モノづくりのモチベーション・マネジメント【第5回(最終回)】

はじめに
 
 企業は何のために存在するのか? 企業は誰のために存在するのか? この基本的な命題が問われています。企業は、適正利益を得、ステークホルダー(利害関係者)に還元するという経済的側面と、社会・市場になくてはならない存在であるという社会的側面を持っています。筆者は、前者を企業の"かせぎ"、後者を企業の"つとめ"と理解しています。ここでは、企業の"つとめ"すなわち企業の社会的責任について説明します。
 
 企業の社会的責任の定義として、「企業が法律遵守にとどまらず、企業自ら市民、地域及び社会を利するような形で、経済、環境、社会問題においてバランスのとれたアプローチを行うことにより事業を成功させること。」(経済産業省)あるいは、「様々なステークホルダーを視野に入れながら、企業と社会の利益を高い次元で調和させ、企業と社会の相乗効果を図る経営の在り方。」(経済同友会)があります。いずれも、企業は経済活動と社会的活動の調和(バランス)が求められています。つい最近まで、企業は、株主価値の向上を最重要課題の1つとして取り上げてきました。欧米では、株主の存在が企業活動に大きく影響されてきました。しかしながら、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、『我が信条』(Our Credo)で、我々の第一の責任は、我々の製品およびサービスを使用してくれる医師、看護師、患者、そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対するものであると確信する。・・・我々の第二の責任は全社員―世界中で共に働く男性も女性も―に対するものである。・・・我々の第三の責任は、我々が生活し、働いている地域社会、更には全世界の共同社会に対するものである。・・・我々の第四の、そして最後の責任は、会社の株主に対するものである。・・・(J&J HPより引用)と第一の責任は、顧客に対するものとし、第四の、そして最後の責任は、株主に対するものであるとしている。同社の顧客重視志向が鮮明に述べられたものです。
 
1.企業(経営)理念と社会的責任
 
 企業理念とは、「企業の使命と活動のやり方を宣言するもの」であり、「組織の構成員全員が共有すべき基本的価値観を示す」ものと定義されます。企業理念には、企業活動を行なうための基本的な考え方、経営方針、経営姿勢が含まれます。また、組織の原則、構成員一人一人の行動原則あるいは行動規範が含まれます。参天製薬の経営(基本)理念は、次のとおりです。「肝心な事は何かを深く考え、どうするか明確に決め、迅速に実行する。」「「目」をはじめとする特定の専門分野に努力を傾注し、これによって参天ならではの知恵と組織的能力を培い、患者さんと患者さんを愛する人たちを中心として、社会への寄与を行う。」そして、「組織の原則」として、・ビジョンをもって、・顧客の視点、・創造と革新、・社員の成長、・社会との調和を掲げており、「個人の行動原則」には、・誠実に行い、信頼を得る、・顧客志向で考える、・専門性を身につける、・革新を迅速に、・連帯と協働が示されています。
 
 継続的な経済活動と社会的責任を果たすための企業の根幹が示された企業理念、いくら立派な企業理念を掲げても、その理解とそれを基にした企業活動の実践が大切なことは言うまでもありません。全社で共有化するにはどうすれば良いか?理念を理解するにはどのような事例が良いか?理解するのと実践するのはどう違うのか?継続的に実践するにはどうすれば良いか?などについて試行錯誤を繰り返しながら、全社員を巻き込んだ意見交換を実施してきました。このような企業理念の共有化が現場の従業員にまで浸透化を図ることが、企業理念の理解と実践を促進する唯一の手段ではないかと考えます。

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