ICH Q3D 元素不純物に関するEMAのガイドライン

2017/01/05 製造(GMDP)

このガイドラインの目的は、欧州における元素不純物に関するICH Q3Dガイドラインの実際上の運用を詳しく説明することにある。
従来のCHMPガイドラインは主に添加される金属のコントロールに焦点を当てており、これが元素不純物の最も大きな原因の一つには違いないが、このガイドラインではその他の原因も考え、触媒・試薬として使用されないものについても考慮している。
 
さらに大きな差の一つに、許容一日曝露量 (PDE) が設定される点が挙げられる。これは複数の元素不純物が存在する場合の複合的な効果を考えたものである。また、ICH Q8、Q9、Q10、そしてQ11の原則の精神に基づき、リスク評価における元素不純物の管理は製剤の製造者・販売承認者が行うべきリスクマネジメントの一環に含めることとしている。
その新しいガイドラインの概要は、リスク評価に基づいたリスク管理である。その内容を3つに分けて説明する。
 
1、リスク管理に対する様々なアプローチ
PDEを基準とするリスクマネジメントはDrug Product ApproachとComponent Approachという異なったアプローチが考えられる。前者は、医薬製品を精査し、すべての元素不純物についてバリデートされた分析方法により規格を設定し、それに基づき管理戦略を確立するアプローチで分析データだけでなくリスク評価も伴わなくてはならない。
一方Component Approachは成分ごとに元素不純物の影響を評価し、それらをまとめて一つの元素の影響をPDEとリスク評価により比較し、必要な場合引き続きリスクマネジメントと管理戦略により取り扱うものである。各成分の起源による違いは以下の通り
社内製造原薬の場合
ICH Q3Dガイドラインに示されたすべての可能性のある元素不純物を評価し医薬製品の全体でのリスクマネジメントに用いる。
委託製造原薬の場合
原薬が自社製造でない場合、製造業者からの情報は原薬マスターファイル(ASMF)または適正証明書(CEP)の一部として得られ医薬製品の全体のリスクマネジメントに用いられる。
他の成分の場合
原薬以外の成分のサプライヤーからも同様の情報が得られることが望まれる。これは特に天然(採掘)起源の添加物の場合残存元素が残っている可能性があるため推奨される。規格限度値がQ3D OPTION1に適合している場合、添加剤はOPTION1の範囲で任意の割合で使用できる。
特定の元素不純物の限度値をもつEUモノグラフの物質を用いる場合、モノグラフの限度値に適合しなくてはならない。全体でのリスクマネジメントに結果によってはモノグラフより厳しい限度値が要求される場合もある。

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執筆者について

冨樫 将高

経歴

2007年生命理工学部、修士課程卒業、2010年薬学系研究科、博士課程を卒業、同年大塚製薬株式会社に入社。診断事業部研究部にて、結核の体外診断薬開発に従事。2012年株式会社シーエムプラスに入社。
国内外のGMP・生化学に関する情報収集、主に専門的分野の翻訳、社内での教育等を担当する。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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