再生医療等製品の品質保証についての雑感【第36回】

細胞の保管・輸送 (2) ~ 細胞加製品のチャネル【Perspective】 その1

はじめに

 現状で承認された再生医療等製品は、そのほとんどが自己由来細胞加工製品であり、対象も希少疾患が多く、その流通は製造業者から医療機関への直送であり、量も決して多いとは言えません。他方、将来的に再生医療等製品を産業として発展させるには、医療機関における製品の使用量(売り上げ)が飛躍的に拡大しなければ、細胞加工およびその支援産業が成り立ちません。筆者は、極論ですが、企業が利益を得ることはそれに比例して多くの患者が助かっていることと同義であると認識します。より多くの人に再生医療等製品を利用してもらうためには、画一的ではない、それぞれの治療に合ったチャネル(経路)を議論する必要があります。本稿では、再生医療等製品を患者に届けるためのチャネルについて、自己由来細胞加工製品を除外し、ロットを形成する同種由来細胞加工製品に限定して、個人の妄想(笑)を、多くの見解(perspective)の中の1つとして述べさせていただきます。
 筆者らは、阪大紀ノ岡研究室にて製造コストに関わる細胞製造設計のシミュレーション検討を行っていますが、例えば細胞治療(数千万個レベルの細胞数が投与される製品)の製造プロセスを自動化するには、年間数千例以上の臨床運用が継続的に実施されることが不可欠と考えます。そして事業化を検討するならば、そこにおける物の流れと、手順および人的資源(教育訓練レベル)を考慮することが最優先と考えます。本年度では、これらの物の流れと人的資源についても少々雑感を述べさせていただきます。当然、異論は多いと存じますが、笑って許していただければ何よりです。


● 投与場所は病院かクリニックか
 筆者は、細胞加工製品の製造を設計するときには、先ずコストパフォーマンス、次にスループットの向上可能性を検討します。製造要求する母数は、市場からのニーズに依存しますが、その根拠は治療対象となる患者の潜在数ではなく、治療を行う医療機関あるいは医師の、処理能力(手技に依存するものを含む)と、集客意思(治療対象の患者を募集する活動)に基づくと考えます。すなわち、対象となる細胞加工製品の投与が、病院で実施されるのかクリニックで実施できるのか、外科的に投与されるのか内科的に投与できるのか、年間投与数が多いのか少ないのかで、製品の保管や輸送などを含む、物流の考え方が大きく異なります。

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