医薬品の外観目視検査における要求品質の明確化のために【第6回】

1.異物による主な回収事例
 品質不良により、自主回収が決定し、都道府県経由で回収着手報告書を提出すると、PMDAのホームページにその内容が掲載される。
回収着手報告書には、以下の内容を記載しなければならない。特に、危惧される具体的な健康被害については、回収クラス決定の際の大きな要素である。また、回収対象については、回収理由やその影響範囲を十分に調査し、科学的な根拠をもって設定しなければならない。

 医薬品回収の概要
 (クラス分類)
 1.一般的名称及び販売名
  一般的名称:
  販売名  : 
 2.対象ロット、数量及び出荷時期
  包装形態  製造番号  数量  出荷時期
 3.製造販売業者等名称
  製造販売業者の名称 : 
  製造販売業者の所在地:
  許可の種類     : 
  許可番号      : 
 4.回収理由
 5.危惧される具体的な健康被害
 6.回収開始年月日
 7.効能・効果又は用途等
 8.その他
 9.担当者及び連絡先


 自主回収の事例を以下に紹介する。
PMDAのホームページから、表示関係の不備による自主回収も増加していることから、異物混入によるもの以外に、表示関係の残念な回収事例も記載した。
 これらの事例を読み解くと、同様な事例が多発していることが分かる。

<事例1>
一般名及び販売名
一般名: プロ**** 
(回収理由)
 海外製造所において、当該製品と同一製造ラインで製造した一部のロット製品の保管サンプルに異物が認められました。分析の結果、不活性のステンレススチールの粒子であることが判明致しました。製造時の薬液調整工程中に混入した可能性が極めて高いものと考えられます。異物混入が確認されたロットに関しまして、米国等では自主回収を実施しております。なお、米国における回収ロット製品に日本国内で流通しているロットは含まれておりません。しかしながら、本品目は異物混入が認められた製品と同一製造ラインで製造しているため、弊社では万全を期して、現在国内に流通している全ロットを回収することに致しました。 
(危惧される具体的な健康被害)
 異物は、主に肉眼で見えない程度(10ミクロン以下)の不活性のステンレススチールの微粒子で、万一混入した場合は主として細網内皮系のマクロファージ等で貪食処理されるものと考えられます。場合によっては血流への影響や炎症反応を起こす可能性も否定できませんが、重篤な健康被害につながる可能性は低いと考えられます。なお、本件に起因する健康被害の報告は国内外ともに受けておりません。また、当該製品は米国での出荷時に不溶性微粒子試験を実施しており、微粒子を含む異物混入に関する規格に適合しております。

※この事例は、当該回収品目自体には、異物混入が認められていないものの、海外製造所の同一ラインで製造されたものが異物混入により回収されていることに起因している。
自主回収の基本的な考え方として、「有効性、安全性に問題がないことを明確に説明できない場合に回収する」という安全側の対応に基づくものである。
当該品目の参考品を調査し、そこに異物が認められなかったとしても、市場のすべての製品への異物混入を否定できないとの判断である。

<事例2>
一般名及び販売名
一般名: なし 
販売名: (1)***注5mg      (2)***注10mg 
(回収理由)
参考品の安定性試験の結果、経時的に析出した不溶性物質が認められるものがあったので、自主回収することといたしました。 
(危惧される具体的な健康被害)
製造時のpH調整、攪拌不足等による原薬由来の析出物であると考えられ、人体に有害な作用を生じる可能性は極めて低いと考えられます。そのため、重篤な健康被害が発生する恐れはないと考えております。現在までに、健康被害の報告はありません。

※この異物は、「内因性異物」に分類されるものであるが、製造直後には確認できなかった異物が、成分の経時的な不溶化により生じた例である。ガラス容器からのアルカリ溶出により、薬液のpH変動の可能性もあるので、原薬特性を基に容器選定する必要があるだろう。

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