医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第19回】

欧米のAuditで求められる対応について。
「日本の製薬会社が欧米のAuditで求められる対応」
1、 製薬企業のあるべき姿
製薬企業の国際化が進む中、企業の多様化を配慮した製薬工場の各種取り組みが求められるようになってきました。その中で課題を抱えているのは欧米のAuditに対応することです。日本の製薬会社・工場は国内の行政や企業のAuditは既に経験しているので、良いにつけ悪いにつけAuditの進め方を知っています。指摘事項の対策や結果報告も熟知しておられることと思います。それでも、重大な問題を起こして新聞沙汰になっている企業もあります。しかし、ここでは十分な対応力を準備してコンプライアンス問題は心配なしとお考えの日本の製薬会社・工場に焦点を当ててゆきたいと考えます。日本国内では長年、監査や査察という名前でAuditを受信してこられた会社においてはその対応が身についており、会社によってはAudit対応の社内規定や運用SOPを作成し、査察や監査があっても、その対応を専門の部署や担当者に任せ大きな問題なく仕事を進めてこれたことと思います。然しながら、日本社会が国際化多様化が進んできたことにより、最近は欧米の行政や企業のAuditを受診せねばならない事態が必然的に多くなってきました。従来の国内の行政や企業のAuditと同様と考えている方があまりにも多くそのまま対応して大変な混乱をされています。日本の医薬品会社・工場は欧米のAudit Systemを知る機会が無いにも関わらず対応をしてゆかねばならなくなってきました。欧米のAuditorsは会社の単なる部署の一員ではありません。専門分野、つまりGMPやHSEの例でいえばそれぞれの分野のGlobal Standardを熟知した専門家です。かつその分野のAuditor Licenseを取得しており、その後Audit経験が10年以上あるような専門家がその分野の知識のみならずAuditのプロとして職業を成立させています。彼らはAuditのための勉強を毎日積み重ねています。筆者も海外の事業所をAuditorとしてAuditに参加してきた経験があり、勉強を約15年ほどやって来たので状況がお話しできるのです。欧米のAuditではいきなりFindings(指摘事項)を探したり、指摘するようなことはありません。まずはSite Tourで工場の内部や屋外施設をサーと見て歩きます。この際、一瞬で見たものを見落とさないでObservation concern(気になった事象)としてログブックに記録して置きます。これはハード面のみならずソフト面も拾います。実はこの作業がプロでなければ見落としをしてしまうことがありAuditのレベルが問われることになります。将来Findingsとなる可能性があるサイトのリスクや問題点をIdentification(特定)しリスクの大きさを評価します。これは法に抵触するだろう問題点に繋がるようなものや管理上の担保が不可欠で最終的に保証出来ているかを段階的に徹底的に追及してゆきます。これはGMPもHSEも同様で例えば日本の行政や企業の査察やAuditとは切り口の異なるものでグローバルスタンダードに従い、プロのAuditorが弱点を特定して徹底追及を行い、最終的にFindingsとして社長に直接Reportします。そして社長名にて対策計画の即時提出を求めます。Auditorには欧米のライセンスを持った高いレベルのAuditorや大手企業に所属しているプロレベルのAuditorと委託を受けたプロのAuditorが行う場合があります。従って、これからの日本の医薬品工場は欧米のAuditに対応できるように新規設備を導入する場合は疑義を持たれるような設備設計はせず、必ず新規導入設備評価を行い顕在化しているリスクはもちろんのこと潜在的リスクもAcceptable(許容できるレベル)な設備の導入をすることが自らを助けることになります。
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