省令改正案検討の経験からみるGMP省令改正のポイント【第4回】

 PQS以外の条に移ります。第2条の用語の解説(本稿では医薬部外品には触れない)は該当する条を解説する際に触れます。 

適用の範囲(第3条)
 医薬品は第2章、医薬部外品は第3章の規定に基づくとあります。定義と比較するとわかるように、医薬部外品の製造業者にはPQS(第2条第9項)とQRM(第2条第10項)の適用がありません。省令の最終化にあたっての厚労省の対応で、現時点で医薬部外品の製造業者等に適用するのは難しいだろうとの判断によります。

承認事項の遵守(第3条の2)
 本条は厚労科研班検討対象外です。これは数年前の一斉点検の発端となった不正製造問題に起因するものと推察します。課長通知に「承認事項」が定義されており、製造販売承認及び一部変更して承認された内容(軽微含む)、日局等の公定書、MFで規定するものとなります。なお、承知のとおり日薬連からの調査協力依頼(日薬連発第610号:2021年8月5日)で、公定書又は規格集を参照している試験検査以外の場合、承認書と異なる試験法を利用できないことが課長通知に示されている旨あるので留意する必要があります。この件での詳細な対応については、日薬連と厚労省(監麻課)との今後の協議結果によると考えます。

医薬品品質システム(第3条の3)
 第2回・第3回参照

品質リスクマネジメント(第3条の4)
 課長通知によりQ9(PIC/S GMP Annex 20)が「参考」になると記載されています。Q9の4章には他のモデルを使用してよいとなっているので、Q9の参照文献にあるようなISO/IEC Guide 73/51やISO 14971等の適用もありうるでしょう。リスクの用語では、Q9では単に「リスク」としているところ、課長通知では「品質リスク」としているので、本稿ではそれに従います。ちなみに、Q9がQuality Risk Managementになったのは、Quality Riskありきで命名したのではなく、Risk ManagementのICH Quality領域用ということを明確にするためでした。Q9では危害に「製品品質の不良又は安定供給の欠如による被害を含む」となっているので、品質リスクには安定供給も視野に入れる必要があります。当然ながら、製品品質にするか安定供給にするかといった選択肢を求めているのではなく、製品品質か安定供給のいずれも欠けてはならないという意味での「又は」です。第2項のあらかじめ指定した者は実施の手続き等に関する文書と記録の作成・保管の責任者であって、Q9でいうところのリスクの評価結果を判断する意思決定者ではありません。Q9の4.1章で規定する以下の能力を有する意思決定者がいない場合、QRM/PQSの実効性はないと判断されるでしょう。
 ・組織内の様々な機能及び部門にわたるQRMを調整する責任を負う
 ・QRMプロセスを定義付け、展開し、レビューを行うとともに、適切な
  資源の投入を確実に実施する責任を負う
 QRMでは商業生産段階でどのようにツールを使って目的を達成するのか悩むところです。Q9リリース当初よりFMEAなどの高度なツールが多くの機会で紹介され、確かにこれらのツールを自由に使えることに越したことはないのですが、使いあぐねて資源ばかり消費することになれば本末転倒でしょう。Q9の本質は資源配分の判断にあります。全ての事象に資源をかけることは非現実的であるため、資源を配分しなかったり薄いところに対して透明性をもって合理的根拠を説明できるようにしておく必要があります。そのためのリスクアセスメントでもあります。様々なツールから適切なものを選択するのはリスクを評価する者の判断に委ねられます。また、ツールを使わない方法も認められています(形式にとらわれないプロセス:Informal Process、ICH Q9の5章 ⑴)。ツールを使用する場合も上記のような高度なものでなくとも、いわゆるQC7つ道具や新QC7つ道具と、国内で従来から親しまれている手法(5章の「リスクマネジメントを促進する基本的な方法」)も含まれているので、評価者が十分に原理を理解し、評価対象に適切と考える手法を活用することが求められます。
 

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