医薬品工場建設のノウハウ -プロジェクトの成功に向けて-【コラム-4】
コラム-4 CAPEXとOPEX、設備投資の採算性評価
設備投資は、新製品の製造、生産量の拡大、省エネや自動化による製造原価の低減など目的は様々ですが、設備投資の計画内容について経済性計算を行い、その必要性、妥当性を検証しておく必要があります。
具体的には、生産プロセスや年間生産量を基に、施設の規模、概略レイアウト、主要生産機器仕様、必要ユーティリティなどの概念設計を行った基本計画の段階で、採算性を評価してプロジェクトを前に進めるかの判断を行います。この際の経済性計算に、投資額(CAPEX: Capital Expenditure)と運用費(OPEX: Operating Expenditure) が必要となります。
基本計画段階では、見積精度よりも時間が優先されること、また積算を行うための設計資料が充実していないことから、CAPEXについては、建物の面積、生産量、主要な機器の能力と建設費との相関法により超概算を求めることになります。この積算方法は、OME(Order of Magnitude Estimate)と呼ばれ、一般的にその精度は±30~50%と定義されています
相関法については、同種の機器の容量、能力と建設費を対数表にプロットすると直線となる経験則があり、その傾きが0.6で近似されることから0.6乗則と呼ばれる指数法が代表的な方法です。積算精度を向上させるためには、過去プロジェクトのコストの実績を分析してデータ化し、工事材料/労務単価の変動や経済動向指数の傾向を把握して、コスト相関データを充実しておく必要があります。なお、楽観値(O)、標準値(N)、悲観値(P)として、見積値=(O+4N+P)/6 として計算する三点見積法を採用する場合もあります。
OPEXは、設備を稼働し生産を行うための費用であり、人件費、光熱費、保全費、清掃費などを含みます。主な光熱費は、電気料金、給排水料金、燃料費(ボイラー稼働等)であり、基本計画に於ける主要な生産機器、主要建築設備(空調、冷熱源機器など)の容量、能力、想定生産スケジュールに基づく稼働率、季節変動(外気温、湿度)に基づく負荷率により1年間の費用を算出します。メンテナンス費については、フィルターなどの部品交換、ボイラー、クーリングタワー用薬品などの消耗費、定期保全費用、キャリブレーション費、HEPAのリークテスト費などバリデーション費用を計上します。基本計画段階では保全計画が策定されていないため、同種の施設の過去の実績を基に見積計上をすることになりますが、年間のメンテナンス費はCAPEXの3~5%が目安と言われています。
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