オーナーのプロジェクトマネジメント【第10回】

2016/06/30 施設・設備・エンジニアリング

星野 隆

今回より、基本設計ステージについて記載していく。

 
参考 以前に記載した記事の目次
 1.  はじめに
 2.  プロジェクトステージの概要
 3.  何をマネジメントするか
 4.  プロジェクト計画に関連する主要な問題点
 5.  プロジェクトマネジャーの役割と責務
 6.  プロジェクトマネジャーの資質
 7.  プロジェクトで使用することば
 8.  外部への依頼範囲
 9-10. FS(Feasibility Study)ステージ
11-13. 基本計画(概念設計)ステージ

14. 基本設計ステージ【その1】
  第1回の表1に記載したが、基本設計とは、基本計画に基づき当該プロジェクトの基本的な仕様を決定し、施工製作の見積ができる仕様書を作成し、実施のための最終的な予算化、スケジュール化を行うステージである。つまり、生産設備・付帯設備・ユーティリティ設備などの諸施設の、完成後に期待される性能を具体的に定義し、機能設計(詳細設計)に必要な諸条件を構築する設計作業およびエンジニアリング作業を行うステージである。さらにこの基本設計の成果(予算、スケジュール、基本設計パッケージなど)の承認を得て、次ステージへの移行のGo/No-Goの第三次評価(事業化の最終評価)を行うステージと考えられる。新製品の場合は、工業化研究成果、一般的な技術データ、適切な設計手法に基づき、プロセス(製造工程)の最終化を行う。このステージにおける検討のすべてを製薬会社にて実施することは、現状の国内製薬会社には困難な状況であり、プロセス設計を除く基本設計の全てあるいはかなりの部分を外部に依頼せざるを得ない。
 
 基本設計の良し悪しが、今後のプロジェクトの完成への大きな影響を及ぼす。またプロジェクトの完成以降の設備の長期稼働における運転のし易さなどへ、大きな影響があるといっても過言ではない。私は、常々、基本設計が終了すれば、後はプロジェクトのレールに乗って進められる。それほど、基本設計は重要であり、またロバストな基本設計が必要である。まだ基本設計の段階だから適当にして、詳細設計で考えればよいというような考え方は、絶対に無くすべきと考えている。プロジェクトでは、コンセプトを発展させながら、それを基にして基本設計を行い、そして基本設計を基にして、詳細設計へ発展させていくもので、らせん階段をぐるぐると上がっていくようなものである。したがって、らせん階段の下部が外されると、上部にある詳細設計は崩れ落ちて、再度下から積み上げていくことが必要となってしまう。

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執筆者について

星野 隆

経歴 1971年3月大阪大学工学部機械学科卒業後、同年4月武田薬品工業(株)に入社。2014年3月の同社退社までの間、同社および同社の関連会社における建設工事において、プロジェクト業務に携わった。プロジェクトの種類としては、医薬品、ビタミンバルク、調味料バルク、化学品、農薬等の生産施設をはじめ、研究所の建設にも携わった。また、国内外のプロジェクトや、他社との共同プロジェクトにも参画した。また、メンテナンスやユーティリティ部門のマネジャーの経験もあり、総合的なエンジニアである。
社外の活動としては、ISPE(国際製薬技術協会 : International Society for Pharmaceutical Engineering)の日本本部理事、常任理事を歴任。日本プロジェクトマネジメント協会理事。
現在は、個人コンサルタントStar Enterprise(プロジェクトマネジメント、エンジニアリング、イベント企画)。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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