医薬品開発における非臨床試験から一言【第44回】

反応性代謝物への対応

前回は代謝物評価の課題を取り上げ、重要なのは医薬品の適正使用であることを示しました。今回は、反応性代謝物の問題点を取り上げます。医療現場で発生する副作用や有害事象が、処方された医薬品から生じた反応性代謝物と関係することがあります。

反応性代謝物は代謝過程の中間体として存在し、安定な代謝物の産生やタンパク質等との共有結合体へと変化しやすく、検出や安定な合成標品の供給が難しいことが課題となります。従って、反応性代謝物の存在を証明して毒性発現機序を解明することは難解です。

動物実験から代謝物を評価するのが一般的ですが、その中で、代謝過程の種差、ヒト特異的代謝物や反応性代謝物の生成などはケースバイケースの対応となります。そもそも、反応性代謝物が関与していると判断するデータの解析は非常に困難を伴います。また反応性代謝物を検出できるスクリーニング試験を医薬品開発の早期に常時行っているか、そして反応性代謝物の検出に明確な判断基準を持っているかが問われます。

代謝的活性化による毒性発現を具体的に考えると、
・ラジカル生成(活性酸素種、活性窒素種)
・核酸の修飾による変異原性、発がん性
・酵素阻害や酵素誘導
・酸化的リン酸化の阻害、電子伝達系の阻害
・神経伝達物質の遊離促進あるいは取り込み阻害(輸送体との結合等)
・受容体への結合あるいは修飾(受容体機能変動)
・イオンチャンネルへの作用(阻害や亢進)
・タンパク質、脂質等の生体成分との結合や修飾
反応性代謝物(毒性発現につながる活性代謝物)の生成が関与する場合もあります。このような代謝的活性化と反応性代謝物は、代謝物の安全性評価の上で大きな課題となります。

代謝物による毒性発現の事例を示します。
アセトアミノフェンの活性代謝物であるN-アセチル-p-ベンゾキノンイミンは、ミトコンドリア・タンパク質等をアリル化して、肝障害を発症させると推定されます。
クロマン環を有するトログリタゾンも、その酸化反応の過程でセミキノンラジカルを介してキノンおよびキノンメチドを生成し、さらにはチアゾリジンジオン環部位の酸化反応によりα-ケトイソシアネートが生成することにより、肝毒性が発現した可能性があります。

一般的には、代謝物としてグルタチオン抱合体やアシルグルクロン酸抱合体が検出されると、その前段階として反応性代謝物の生成が懸念され、重篤な臓器障害等の毒性発現が惹起される場合があります。そのため、反応性代謝物と肝障害の関連が認められた多くの医薬品が、米国では承認されていません。

少し前の報告ですが、反応性中間体を有するとされている薬物のうち、承認取り消し又は限定使用となった5薬剤を示します。
Benoxaprofen, Iproniazid, Nefazodone, Tienilic acid, Troglitazone.
また、8薬剤で注意喚起が促されています。
Dacarbazine, Dantrolene, Felbamate, Flutamide, Isoniazid, Ketoconazole, Tolcapone, Valproic acid.
 

 

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