【WHOのGDRPガイダンス】ASTROM通信<102号>

株式会社プロス発行のメールマガジン『ASTROM通信』のバックナンバーより記事を抜粋し、一部改編をしたものを掲載いたします。

本稿は【2016.7.15】に発行されたものです。
記事の原著は、こちらでご確認下さい。 ASTROM通信バックナンバー


こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

蒸し暑い日が続いていますが、いかがお過ごしですか?

さて今回は、WHOが2016年5月に発行した最新のWHO technical report series(No. 996)の中のAnnex 5 Guidance on Good data and record management practices:データ及び記録の管理の手順に関するガイダンスについて取り上げたいと思います。
このガイダンスのドラフトは1年前に出ていましたが、今回発行されたものはその最終版です。

WHO(世界保健機構)のガイダンスというと、あまり関係ないと思われるかもしれませんが、昨今注目されているデータの完全性(Data Integrity)に関する欧米の解釈を理解するのに役立つと思います。
最後までお付き合いいただければ幸いです。
※“長くてたまらん”という方は最後のまとめだけお読みください。

ガイダンス原文
http://www.who.int/medicines/publications/pharmprep/WHO_TRS_996_annex05.pdf?ua=1


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ガイダンスの概要
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Annex 5 Guidance on Good data and record management practices(データ及び記録の管理の手順に関するガイダンス)は、下記の章立てでできています。
 1.序文
 2.本ガイダンスの目標と目的
 3.用語
 4.原則
 5.適切なデータ管理を保証するための品質リスクマネジメント
 6.マネジメントガバナンスと品質監査
 7.契約組織、契約供給者、契約サービスプロバイダ
 8.データ及び記録管理の教育
 9.Good documentation practices(文書化の基準)
 10.データの品質と信頼性を保証するためのシステムの設計とバリデーション
 11.データのライフサイクルを通じたデータ及び記録の管理
 12.データの信頼性問題への取り組み
引用文献・参考文献
Appendix 1

■1.序文 の概要
医薬品の規制において、開発、製造、包装、テスト、配送、製品の監視を行う際に様々な判断のもととなるデータは、 ALCOA(Attributable:帰属性, Legible:判読性,Contemporaneous:同時性, Original:原本性、Accurate:正確性)の状態であるのはもちろん、完成していなければならない。
ALCOAの原則はデータの信頼性を保証するための手順に関するもので、新しいものでもレベルの高いものでもないが、最近、GMP(Good Manufacturing Practice)、GCP(Good Clinical Practice)、GLP(Good Laboratory Practice)の査察においてGDRP(Good Data and Record Management Practice)に関する多数の問題が発生している。その原因として、製薬業界の選択と、最新のデータ管理戦略とのギャップがある。製薬業界はコントロール戦略の最新化、最新の品質リスクマネジメント(QRM)や適切な科学的原則を現在のビジネスモデルに適用することが必要である。
【※ALCOAについては9章に説明があります】

■2.本ガイドラインの目標と目的 の概要
2.1 このガイダンスは、現在のガイダンスとのギャップを埋めるために、既存の規範的な原則を統合し、詳細の例示的なアドバイスを与える。更に、これらのハイレベルの要件が実際に意味することと、要件に適合するために実施されるべきことを明確に説明する。
2.2 これらのガイドラインは、データ管理手順の適用を強調している。ガイドラインは、データの信頼性を保証するために期待される全てのコントロールを定義しているわけではないので、WHOに存在しているガイドラインや、その他の関連する海外の文献と連携して考慮されるべきである。
2.3 このガイダンスは、進化的で説明的な性質を持つので、海外の規制当局(NRAs)を含む利害関係者から提供されるフィードバックと共に、ガイダンスの実装や有用性に基づき、定期的にレビュが必要である。

■3.用語 の概要
【※データ、監査証跡、バックアップといった言葉の説明がのっているので、参考になります。ここでは、私が個人的に興味のあった3つの用語をピックアップしておきます。】

data integrity(データの完全性)
データの完全性とは、データが完全で、一貫し、正確で、信頼できて、確実なレベルにあり、データの特性がデータのライフサイクルを通じて保持されていることをさす。データは、確実な方法で収集され保持され、帰属的で、判読可能で、同時に記録され、原本または真正な写しであり、正確でなければならない。データの完全性の保証には、適切な科学的原則と適切な文書化の基準を順守した品質とリスクの管理システムを必要とする。

hybrid approach(ハイブリッド手法)
オリジナルの電子記録と紙の記録を組み合わせたコンピュータ化システムの使用をいう。
ハイブリッド手法の例は、ラボの分析者が、オリジナルの電子記録を生成するコンピュータ化機器システムを使い、結果のサマリを印刷することである。ハイブリッド手法は、記録の保持期間を通して、紙と電子のような、全てのタイプの記録同士の確実な関連性を求める。
ハイブリッド手法が用いられる場合、テンプレート、フォーム、マスタ文書のような電子文書が印刷できて入手可能でなければならない。

True copy(真正な写し)
真正な写しとは、オリジナルの記録の全ての内容と意味が保たれた正しい完全なコピーであると承認するための検証と証明がされた、オリジナルのデータの記録のコピーをさす。
電子データの場合は、全ての本質的なメタデータとオリジナルのデータの形式が適切に保たれていることを意味する。

