医薬品品質保証こぼれ話【第16回】

教育について

医薬品の品質保証を的確に推進する上で「教育」が重要であることはすでに周知であり、今さらいうことでもありませんが、今回は、このGMPの基本要件の一つである「教育」をあえて取り上げ、その基本的な部分について改めて考察を行い、GMP教育を進める上の参考になればと考えます。「教育」は日本のGMP基準においては、「教育訓練」として、「教育」と「訓練」を合体させ一つの用語として用いられていますが、欧米においては「Training」、また、中国では「培訓」という用語が当てられ、これらはいずれも「訓練」を意味します。このことからも分かるようにGMPにおける教育は、製造や試験における操作や手技を習得する際の訓練に重きが置かれ、現場で実地に職場の先輩等から指導を受け、身に着けることが重要と考えられてきました。いわゆる、OJT(On the job training)です。

それでは、今の日本の現状はどうでしょうか?各企業の教育訓練プログラムにおいては、製造や試験のSOP(標準作業手順書)に基づく、現場における操作や手技の習得に重点を置いた教育訓練プログラムが組まれているでしょうか?関係法令の教育に代表される講義方式の教育、いわゆる「座学」が偏重される傾向はないでしょうか?もし、あるとすれば、次々と発出される新しい規制へのフォローなども、少し関係しているかも知れません。また、教育と訓練を一つに捉え、かつ、先に「教育」の文字を置き「教育訓練」として長年使用されてきた「用語」にも、ひょっとすると関係があるかも知れません。このことの真偽はともかく、いずれにしても、GMPにおける教育に求められることは、担当する業務を的確に遂行するために必要な知識と技術を習得することが第一であることに変わりありません。このことは、たとえば、製造記録の作成に関するデータインテグリティに関する教育などについても言えることであり、この場合は座学に加え、現場で実際に製造作業を行いながら、記録の作成方法を学ぶことを意味します。

さて、GMPの実践において重要な「教育訓練」ですが、人材の育成にまつわることわざや格言には枚挙に暇がなく、古来よりその重要性が認識されていたことが分かります。よく知られているところでは、「よく遊びよく学べ!」、「名人の技を盗め!」、「門前の小僧習わぬ経を読む」、「習うより慣れろ!」などがあります。こういった、ことわざなどが共通して示唆することは、「教えてもらう」のではなく、「自ら学ぶ」姿勢が大切であるということではないでしょうか?それと、もう一つ重要なことは、先輩や先生になる者が手本を示すことと言えるでしょう。その手本があってはじめて、「技を盗む」ことや「習わぬ経を読む」ことができます。ちなみに、その手本に接する機会があっても、学ぶ側にその意思がなければ、必要な知識や技術の習得、向上が期待できないのは当然です。

そのほか、上記のことわざからの考察として、「習うより、慣れろ!」という言葉には、実際に何度も繰り返し練習することの重要性が読み取れ、冒頭のことわざ「よく遊びよく学べ」には、仕事以外に熱中できる趣味などの愉しみを持つことにより、人間性や考え方に幅ができ、双方の経験が相互に好影響を与え、より広い視野、高い視点から物ごとを考えることが可能となることが期待されます。

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