微生物の自主管理と製品回収についての一考察

2020/12/11 品質システム

"微生物の自主管理と製品回収についての一考察
 ある固形剤の製品が微生物で自主回収になりました。
販売名 A錠250mg  https://www.info.pmda.go.jp/rgo/MainServlet?recallno=2-9495
対象ロット  出荷数量(箱)  出荷時期
3       5,482箱    2019年6月、7月、2020年2月
回収理由 2020年6月15日(回収開始年月日)
委託先製造所において製造した当該ロットに対して実施した微生物限度試験において、日本薬局方参考情報に記載の許容限度値を超える真菌数が検出されました。調査の結果、検出された菌は一般環境中に存在するアオカビ属(Penicillium)で、その他に病原性を有する恐れのある細菌は検出されませんでしたが、保健衛生上の安全性を確保できない恐れがあるため、当該ロットを自主回収いたします。 
危惧される具体的な健康被害
 検出されたPenicillium属は、一般環境中に存在する真菌です。また、病原性を有する恐れのある大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、サルモネラ及びカンジダ・アルビカンスは検出されておりません。これらより、重篤な健康被害が発生する恐れは無いと考えております。

日局17 参考情報より
非無菌医薬品の微生物学的品質特性
 非無菌製剤における,ある特定微生物の存在は,製品の薬効の減少あるいは失効につながる可能性があり,また,患者の健康を損なう可能性もある.したがって,医薬品の製造業者は,製造,貯蔵及び流通に際し,最新のガイドラインに従ってGMPを実施することにより,最終製品のバイオバーデンを確実に低くしなければならない.本指針は,非無菌医薬品(原料及び製剤)中に存在する増殖能力を有する微生物(細菌及び真菌)の限度の目安を基準値として示したものである.非無菌医薬品の微生物試験は,微生物限度試験法〈4.05〉の「Ⅰ.生菌数試験」及び「Ⅱ.特定微生物試験」に準拠して行う.非無菌医薬品に対して生菌数試験及び特定微生物試験を実施するにあたっては,微生物管理計画を確立し,それを当該医薬品の品質保証システムの重要な一部として位置づけなければならない.また,試験実施者及び責任者は,微生物の取扱い技術,バイオセーフティ対策及びデータ解釈について専門知識を有していなければならない. 
1. 定義
(ⅰ) 非無菌医薬品:日本薬局方の医薬品各条に収載されているもので無菌でないもの及び最終製品で無菌でないもの.
(ⅱ) 医薬品原料:原薬,添加剤を含む医薬品製造に用いる全ての物質.ただし,医薬品製造用水及びガス類は除く.
(ⅲ) バイオバーデン:非無菌医薬品中に生存する微生物(細菌及び真菌)の数と種類."

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執筆者について

脇坂 盛雄

経歴 1979年エーザイ株式会社入社、9年間、品質管理と21年間、品質保証を担う。
専門領域はGQP品質保証、注射剤及び固形剤の異物対応、品質リスクの発見と低減対応 ・医薬品/食品の表示校閲、製品回収リスク回避対策 ・逸脱/苦情対応、変更管理(一変/軽微変更)対応。品質保証責任者(品責)、統括部長および理事を歴任し、2013年9月末に退職。
現在は企業のコンサル・顧問を行う傍ら講演会講師、書籍執筆などを精力的に行っている。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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