中国等海外原薬の品質確保と調達リスク回避の考え方【第1回:はじめに】

2018/01/13 原薬

はじめに
1.1 生産拠点のパラダイムシフト
ジェネリック医薬品を中心に、中国・インドをはじめとする海外の原薬(医薬品の有効成分として使用される原料)が幅広く導入・使用されるようになって久しく、今や、これら海外の原薬なしに日本の医療が成立しない状況にあるといっても過言ではありません。中でも、現在、中国・インドは原薬生産においては圧倒的な地位を築いていることは周知のとおりです。
 
かつて、原薬の多くは日本及び欧米先進国で生産されていましたが、中国やインドの経済発展に相まって、2008年頃からこれらの国の原薬導入の動きが活発になり、これを契機に日本の原薬の一部が生産中止になるなど、国内調達に不安定な側面が見え始めました。その結果、調達リスク回避の観点から各企業でセカンドソース、すなわち、緊急時の対応などのために代替原薬を確保する動きが生じ、これが中国等の原薬の導入をさらに促進するという流れになりました。また、コスト面で先進国の原薬よりメリットがあることも、この動きを加速させました。このほか、日本を含む先進各国の原薬が工場の爆発事故などにより供給停止となった事例なども、これら海外原薬の導入の追い風になりました。
 
また、先の東日本大震災で多くの原薬が生産停止に追い込まれ、供給できない状況になったことは記憶に新しいところですが、これを機にさらに複数社購買の動きに拍車がかかり、このときの経験がリスク管理視点での原薬調達の考え方を定着させ、現在に至っていると考えられます。
このほか、近年、韓国等の海外原薬製造所のGMP不適合問題などにより、汎用原薬の輸入が停止され、特にジェネリック医薬品の安定供給に重大な問題が生じたことも、改めて、代替原薬の必要性を示唆したところであります。
 
間もなく東北大震災から7年となりますが、今後さらに、自然災害や地政学的なリスクを含め、想定外の要因による原薬供給に支障が出る可能性が否定できないことから、これを前提に医薬品製造の要である原薬の品質を確保し、調達リスクが回避できるよう、より周到な危機管理体制の構築が望まれます。

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執筆者について

浅井 俊一

経歴 1974年ロート製薬入社。品質管理・薬事・品質保証の各業務にそれぞれ7年・15年・16年間従事。退職後、2018年まで中国の原薬工場および国内受託企業において、改善・人材育成を含む品質保証全般に携わる。
中国での活動に、「新薬事法下の日本の医薬品品質保証体制」(2009/上海),「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、北京CFDA(現, NMPA)主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
取り組みテーマは「製薬工場のヒューマンエラー対策」,「中国等の海外原薬の品質と安定供給の確保」,「GMP記録の信頼性確保」,「組織コミュニケーションの活性化」,「作業者のモチベーションの確保」など。
著書に「改訂版GMP教育訓練マニュアル」(㈱じほう、共著),「3極対応/試験検査室管理実践資料集」(㈱情報機構、共著)などがある。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー。 薬剤師。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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