医薬品開発における非臨床試験から一言【第26回】

2022/02/10 非臨床(GLP)

動物実験委員会の考え方について。

動物実験委員会の考え方

創薬においては、安全性と有効性を非臨床において確認する過程から始まります。そこで、候補化合物が創出されると、これまで述べたin vitroとin vivoでのスクリーニング試験を行います。非臨床でのin vivoとは、「実験動物」を用いた試験になります。この動物の扱いは、法的に管理されており、日本では、実験動物、ペット、家畜、野生動物など、全ての動物を対象とした法律が環境省により定められ、「動物の愛護及び管理に関する法律」(動愛法)と、さらに「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」で具体的に示されています。そして創薬での実験動物は厚労省の管轄になり「動物実験等の実施に関する基本指針」を遵守します。また、日本学術会議からの「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」を参考にします。

これらの法律および省令において、医薬品あるいは医療技術の開発や改良には動物実験が不可欠なことから、実験動物の 飼育管理および動物実験に従事する者は実験動物を生命あるものとして尊重し、その生理・生態・習性等を十分に理解し、常に愛情を持って接するように努めることが求められています。さらに動物実験従事者は、動物実験の科学的かつ倫理的基盤となる3Rの原則、Reduction(使用動物数の削減)、Replacement(代替試験法の積極的な採用)、Refinement(実験手技の洗練による動物が被る苦痛やストレスの軽減)を念頭におき、動物実験を適正に実施します。

創薬企業では、社内の創薬部門に加えて、外部委託試験で実施されるすべての動物実験に責任を持って管理することを原則とします。外部委託試験施設にも同様の動物管理の原則が運用されており、それに従うのはもちろん、委託元は試験の計画において適正な動物実験を行うように努めます。また適用される実験動物の範囲は哺乳類とし、そのほかの生物医学的実験については、これに準拠します。そして、適正に運用するための組織として動物実験委員会(以下「委員会」)を設置します。

委員会は、実験動物の管理および動物実験に従事させる者に対し、適切な教育訓練を行います。つまり、動物実験を計画する際には、動物の生命と動物倫理を尊重しつつ試験目的を再確認し、代替法の積極的な採用、使用する動物数の削減、苦痛の軽減に配慮し、適正な供試動物の選択、飼育環境の確保、実験方法の検討を行うように教育します。そして、委員会は、動物実験の計画段階において審査し、動物実験終了を確認し、必要に応じて助言を行います。

このような動物実験の管理の原則に従うと、実験動物が余ったから・・試しの実験でも・・は、とんでもない発想だと思います。また、余分な動物が必要・・は、実験系の未熟、未完成を露呈しており、必要な実験動物数は科学的に根拠のある計画動物数にします。実験動物の管理は、創薬研究で当然の行為です。

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執筆者について

内藤 真策

経歴

兵庫県出身。元(株)大塚製薬工場 研究開発部員。
医薬品開発における薬物動態からの安全性評価を専門とし、光学活性体の薬物動態、mRNA変動による肝臓の酵素誘導、薬物相互作用などの分野に注力してきた。京都大学で学位取得。現在は信頼性の基準について議論。
製薬協基礎研究部会では長年に渡り副部会長を務め、薬物動態分野のレギュラトリーサイエンスを牽引した。徳島大学客員教授、薬物動態談話会常任幹事、日本薬物動態学会および日本毒性学会の評議員を務めている。
論文は英文97報、総説3報を執筆し、共著では「ファーマコゲノミクスの進歩と創薬科学への応用」、「代謝物の安全性評価における投与量設定と投与経路選定」、「探索段階を含む非臨床と臨床段階での非GLP 試験の効率的実施事例」など10編を数える。薬剤師、趣味は写真撮影・ドライブ。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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