■4.原則 の概要
4.1 GDRPは医薬品の品質システムの重要な要素であり、GXPの記録とデータが製品のライフサイクルを通じて完全で信頼できることを高いレベルで保証するためには、システマチックな手法が実施されなければならない。
4.2 データ管理プログラムは、以下のデータ管理のための一般的な原則に対応する方策や管理手順を含んでいなければならない。
4.3 紙と電子データの両方への適用性
データの正当性の堅固な管理を保証するGDRPの要件は、紙にも電子データにも同等に適用する。
GXPの対象である組織は、自動またはコンピュータ化から、手動または紙ベースのシステムに立ち戻ることが、堅固な管理の必要性を取り除くものではないことを十分承知していなければならない。
4.4 委託者と受託者への適用性
ガイドラインの原則は委託者と受託者に適用される。委託者は、受託者から提供されたデータを含むGXPデータに基づいてなされた全ての判断の信頼性について最終的な責任を負う。従って、委託者は受託者が提供するデータの正確性、完全性、信頼性を保証するためのリスクべースの詳細な調査を行わなければならない。
4.5 文書化の基準
断固とした判断をするために、判断を支えるデータは信頼できて完全でなければならない。
GDocPは、紙と電子の全ての記録の完全な復元とGXP活動のトレースができることを保証しなければならない。
4.6 マネジメントガバナンス
堅固で持続可能なデータマネジメントシステムを確立するために、経営陣が適切なデータ
のマネジメントガバナンスプログラムを整えることが重要である。
4.7 品質文化
経営者は、品質部門のサポートを受けて、基準に準拠しない記録や、誤りのある記録やデータのリスクを最小化する作業環境を確立し維持しなければならない。品質文化の必須の要素は、序列に関係なく、組織の全てのレベルで、逸脱、過失、手抜かり、異常な結果を透明かつ率直に報告することである。
4.8 品質リスクマネジメントと適切な科学的原則
安定した判断のために、適切な品質リスクマネジメントシステムと、信頼できるデータに基づいた適切な科学的・統計学的な原則に忠実であることが必要である。
4.9 データのライフサイクル管理
安全性、効き目、品質を保証し向上するための製品の継続的な改良に、データが、生成・記録・処理・伝送・レビュ・報告・アーカイブ・検索される全てのフェーズで、データの完全性のリスクの管理を保証するデータ管理手法が必要であり、この管理プロセスは、定期的レビュの対象である。
4.10 データ管理を行うにあたっては、データの所有権、データ処理の説明責任、データのライフサイクルを通じたリスク管理に取り組まなければならない。
4.11 記録の保管方法及び保管システムの設計
記録が紙でも電子でも、その保管方法及び保管システムは、データの完全性の原則への適合を促進する方法で設計されなければならない。
4.12 設計の例
・指定時刻のイベントの記録に使用される時計の変更の制限
・GXPデータの記録(例:紙のバッチの記録、紙の事例報告フォームやラボのワークシート)に使用する管理されたフォームの保証
・GXPデータの記録用のブランクペーパの発行の管理
・データ修正を防ぐためのシステムへのユーザアクセスの制限
・独立かつ適時のデータの記録を保証するための、秤のような装置につながった自動データ収集やプリンタの保証
・関連作業場所へのプリンタの近接の保証
・抜け道やサンプルの改竄の誘惑を最小化し、容易で効率的なサンプリング作業を可能にするためのサンプリング場所への容易なアクセスの保証
・データをチェックする従業員のオリジナル電子データへのアクセス保証
4.13 データや記録媒体は耐久性がなければならない。紙の記録の場合、インクは消せないものでなければならない。温度感受性または感光性のあるインクや、その他の消せるインクは使われるべきでない。紙もまた、温度感受性または感光性のあるもの、容易に酸化するものであってはならない。
4.14 記録保管システムの維持紙の記録でも電子記録でも記録保管用のシステムは、科学及び技術の進歩を考慮しなければならない。記録やデータの保管に使用されるシステム、手順、方法は、定期的に有効性をレビュされ、必要に応じてアップデートされるべきである。

■5.適切なデータ管理を保証するための品質リスクマネジメント の概要
5.1 GXPに該当する作業を実施する全ての組織は、適用可能なWHOガイダンスにより、品質マネジメントシステムを制定し、実行し、保持しなければならない。システムの要素は、品質マニュアルまたはその他の適切な情報管理により文書化されなければならない。
5.2 品質マネジメントシステムの中で、データの完全性に影響のある事態を防止・検出し、データに基づき、リスクベースの科学的に堅固な判断をするために、適切なインフラ、組織構造、文書化された方針や手続き、手順、システムを構築しなければならない。
5.3 品質リスクマネジメントは、効果的なデータや記録の正当性を評価するプログラムの不可欠な要素である。データや記録の管理に割り当てられた力やリソースは製品品質のリスクに釣り合っていなければならない。
5.4 正しい手順を促し、記録やデータの完全性に関する問題の発生を防ぐ戦略が望ましく、それが最も効果や費用対効果が高い可能性がある。
5.5 記録やデータの完全性に関するリスクは、QRMの原則に従って、データのライフサイクルを通じて評価され、軽減され、連絡され、レビュされなければならない。
5.6 適切なQRMの原則に基づいて開発され実施されたデータマネジメントプログラムは、存在する技術を最大限活用することが期待される。

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

キーワード検索

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます