GCP監査入門【第3回】

 監査担当者の義務と権限について説明すると前回予告した。それを少し膨らませて、そもそも監査が義務付けられているのだろうか、すなわち治験の監査はやらなければならないのだろうか。そしてさらに治験依頼者が行う監査と規制当局の調査、この両者の関係についても私見を含めて述べることにしよう。

監査実施の義務
 まずは監査を実施することそのものが、GCPで義務付けられているのだということを確認してみたい。GCP省令第23条第1項に、「治験依頼者は、監査に関する計画書及び業務に関する手順書を作成し、当該計画書及び手順書に従って監査を実施しなければならない。」と書いてある。つまり監査を実施することが治験依頼者の義務であることは明らかなのである。そして監査の目的は、治験がGCPと治験実施計画書と手順書を遵守して行われているか否かを評価することにあると、同条ガイダンスで説明されている。
 一方で、GCPのグローバルスタンダードであるICH E6、いわゆるICH-GCPの5.19項に「If or when sponsors perform audits, as part of implementing quality assurance, they should consider:」と書いてある。つまり、日本のGCPでは治験の監査を実施「しなければならない」と義務付けているのだが、ICH-GCPでは「もし監査を実施するのであれば」とか「監査を実施する場合は」という書き方であって、必ずしも義務とはされていない。しかい、監査の目的は前述のGCP省令とほぼ同様であり、その目的のためには実際には海外でも治験の監査は行われている。

監査担当者の義務
 まずは医薬品医療機器等法第80条の2(治験の取扱い)を見てみよう。第10項にこのように書いてある。「治験の依頼をした者若しくは自ら治験を実施した者又はその役員若しくは職員は、正当な理由なく、治験に関しその職務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。これらの者であつた者についても、同様とする」。つまり、監査担当者に限らず治験依頼者、また監査に限らず治験の全般ということになるのだが、監査を行って知り得た被験者さんの秘密を漏らしてはいけない、と明記されている。そして法第86条の3で「次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」として、この第80条の2第10項が掲げられている。同時に「前項各号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない」となっており、いわゆる親告罪なのだ。  
 次にGCPでは監査担当者の義務についてどう書いてあるのだろうか。上述のとおりGCP省令第23条第1項で、①監査計画書と監査手順書を作成すること、そして②これらに従って監査を実施すること、この2つがまず義務として記載されている。この主語は「治験依頼者は」であるが、「監査を実施すること」ということなので、治験依頼者の監査担当者に義務付けられていることは自明である。この監査手順書には、監査の対象や方法及び頻度並びに監査報告書の様式と内容を記述する他、前回のGCP監査入門【第2回】でも述べた監査担当者の要件を当該手順書中に記載しておくことが定められており、すなわち監査手順書に記載すべき項目が義務付けられていると言えよう。
 同条第3項では、監査担当者は監査報告書と監査証明書を作成して、これを治験依頼者に提出しなければならないと規定されている。ここで再びICH-GCPを見てみると、5.13.9(e)項に「When required by applicable law or regulation, the sponsor should provide an audit certificate.」と記載されている。つまりICH-GCPでは、監査証明書を作成することが必須だという書き方をしておらず、さらに提出先の特定もされていない。

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