スタートアップバイオベンチャー経営(栄一の独り言)【第3回】

今回は、スタートアップバイオベンチャー企業の生死を分けると言っても過言ではない、「知財戦略」のお話をします。何故なら、スタートアップ企業の企業価値は、「無形資産」と呼ばれる「知的財産」そのものだからです。

スタートアップバイオベンチャーの知財戦略
独創的な研究成果が出たから特許出願しようと闇雲に特許出願されておられませんでしょうか? 或いは、多くの特許ポートフォーリオを持っている方が研究開発型バイオベンチャーとして見栄えが良いという考え、または、ベンチャーキャピタルから出資を受けやすいという考えで特許出願をされておられませんでしょうか?
「特許を持っている」ことが「ライバル企業の参入障壁を築けている」訳ではありません。他社は、特許を迂回してターゲット市場に参入してきます。或いは、技術の進歩により、当該基本特許を使わない新たな技術開発をして市場参入してくるかもしれません。参入障壁にもならないような特許出願は、ライバル企業への安易な情報開示リスク(「秘匿性」の消失)や特許維持費用(外国出願の場合は、出願国が多くなると当該国の言語への翻訳費用が馬鹿にならないほど高額になる)を考えると止めておいた方が良いでしょう。

事業戦略ファースト、事業戦略に応じた知財戦略の順番です。
スタートアップベンチャー企業としては、どういう事業戦略でビジネスを行っていくのかをまず最初に考えましょう。そして、その事業戦略を実施・展開していくのに必要な知財戦略(ライバル企業の参入障壁をどう築くか、ノウハウとして秘匿すべき情報をどう秘匿化するか等)を考えましょう。時々、この順番が逆になってしまい、特許出願してから事業戦略を考えておられるベンチャー企業さんが見受けられますが、それはかなり危うい事業展開となります。
事業戦略を考えるに当たって次のことを考えましょう。

  1. <市場の魅力> どういう社会課題、Unmet Medical Needsがあり、その課題を自社のシーズ、技術、サービスが解決できるとどれくらいの市場ポテンシャルを持つか、大変魅力的な市場を対象としているか?
  2.  <競争優位性> ターゲットとする市場において、他社の製品・技術・サービスとはっきりと差別化できる圧倒的な競争優位性を持っているか?
  3. <収益性> 投資家にリターンをお返しできる高収益を実現・維持できる明確且つ具体的な収益モデルであるか? 投資家は、出資したベンチャー企業が上場または買収されて大きく儲かることを期待して出資していることを肝に銘じておかなければなりません。
  4. <戦略的提携> ベンチャーの規模では実現困難な大規模な事業展開を可能にする戦略的提携、即ち、大手企業が積極的に協業・提携を求めてくるような技術力・シーズを持っているか? 大手企業は、戦略領域が一致し、且つ、スタートアップ企業がもつ研究プロジェクトや技術に「わくわく」するか、「ときめく」かも提携の大切な要素と考えていることをスタートアップ企業は頭に入れておいた方が良いでしょう。
  5.  <経営チームメンバーの構成> 創薬技術への深い理解と開発戦略を共有できる経営チーム構成であること。 また、ベンチャー経営には様々な困難が待ち受けているので、 その困難を乗り越えていく「熱意」が最も重要です。経営チームメンバーには、「何としてもやり抜く」熱意が求められます。

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