医薬品工場建設のノウハウ -プロジェクトの成功に向けて-【第4章-4】①
【第4章-4】① 中分子
近年、開発が進む中分子医薬品について、これまでの設備構築のノウハウから、製造設備の検討項目を示し、設備構築におけるポイントを概説する。
1. 中分子医薬品について
医薬品開発において、原薬を化学的に合成する低分子医薬品に対して、インシュリンのような遺伝子組換体や抗体医薬品の様に培養技術を用いて製造する医薬品を高分子医薬品と呼んでいる。この2つに加え、新たにペプチド合成、核酸合成を原薬とする医薬品を中分子医薬品と称して、近年、その応用開発が進展している。低分子医薬品の原薬は分子量が約500以下、高分子医薬品の原薬は、タンパクが主体であり、分子量は15万程度である。
一方、中分子医薬品のペプチド、核酸は分子量が500~2000程度である。
(1) ペプチド医薬品
中分子医薬品のうち、ペプチド医薬品は20種類のアミノ酸を固相また液相反応により結合させ、ペプチド(タンパクより低分子であるアミノ酸結合体)を合成することにより得られる。合成されるペプチドは、体内で、通常生成されるタンパクの化学反応の活性をもつ部位の構造を備えることが必要となる。また、分解、修飾を受けづらいよう一般的には環状ペプチドとされることが多い。
(2) 核酸医薬品
核酸医薬品については、4種の塩基(アデニン、ウラシル、グアニン、シトシン)を一般的には固相反応により化学的に合成し、数個から数100の核酸を結合させ、オリゴ核酸生成する。オリゴ核酸は投与されたのち、体内で、欠損しているタンパク合成を行うことやタンパク合成を阻害することで、医薬品として効果を示すこととなる。近年では、純粋な化学合成の他、核酸合成に関与する複数の核酸合成酵素を使用し、この酵素の作用を生体内で合成する際と同様に順番に作用させることにより、オリゴ核酸の鎖を伸長する方法も開発されている。
2.中分子医薬品の製造プロセスと設備構築のための検討項目
中分子医薬品の製造プロセスを概説し、製造設備に必要な検討項目を示す。
(1) 中分子医薬品の製造プロセス
ペプチド医薬品においてはアミノ酸配列、核酸医薬品においては、核酸配列を制御する必要がある。アミノ酸配列、核酸配列を制御し、製造を目的とするペプチド、オリゴ核酸とアミノ酸配列や核酸配列を一致させる必要がある。この制御方法においては、1番目のアミノ酸または核酸に、次のアミノ酸1種または核酸1種を正しい部位に結合させる必要があり、アミノ酸、核酸に不要な結合を避けるため、一旦、保護基を修飾結合させ、1番目と2番目のアミノ酸、核酸が結合後、保護基の脱離を行う。この化学反応を繰り返すことにより、アミノ酸鎖や核酸鎖が伸長する。液相反応では、この化学合成を液相(溶媒中)で反応を行うが、固相反応では、樹脂にアミノ酸、核酸を結合させ、次の鎖が伸長し、所定のペプチド、オリゴ核酸が合成されたところで、樹脂からの脱離を行う。
合成反応が完了し、目的のペプチド、オリゴ核酸が得られた後、収集されたペプチド溶液、オリゴ核酸溶液から目的のペプチド、オリゴ核酸を単離する必要がある。溶液中には、未反応のアミノ酸や核酸、目的とした鎖とは異なる結合をした鎖、保護基、溶媒等が含まれている。一般的にゲルろ過等、逆相、イオン交換等のカラムクロマトグラフィや溶媒回収の操作を複数回繰り返すことにより単離する。
単離されたペプチド、オリゴ核酸は環状修飾、糖鎖結合、メチル化等の化学修飾を行い、ペプチド、オリゴ核酸の化学的安定化や体内での動態安定等の効果を付与する場合もある。
目的のペプチド、オリゴ核酸が得られた後、医薬品の原薬とし、無菌ろ過工程や凍結乾燥工程を経て、包装を行う。
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