再生医療等製品の品質保証についての雑感【第41回】

細胞加工製品の品質管理 (1) ~ 原料組織の輸送による劣化

はじめに
 先回より引き続き、以前に発表した論文を紹介させていただきます。今回も、前回ご紹介したBIJ社(株式会社日本バイオセラピー研究所)での自己由来活性化免疫細胞製造についてです。原料組織(末梢血)が、1日程度の輸送の有無により、最終加工物にどの程度の影響(違い)が生じているかについて、回顧的に検証を行いましたので、その内容について概説します。論文は、2019年にRegenerative Therapy誌で掲載されました。


● 輸送による原料の劣化の可能性
 BIJ社における末梢血(50 mL)からの自己由来ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の製造は、依頼を行う医療機関(提供計画)により、異なる輸送方法や培養期間が複数存在します。そこで、細胞加工施設と同じ都内にあるクリニックA(164バッチ)での事例と、福島にあるクリニックB(292バッチ)での事例を用いて、輸送手順の違いによる原料細胞の劣化について評価を実施しました。採取後から細胞単離処理開始までは、輸送・保管を含め、クリニックAでは当日内(数時間)、クリニックBでは翌日となります。保存温度は常温帯(15~25℃)です。
 原料に生じる劣化は、主に、回収された単核球の数(細胞数)と、見かけ上の比増殖速度(μapp)により評価しました。結果として、末梢血より回収された細胞数は、平均で、表1のように、クリニックAで採取された原料では33百万個でした。対して、クリニックBで採取された原料では31百万個と、値はわずかに下がりますが、顕著な差異は生じませんでした。加工後の細胞数と、培養日数が異なるので直接比較はできませんが、ほとんど差異は認められていません。

表1. 各医療機関での回収細胞数(培養前・後)と比増殖速度(論文表2より引用)

 また、回収した単核球の活性を評価するため、初期(0日目から9日目までの間)の比増殖速度の比較を行うと、表2のように、値として明らかに不適なμapp<0を示した事例(全456バッチ中12件)を除けば、いずれも0.17で、差異は認められませんでした。したがって、採取組織(末梢血)の保管・輸送時間による劣化は、少なくとも本事例での翌日まで(24時間まで)の評価では、許容できることが確認されました。

表2.  各医療機関における初期の比増殖速度(論文表3より引用)

 

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