医薬品の技術移転のポイント【第6回】

不適合となった事例「国内原薬製造所(化成品)[承認前調査]」

PIC/S加盟後のGMP関連の状況について
2016年2月16日(火):大阪会場/2016年3月9日(水):東京会場
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 品質管理部
https://npo-qa.jp/wordpress/wp-content/uploads/2016/09/3f577a72ef443c037515c624add9da09.pdf
(参照 2021-11-15)

 国内製造所でした。承認前調査ということは、ある会社が新製品を申請し、その製品の原薬製造所にGMP適合性調査が入り、不備が見つかったのでしょう。その不備で4社は製品回収をせざるを得なかったようです。まさにとばっちりですが、今それが起きているのでしょう。申請した会社はこれからですので、製品回収はありませんが、新製品の承認が遅れたと思います。GMP適合性調査不備で、承認が遅れた事例が何件あった、その時の指摘は**で製品回収を行っているとPMDAから報告があると、他の製造所や製販もそこから学ぶことで品質が良くなっていくのではと思います。残念ながらそれはありませんので、製品回収/PMDAの講習会報告などから推測することになります。

指摘内容
・農薬と設備を共用。洗浄バリデーションの評価が不十分で、現行の洗浄方法では交差汚染の恐れがある。

 やはり、洗浄バリデーションの不備でした。汚染しているということではなく、汚染していないとのバリデーションデータがなかったか、不十分だったのでしょう。水虫薬にそこまで求める品質なのかと思いました。筆者は田舎出身で、田んぼに農薬散布するとその場所全体が真っ白になり、その中を自転車でよく通ったものです。息はとめていましたが、目と顔に農薬がつきました。それに農薬と水虫薬に骨格が似ていますので、問題ないと思うのですが。
水虫薬中の農薬の残量量を分析すればわかります。それが一定基準以下であれば問題ないと思いますが、回収になっています。

・バリデーション;適格性評価未実施、検証項目不足、重要工程パラメータの許容値を設定せずにPVを実施した結果で設定。試験の技術移管が手順書のみ。
・変更管理;変更にあたっての変更の影響評価の記載欄がなく、製品品質への影響評価を行っていなかった。
・逸脱管理;製品品質への影響評価を行わずクラス分類。さらに、軽微の逸脱に分類したものは是正措置を行わない。
・OOS処理;不適合品に関する原因調査が不十分であり、製品品質への影響も評価していない。

 PMDAはOOSの処理を注意深く見ているようです。小林化工、日医工、長生堂製薬でもデータとの取り扱い/OOS対応が問題になっていました。

・農薬と設備を共有するにあたり、洗浄バリデーションと、生成工程の堅牢性として農薬を除去できることの検証が必要であったが、適切に実施されていない。
・スワブ法は行われておらず、リンス法のみでの検証で妥当であることが示せない。

 多くの原薬製造所ではほとんどリンス法で行っています。洗浄バリデーションの第一選択肢はスワブ法となっています。そのため、スワブ法とリンス法が同じであることの根拠データを取っておく、または設備の構造からスワブ法ができないのでリンス法を行っているとの説明が必要になります。

・洗浄するまでのホールドタイムが7か月以上と長く、分解物による洗浄への影響が考慮されていない。

 洗浄のホールドタイムには、ダーティとクリーンホールドタイムがあります。欧米のGMPには要求事項ですが、日本では明確には求められていません。
PIC/S GMPガイドラインには通知で出された6つのギャップ以外にも多くのギャップがあります。その中で一番負荷がかかるギャップは「全梱包の同一性確認」です。このホールドタイムもギャップの一つです。そのギャップについて事務連絡で下記の説明を行っています。
「GMP省令を踏まえ、製造業者等の対応において許容できないリスクがあると 判断された場合は、必要な指導にあたりPIC/SのGMPガイドラインにある手法を求める場合もあることから、品質確保の観点から、 PIC/SのGMPガイドラインを踏まえ、製造業者の自らの手法においても同等以上の品質が確保される根拠の妥当性について十分に確認しておく必要がある。」
 まさに、PMDAがPIC/S GMPガイドラインの6つのギャップ以外のギャップを求めています。そうするとGMP適合性調査で指摘されないための対応として、一つでもPMDAが過去に行った指摘事項を減らす準備をしておくことが重要になります。逆にそれが出来ていると良い意味でのハロー効果になり、GMP適合性調査員に良い印象を与え、評価もよくなります。
 では、この指摘事項にはどう対応したらよいでしょうか?ダーティホールドタイムを行うには下記の対応が必要になります。
 製造が終わって、2時間後に洗浄バリデーションを実施したとすると、2時間以内に洗浄しないと落ちるとの保証にはなりません。お茶碗にご飯粒がついたものをすぐに洗うと簡単に落ちます。しかし、疲れたからといって、2時間放置しているとご飯粒がお茶碗にこびりついていくらこすっても落ちません。仕方なく、水に浸けてご飯粒が柔らかくしてこするとようやく落ちます。これは経験された方にはよくわかると思います。まさにダーティホールドタイムとは、製造が終わった何時間後に洗浄バリデーションを行ったかをSOPに規定してそれ以内に洗浄を行ってそれが出来ていることを記録にとり確認します。では、これまで行った洗浄バリデーションは、製造終了何時間後に行ったかの記録は取っていたでしょうか? もし取っていないともう一度洗浄バリデーションをやり直す(時間を記録)か、製造終了後にすぐに洗浄するかです。
 クリーンホールドタイムは、洗浄後いつまで使えるかのバリデーションが必要です。一般には外観と微生物で確認しています。

 

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