ワーニングレターから見たデータインテグリティーの問題点

インドから発したデータインテグリティーの問題点は2013年以降、ワーニングレターにおいて、最も多い指摘事項となっている。近年、多少の減少傾向はみられるが、例えば、FDAのCDERによる医薬品製造品質に関わるワーニングレターにおけるデータインテグリティーの指摘件数は、2016年では全44件中23件(付随的な指摘を含む)、2017年度は5月19日現在までの全てのワーニングレター23件中16件で指摘されている。
 そのうち、2016年度では、インド8件、中国9件であり、2017年度はインド、中国において、各6件と相変わらずこの両国がその大部分を占めているが、その一方、日本を含めた従来からの医薬品製造経験のある国々においても、指摘を受けているのが実情である。
 こうした国々では、データの信頼性に関しては何年も前から重要な課題として認識されていながらなぜ今になってこのような問題が生じているのか。本稿で検討してみたい。
 まず、ポイントとなるのは、何を指摘されたのではなく、なぜワーニングレターに至ってしまったのかである。データインテグリティーの問題を一般的な文書化の問題と捉えてしまうと何をいまさらということになる。
 当初、インド、中国においては、経営姿勢の問題とされていたが、最近では従業員の教育を含めたクオリティーカルチャーの問題と認識されるようなってきており、解決には時間がかかる場合がある。
 しかし、これらの国々において発生した問題が医薬品製造の経験豊かな企業にも指摘されるようになった点に関しては、別の要因があると考えられる。
 さて、ここで問題となるデータとはいったい何であろうか。本来データというのは、結果の再現を可能とするものでなくてはならない。結果の再現を実証する際に最も深刻な問題となるのは、スタート時点でのデータの信頼性が確保出来ない場合には、データの捏造、改ざんといわれるものは、検証というものができないため、他の不正とは一線を画すべきである。
 例えば、学術論文で不正が叫ばれる場合においては、データの恣意的な解釈まで、「データの捏造」と呼ばれているが、適切ではない。
 ワーニングレターに至っては真の原因は文面からは見えにくいものだが、共通して問題となっているデータの影響についての調査が不十分ということである。不適切なデータが見出された場合、その周辺のデータが不適切でないことを保証するのは容易ではない。更にそのようなデータによって保障される製品の出荷後の追跡調査となると困難を極める。
 FDAは返答が遅く、しかも小出しの対応に不満があるように見受けられるので、可能な限り迅速に多くのデータを集め、リスクマネジメントに基づいて回答書を提出すべきであるが、それでもワーニングレターを完全に避けられるとは限らない。
 結局のところ、この問題は、その影響の調査を要求することが定常化したことによるところが、結局大きいと思っている。

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