細胞加工施設を運用するキャリアの謎【第6回】

2021/01/29 施設・設備・エンジニアリング

本稿は、再生医療業界において細胞培養加工施設と呼ばれるハードウエアに関わる人間が、出自文系という不可思議なキャリアを絡めつつ、当該分野についてつらつら書いているという、どこにニーズを置いたらいいかよく分からないコラムである。よくセミナーなどで講師をする際、事前に「このセミナーを受けて習得できる内容」などを書くが、このコラムでそんなことを要求されていたら困っただろうな…と思う程度には、コロナ禍を挟んで全6回+α、徒然の内容だった。正直筆者が「あんまり真面目にキャリア考えてこなかった人」であることが露見した内容だった気がする。
 そんなコラムも、一周回ってちゃんと再生医療に話を戻し、今回で終えようと思う。

▽○○哲学というもの
 さて前回は「役に立たないけど楽しいからいいじゃん」という、フラフープ遊びみたいな言われようをここでされた哲学さんだが、最近、書店をめぐるとそこに「○○哲学」の表題をやけに見かける気がするのは気のせいか。いや、○○の箇所にごく身近なジ●リとか入った一般タイトルはもとより、親書でヘーゲルは冒険じゃない?とか、同じく新書でスピノザとか、えっラカンですか正直丸ごと一冊ラカンはキツいですとか、まあ専門書ではない範囲にもそういう本をちょいちょい見かけるようになったな、という感触がある(書店がそもそも専門店、というわけでもありません)。
 実は、こんなふうに「哲学」という語がプチ流行りするタイミングには以前から法則があると言われている。哲学は「既存の社会の枠組み」に一般の人が不安を覚えた時に振り向かれる、というもので、なるほど○○哲学系タイトル以外にも、民主主義とはなにか、国とはなにか、資本主義とはなにか、という制度に関するタイトルもこのところ多い。勿論、世界が好景気に浮かれているとき、この手の話はあまり振り向かれない。
 コロナウイルスによって、図らずも同じ問題を枠組みが異なる世界中が共有してしまったわけだが、そこに生まれた差異や考え方の違いを突きつけられて、今更ながら「世界」の広さを考慮する上では、確かに「なんで、どうして、なんのために?」という、本質的なところを掘り下げるツールは必要ということなのかもしれない。
 たとえば、日本でも緊急事態宣言の際、他国とは異なる法の建付けについて議論がなされたわけだが、そもそも法の強制力とはどこから生まれていて、国はなにを根拠にしてそれを執行する存在であるのか?…が不明瞭だと、問題すら曖昧になってしまう。冒頭のヘーゲル新書における「法哲学」はもとが難解な上、読み飛ばしがまったくできない構成のため冒険だとは思うが、そも「法」とはなんぞや?と疑問に思ったら、ヘーゲルは避けては通れないだろうとは思う。

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執筆者について

鮫島 葉月

経歴

一般社団法人免疫細胞療法実施研究会事務局、株式会社日本バイオセラピー研究所 事業推進部部長
慶応義塾大学大学院医学研究科(修士)修了後、2008年株式会社セルシードに入社。再生医療に係る臨床用細胞加工物の開発および品質保証を担当し、当時の細胞培養加工施設の運用整備(GMP準拠)に携わる。2012年(株)日本バイオセラピー研究所に入社、再生医療関連法に同社を適応させ、特定細胞加工物の製造許可を取得。新規の製造施設設計と運用構築、文書策定等を行い、年間3000バッチ以上の特定細胞加工物を製造する細胞加工施設の施設管理責任者を担っている。
一般社団法人免疫細胞療法実施研究会においては、研究会事務局として、再生医療等を行おうとする医療機関向けに申請サポートデスクを運営。すでに200以上の計画策定を支援している。
また当該法人にはICTA特定認定再生医療等委員会を設置し、委員会事務局として再生医療等の審査対応を行っている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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