現場管理者・監督者へのメッセージ(GMPの3原則から)【第7回】

2014/12/08 品質システム

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5.8.理論収率、Accountability
 原材料の荷揃えの次は、いよいよ製造(加工)へと進む。製造現場の作業が正しく行われたかどうかの確認方法の一つとして理論収率を確認することも、作業ミスを検出する優れた手段である。
 製造(加工)時に原材料が正しく生産系内に仕込まれ、加工品が正しく生産系外に搬出されたかの"物質収支"を確認する手法である。
 

5.8.1.CGMPの理論収率
 この理論収率とは、CGMP§211.103の「percentages of theoretical yield(理論収量のパーセント)」のことである。(本稿では便宜上「理論収率」と呼ぶ。)
 下記の計算式で算出するが、分母は理論収量(実総仕込量)で分子が実収量となる。
 


 固形製剤なら、「原料秤量~荷揃え~造粒~混合~製錠~コーティング錠」のそれぞれの工程毎で「重量」換算で理論収率の計算方法と許容幅を設定する。
 例えば製錠工程なら、混合末の総重量で理論収率を求める。錠剤の平均重量に錠数をかけて「錠剤に使用した混合末の重量」を計算し、使用残の混合末重量や、不良廃棄した混合末の重量を確認する。
 また、液剤・溶液注射剤の充填工程なら、「薬液調製液の総容量(または総重量)で理論収率を求める。アンプル充填工程では、アンプルの平均充填液量(重量)に本数をかけ「容量(重量)」を求め、初流薬液廃棄量、残留薬液量(調製タンクや配管内残量)を確認する。
 

5.8.2.理論収率管理のメリット
 この考え方は、製造工程に投入した"全ての原料の合計数量の実績"と製造工程で産出された"加工品の実収量と工程廃棄や工程残などの総量"の割合が限りなく100%になれば、その工程は正しく作業された、という理屈である。この理論収率(%)の管理幅は製造工程にもよるが、工程で把握できないロス(粉塵飛散など)が僅少であれば「限りなく100%」となるはずである。この管理幅の上下限に逸脱があった場合、余計なものを誤ってバッチに混入させたか、必要なものを正しく仕込まなかった、という作業ミスが疑われる。各製造所では、生産計画量達成や生産性・歩留まり評価のため、「良品出来高収率」を管理されていると思うが、GMP管理という観点から「理論収率」の管理を行なわなければならない。現場マネジャーや係長の重要なチェック項目の一つとなる。
 

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執筆者について

小坂井 宏

経歴 1971年武田薬品工業(株)入社。製剤化技術検討や、国内工場の製造部門・品質管理部門で製造技術・バリデーション・GMP管理・FDA査察対応などの職務に従事。工場 製造部長・製剤部長、製薬本部 品質保証部長、武田アイルランド社長(海外工場)を歴任。2013年退職。
製造所のGMP管理(製造管理、品質管理、文書管理)の実践的対応、FDA査察の実践的対応を得意とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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