医薬品品質保証こぼれ話【第21回】

リモートワークと主体性の確保

“これまで当たり前だったことが、当たり前ではなくなった!”。今回のコロナ禍により、これまで日々の生活の中で普通にやってきたこと(やれていたこと)が、実は当たり前ではなく、“いろいろな条件が整った中ではじめて可能となっていた”、ということを、我々は改めて思い知らされました。これに該当する事案は、企業、教育、医療、介護、家族、娯楽など、多岐にわたる日常の活動、営みの随所に見られます。今回のテーマ“リモートワーク”も、これまで当たり前だった企業におけるオフィス勤務が、感染防止対策の一環から、これまで通りに行うことが出来ずやむなく行われているものです。同様に、大学などにおいても“オンライン授業”を余儀なくされるなどリモート対応は多くの領域にわたっています。この状況の中で様々な工夫もなされ、リモートならではのメリットも見出されていますが、一方で、業務実績の確保や労務管理の困難性、また、学習効果への不安、さらにはコミュニケーション不足などによるストレスなど、問題点も少なくないようです。今回はこのリモートワークに加え、教育や医療の場におけるリモート対応の現状を確認し、その可能性と課題、また、実効性確保に関し、医薬品の品質保証業務との関連も交えながら考察を試みたいと考えます。

企業活動においては、満員電車通勤によるストレスからの解放や通勤時間が不要となるなど、通勤そのものの社員への負荷が解除されることに加え、業務面でも、運用方法によってはリモートワークに様々な効果が期待されます。Zoomを使ったテレビ会議などもその一つであり、今回の経験から、これまでの会議室での会議を時間と経費の無駄と判断し、リモートによる会議を積極的に採用する企業も増えるのではないでしょうか?ただ、リモートワークが再評価されているとはいうものの、リモートへの置き換えが不可能な業種や実効性が期待できない業務もあり、その是非判断は業種や業務内容に依存することは言うまでもありません。製造業や実験を伴う研究はもとより、レストランなど店舗で飲食物を提供するといった業種、理美容など実際に人が来店しないと始まらない業務などは、本来、リモート対応が不可能であり、一方、情報やアイデアを基礎に業務を行うデスクワークは、基本的にリモートへの置き換えが可能と考えられます。また、営業活動や原材料の購買などの業務は、業務効率に影響しない範囲でオフィス勤務とバランスよく併用することにより、リモートワークが有効な手段となる可能性もあります。このように、企業活動におけるリモートワークはオフィス勤務と併用しながら、運用方法に工夫を凝らすことにより、業績の向上、経費の削減、さらには、社員のモチベーションの向上といったことも期待され、コロナ終息後も一定の適用拡大が期待されるのではないでしょうか?

さて、ここで、リモートワークと医薬品の品質保証業務に関し、少し整理しておきたいと思います。品質保証業務は品質管理のように実験が伴わず、デスクワークが多いことから、一見、リモートワークを適用しやすいように思われますが、文書記録の作成管理といった業務だけではなく、工場監査や工程トラブル対応など、現場に出向かないと的確な対応ができない業務も少なくありません。こういったケースでは、可能な限り現場に足を運ぶことが推奨されますが、状況によっては現場から関連の画像や動画などの送信を受け、それにより状況を確認し原因究明など必要な業務を行うことも可能と考えられます。委託製造所など遠隔地の工場でのトラブル発生時など、すでにそういった対応を経験されている方も少なくないでしょう。また、変更管理や逸脱管理など、品質システムを基礎に遂行される日常の重要業務に関しては、インターネット上で関連のデータを共有することにより、リモート対応が可能と考えられます。このような考えの下に、品質保証業務においてはリモートワークの活用は可能と考えられ、今回のような機会にその効果的な運用手順を整理しておくのもよいかも知れません。

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