スタートアップバイオベンチャー経営(栄一の独り言)【第4回】

2022/01/07 その他

バイオベンチャーの戦略的事業戦略と知財戦略のポイントについて。

<前回のあらすじ>
事業戦略ファースト、事業戦略に応じた知財戦略の順番です。
闇雲に特許出願するのではなく、事業戦略を実施・展開していくのに必要な知財戦略(ライバル企業の参入障壁をどう築くか、ノウハウとして秘匿すべき情報をどう秘匿化するか等)を考えます。基礎研究成果を実用化に結び付ける戦略および基礎研究成果の組み合わせが知財戦略の構築にとって大切です。

<今回のお話し:バイオベンチャーの戦略的事業戦略と知財戦略のポイント
これまでのベンチャー企業は、時間が掛かる創薬から開発まで、すべて自分で行おうとして、所謂、「死の谷」に直面して息絶え絶えの状況でした。この「死の谷」を回避するペプチドリーム社の賢い事業戦略は下記の通りです。
ペプチドリーム社は、最初の「標的分子(ターゲット)の探索・特定」と後半部分の「動物試験(前臨床試験)」と「臨床試験」はクライアントである製薬企業に任せ、同社は、「候補化合物の創出および最適化」に集中することにしました。製薬企業とは、「パートナーシップ」という形を取り、研究開発費用やそれ以降のプロセスでも、成功したイベントごとに製薬企業から支払われる、所謂、マイルストンペイメントの契約となっています。更に、開発が成功し、上市に至れば、一定のロイヤリティが支払われる契約になっています。即ち、創薬開発の各段階に応じて収益を順次計上できるビジネスモデルを構築しています。
従来のバイオベンチャーモデルでは、お金が掛かる、「死の谷」に遭遇し、試行錯誤しながら進めるために、年に1~2本程度のプロジェクトしか進められませんが、ペプチドリーム社のやり方で進めるとコンスタントに50-60プロジェクトを実施することが出来ます。

図1 創薬のプロセスとペプチドリーム社のビジネスモデル
(出所: ペプチドリーム社 2018年6月期 第二四半期決算説明会資料)

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執筆者について

山口 栄一

経歴

A1 Partners 代表。
九州大学大学院にて薬学博士取得。塩野義製薬およびバイオベンチャー企業で20年超に及ぶ事業開発経験を有する。同社事業開発部/経営企画部 部長を歴任。海外事業経験も豊富で、シオノギシンガポール初代社長、Shionogi Qualicaps, Inc. (米国ノースカロライナ州) Vice President、及び、Shionogi New York Ltd. で臨床開発に従事した。 バイオベンチャー企業で、取締役兼社長執行役員を勤め、バイオベンチャースタートアップ企業の経営経験を有する。日本ファルマアライアンス協会 初代会長として製薬業界へアライアンスマネジメントの普及に貢献した。感染症関連官民連携会議(座長:尾身 茂先生)で、「民」側の代表として、副座長を務めた。日本製薬工業協会 国際委員会 幹事としてグローバルヘルスにも従事した。Blockbuster Tokyo 2021のメンターに選出された。更に、厚生労働省委託 医療系ベンチャー・トータルサポート事業、MEDISO (Medical Innovation Support Office)のサポーターに採択された。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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