし僕がそっちへ行ったら、また駄菓子を買うから待ってて。約束だよ。

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*1:PHARM TECK JAPAN ONLINEのコラム「PMDAおじさんのつぶやき」を参照のこと。

*2:「復刻」と「復活」の違いが良く分からなかったのでググってみました。
どうも、「復刻」は、当時の姿のままで再現することで、多少異なることがあっても、できるだけそのままだということが前提。「復活」は、その存在として蘇らせることになり、見た目や性能が大きく異なる場合も少なくないとのことでした。
勉強になりました。

*3:(天の声)「復刻版」だと? 違うだろ。シリーズを「復活」させたいだけじゃろーに。
(筆者) そんなことないよ。このシリーズ、誤解回避を踏まえての用語解説や条項解釈が入るんで、書く側としては、むしろ通常の内容よりも辛いんだよ。シリーズについては、読者の反響を踏まえて「シン 天才・秀才・ばかシリーズ」を考えるよ。
(天の声)ふーん、結局のところは過去の栄光にすがりたいだけなんじゃね!?
(筆者) 今まで一度も、そして今後も人気のない“あんた”に言われたくないわ。
(天の声)腕が鈍ると困るので、久々に天罰!
(筆者) ギャーーー!
 

*4:GxPで求められる自己点検は、あくまで改善を図ることが目的です。SOPの制定が要件として求められており、各社(各製造所)で実施を規定していると思います。だからと言って、実施したという“見てくれの既成事実”のために、しぶしぶ実施したということでは困ります。さらに大事なことは、本来の目的に沿って、気づいた不備・不良については、適切にCAPAを行いましょう。
そういう意味において、某国与党が昨夏に実施した、「目的が不明で、自己申告により告知させ、その後は本人に任せる」なんて、アンケート調査にも至っていないシロモノを自己点検とは言わないと思います。GxPであれば、完全にアウトとして指摘を受けます。

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