GCP監査入門【第7回】

 前回はシステム監査について、監査計画、監査の実施、監査報告等を紹介した。続いて今回は治験依頼者を対象とした個々の治験の監査について話を進めよう。

チェックリストの利用
 監査で用いる様式を一般に監査様式と呼んでおり、これには記録に関する様式と手続きに関する様式の2つに分けられることをGCP監査入門【第5回】で述べた。記録に関する様式とは、監査を実施した際の記録でありチェックリストが含まれる。チェックリストを利用するメリットとして例えば、確認忘れがない、担当者間の力量の差が比較的少ない、必要時間が予測できる、さらに経験の積み重ねを整理していくことで充実した内容に改良できることが挙げられる。逆にチェックリストのデメリットとしては、多様な変化に対応できずチェック項目に頼り過ぎると大きな問題を見落としてしまうことがある、必要としない項目までチェックすると場合によっては時間がかかり過ぎることなどが挙げられる。

 かつて必須文書一覧と呼んでいた「治験に係る文書又は記録」一覧が、「治験に係る文書又は記録について」という事務連絡に出てくる。この一覧では、Ⅰ)治験開始前、Ⅱ)治験実施中、Ⅲ)治験の終了又は中断・中止後という治験の段階に応じて、それぞれの文書等に含まれる内容とその説明及び保存場所が示されている。したがって、これを基にして治験の段階ごとにどのような文書等が作成されるべきかという、いわゆる「あるべきリスト」として利用できる。文書等の存在有無の確認だけではなく、その文書等の内容の妥当性を確認するために利用すれば、それが監査のチェックリストとなる。
 PMDAはGCP適合性調査に用いるチェックリストを、「自己点検等にご活用ください」として公開している。このPMDAチェックリストは修正を加えずにそのまま監査のチェックリストとして使用することが可能であり、また内容によっては自社の手順書等に沿った形で修正して利用しても良い。

監査計画書の作成
 GCP省令第23条で、監査計画書を作成し当該計画書に従って監査を実施しなければならないことが定められている。監査計画書に記載すべき内容についてGCP監査入門【第5回】で説明したので繰り返してここで記載することはしないが、監査計画の立案にあたっては治験のリスクになり得る因子を考慮すべきである。例えば、試験デザインの複雑さ、あるいは評価項目の種類や特殊性(通常診療と異なる手順による評価、等)、オンコロジー試験の方が生物学的同等性試験よりも安全性情報の重要性が高いなど、さらにモニター等の開発担当スタッフの力量(経験、能力)や治験責任医師の臨床試験の経験値等々を考慮して立案する必要がある。

監査の実施
 個々の治験の監査では、治験に係る文書又は記録を主な監査対象資料とし、治験の実施過程において適切なタイミングと回数で監査を行う。例えば「治験に係る文書又は記録」一覧では治験の段階に応じて文書等が分類されていると上述したが、この分類に応じて治験開始前、治験実施中、治験の終了後の3期に分けて監査を実施しても良いだろう。
 治験開始前の監査は、治験薬が医療機関に交付される前までに行う。治験実施中の監査は、症例報告書を入手し集計・解析が終了するまでに監査を行い、多施設共同治験の場合は複数回にわたって監査を実施することも可能である。終了後の監査は、総括報告書作成のタイミングでデータマネジメントや統計解析などを主対象に監査を行う。もちろん第Ⅰ相試験や生物学的同等性試験などの短期間の治験の場合は複数回に分けずに、総括報告書が固定される前のタイミングで1回のみ実施することでも良い。
 ここで述べた監査時期と回数はあくまでも一例であって、治験依頼者によっていろいろなやり方や考え方がある。システム監査をやっていれば、個々の治験の監査は総括報告書を対象にするだけという治験依頼者もある。
 

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