GCP監査入門【第2回】

「監査」に独立性が確保されなければならないことは言うまでもない。GCPにももちろん監査の独立性に関する記載があるが、医薬品の企業主導治験のGCPと他のGCPでは表現が異なっている。さらにGCPには監査担当者に求められる要件についても記載されている。今回はこのあたりを見てみよう。

GCP監査の独立性
 
平成元年から10年間続いた、いわゆる旧GCPでは「自主監査」という言葉があった。従って「自主監査部門」ということになるが、「自主監査部門は、治験の依頼に関する業務に直接関与する部門に属さない者又は組織とすることが望ましい」ということが旧GCPマニュアルに記載されており、「望ましい」とは言いながらも監査の独立性について触れられていた。新GCPと呼ばれている現在のGCP省令ではどのような記載になっているのかいろいろなGCPを比較してみよう。
 医薬品GCP省令の企業主導治験では、監査担当者は「監査に係る医薬品の開発に係る部門及びモニタリングを担当する部門に属してはならない」と第23条に書いてある。これが「監査部門」と呼ばれる所以である。その一方で、医薬品GCPであっても医師主導治験の場合は「監査担当者は、当該監査に係る治験を実施する医療機関において当該治験の実施(その準備及び管理を含む。)及びモニタリングに従事してはならない」というのが第26条の9の記載である。
 医療機器GCP省令と再生医療等製品GCP省令では、どちらも企業主導治験では第31条で「監査担当者は、監査に係る治験機器(治験製品)の開発及びモニタリングに関連した業務を担当する者であってはならない」と記載されている。そして医師主導治験では、医薬品GCPと同様に「従事してはならない」という記載になっている。すなわち、医薬品GCPの企業主導治験のみが「部門」の独立性を求めているが、これ以外では全て「部門」ではなく「者」という概念になっている。
 この違いは何かというと、医薬品の企業主導治験は製薬企業が治験の管理を行うものであり、製薬企業ならば「部門」の独立性は確保できる。しかし、同じ医薬品の治験であっても医師主導治験では企業主導治験に比べて治験の実施数が極めて少なく、また医療機関内において治験の実施とは異なる部門や組織に独立性を求めることは非常に困難であるため、監査の「部門」としての独立性を明記していない。同様に、医療機器治験や再生医療等製品治験の実施数は医薬品に比べて極めて少なく、さらに製薬企業に比べて企業規模が一般的に小さいために、監査を担当する部門の独立性を求められると治験の管理が困難になる。そのために監査の独立性については、「部門」の独立性ではなく「者」の独立性として規定されたのだ。

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