【第14回】GCP-SOPライティング - GCPで必要なSOPと作成技法 -

 

 前回はSOPライティング、すなわち理解しやすく改訂しやすいSOPの作成技法として、一文一義で100字以内のステップ・バイ・ステップでの記述ということを解説した。今回は、主語と述語をセットで用いること、そして読点と「 」の利用について紹介しよう。
 

主語と述語
 SOPの作成に関わっていない者でも同じ理解をし、同じ業務を行い、あるいは業務を引き継いだ場合でも、同じ品質を保つ必要がある。読み手の誤解を防ぎ、書き手の意図を正確に受け取ってもらえるように、手順を示す文章を、誤解の余地がないように書かなければならない。日本では「以心伝心」や「暗黙の了解」といった言葉に表されるように、「場の空気を読む」コミュニケーションが取られ、この「場」ゆえに主語を省くことが多いのが日本語の特徴でもあろう。
 日本語ではその場においてお互いにわかっているのであれば主語を取り立てていう必要はない。しかしSOPは小説やエッセイや友人との会話とは違う。SOPでは主語を省略せずに、誰が、何を、どうする、ということを明確に記述しなければいけないのだ。主語と述語は対応させ、さらに両者はできるだけ近づける。したがって、述語も省略してはいけない。さらに目的語(何を)を述語(どうする)のすぐ前に記載することによって読み手の誤解を防ぐこともできる。
 述語を書くにあたっては当然ながら主語の意味に呼応した述語でなければならない。主語と述語が呼応していないと文章が読みにくいどころか、意味が伝わらない文章になってしまう。主語と述語が呼応していない「ねじれ文」はどこか不自然であり、読んでいて違和感が出てくるので実施すべき手順が想像できない。手順を記載した後で、主語と述語だけを抜き出して、必ず「主語」と「述語」が呼応していることを確認しよう。
 主語は「誰が、何が」であり、述語は「どうする、どうした」という動詞で文が終わる。SOPでは担当者や責任者が主語になることが多い。しかし、あらかじめ「モニターが実施する手順を記載する」という記述をしておけば、「モニターは」という主語を省略して手順だけを羅列してもよい。
 

客観的な記載
 客観的な記載とは、書き手本人がそう思っているだけではなく、誰でもがそのとおりだと納得できる記載のことをいう。「SOPは使う者が作れ」というのは昔からいわれているSOPライティングの基本だ。手順を知らない者がSOPを作成したら、机上の空論になって役に立たない。したがって手順を知っている者が作成しなければならない。では経験豊富な者がSOPを作成した方が良いのかというと必ずしもそうではなく、そのような場合は自分本位な記述をしてしまって他の作業者(読み手)には理解が難しい記載になりがちである。
 一定の教育訓練を受けた者が、同じプロトコールと同じ手順書を読んで同じ理解ができれば、同じ結果になるであろう。それが科学であり治験である。書き手の主観に基づかず客観的な文章とすべきであり、書き手が違っても同じような書き方と結論になったはずという心構えでSOPを書く必要がある。
 

定量的な記載とルール化
 
大きな、複雑な、普通の、数回などの定性的な判断表現や程度表現をやめ、できる限り定量化(数値化)することによって、書き手と読み手の認識のずれをなくすようにしなければならない。GCP省令やガイダンスに記載されているような、直ちに、速やかに、遅滞なくという言葉は、法令的な意味の違いはともかくSOPではこのような不確かな言葉は使わずに、「5 日以内」とか「10営業日以内」とか「14 暦日」というように具体的な数字で示すようにしよう。
 SOPを読む上でのルール化を決めても良いだろう。例えば「6」という数字は立ち位置の異なった人が読めば「9」と認識することもあるので、そのような場合は「6」のように数字の下にアンダーバーを付けるというルールを決めておく。このように認識のずれが生じる懸念がある場合は、SOPのどこかにルール化の記載があれば認識を統一することができる。
 手順書は関係者が使用するものであるが、新たに手順を学ぼうとする人たちが読み手に含まれることを考えると、現在の関係者ではない者にも理解してもらえるように作成したほうがよいかもしれない。1人で作成したならば、手順を知っている人、あるいはこれから手順を知ろうとする複数の者がレビューした後に最終化したほうが良いだろう。
 

読点
 GCPガイダンスは省令の解説という位置付けの通知であり、このガイダンスでは1行40字ほどの間に多いところでは3つの読点(、)が使われている。読点は声に出して読むときの息継ぎポイントを示すことを目的としただけの記号ではなく、語句のかたまりを分割して読み手の解釈を適切に誘導するための区切り記号でもある。それゆえ、省令の解説という位置付けであるGCPガイダンスには、理解を深めるために多く使われているのだろう。読点を使うと良い場面を少し紹介しよう。
 ✓  主語であることを明確にするために主語の直後(例;モニターは、)
 ✓ 漢字やひらがなが続いていて、読みにくいとき
 ✓ 語句と語句の関係性をはっきりさせるため
 ✓ 対等の関係で並列する語の後(例;手順書、マニュアル、指示書)
 ✓ 文頭の副詞(なぜなら、けっして)や接続詞(また、なお、ただし)の後
 前回の一文一義の説明で、ワード文を書いていて3 行で句点「。」が来なかったらおかしな文になっていると述べた。読点と合わせていうならば、1行に読点が1つ、2―3行で句点が1つというのがSOPライティングの基本の1つと考えても良いだろう。

 

 

 

 

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