ドマさんの徒然なるままに【第64話】GMPドラえもん
第64話:GMPドラえもん
「ドラえもん」、知らない読者はいないであろう。筆者、現在の星野源さんによる主題歌と水田わさびさんの声ではなく、「こんなこといいな できたらいいな」で始まる主題歌と大山のぶ代さんの声しか馴染みがない。この以前の主題歌に出て来る「こんなこんなみんな かなえてくれる ふしぎなポッケで かなえてくれる」のドラえもんのポケット、あんなものがあったらいいな!? と誰でも思うだろう。
もし、GMPの世界にドラえもんがいたら。何でも出て来るポケットがあったら。でも、現実は「お宅自身に問題があるんじゃね!? ドラえもんに代わってお仕置きよ!」といった感じで本話を書いてみました。
① 品質まー、螺子(ねじ)メント
普段「まぁー、まぁー!?」と言って実質的には何もしていない貴社の経営陣の品質に対する意識やコンプライアンスを高めるための螺子(ねじ)です。使用上の注意は、巻きすぎないことです。巻きすぎるとヒビが入り、人格そのものが破綻してしまうことです。えっ、「うちのマネジメント連中は既に巻きすぎてしまっている。」ってか!? 失礼しました。
② 慣れ時マネジメント
ルーチンを通り越し、“慣れ”に至ってしまい、逆にミスが多発することを防ぐツールです。「俺にはSOPなんか必要ない。俺自身がSOPだ!」なんて言っている“ベテラン(?)”の取り扱いに有効です。ナレッジマネジメントが誤認識の下で、悪い方向に解釈・運用され、悪化の域が極限に至ってしまった場合とも言えます。「うちにも、そんな奴がいるわー。」と言うあなた。お気を付けください。
③ 反抗コントロール(犯行コントロール)
「俺はGMPなんか信じちゃいない。」とか、「GMPなんてクソくらえだ。」とか言って反抗(はんこう)する者を矯正するためのツールです。この手の者、普通に反抗しているレベルならばマシですが、度を超えてしまうと、マジに犯行に及ぶ可能性もあり要注意なので、早めに使ってコントロールしましょう。
④ 変?交 換時
設備機器のパーツの交換等の際のクオリフィケーション時、「何か、変だな?」といった、微妙な違いを知らせてくれる、変更(時の)乖離に好感の持てる優れモノです。お陰で、クオリフィケーションやバリデーションのやり直しが減らせ、無駄手間がなくなります。品質に重大な影響を及ぼすクリティカルな設備機器であれば、プロセスバリデーションまでも実施することを考えれば、極めて有り難いツールと言えます。
⑤ バリンデション
試験室管理などで使用するガラス器具のヒビや割れ等、使用リスクがあると、「あぶないよ!」と教えてくれるツールです。ヒビや割れといった危険だけでなく、定量性のある器具については、キャリブレーション等が正しく実施されていないと、「データがあぶないよ!」と教えてくれるので、下手なクオリフィケーションより信頼性が保てるということで好評です。
⑥ いつ(何時)ダーツ
一見、普通のダーツのように見えるのですが、的(まと)に刺さると、貴製造所内で24時間以内に必ず逸脱が発生するという予言のダーツです。得点の高い位置ほど、逸脱の被害が大きいというものです。「じゃー、わざと外せば良いのでは?」ってか!? 甘い! 後ろ側に投げようが左右に投げようが、逸脱が発生する場合は、ダーツ自身が向きを変えて的に刺さります。的外に刺さった場合や刺さらずに落ちた場合は、24時間以内に逸脱は発生しません(あくまで24時間以内です)。良かったですね。「うちは毎回刺さる」ってか!? ハッキリ言って、本質的に改善が必要だという警告です。「逸脱発生の場所とかは特定できるのですか?」ってか!? できません。ドラえもんに尋ねたら、「それはリスクマネジメントができていない証拠で、そのくらい自分で調べなきゃダメだよ! のび太くん状態になっちゃうよ!」って、叱られました。
⑦ 技術いかーん!
技術移管の不備な点や不十分な点を見つけては、「これじゃ、いかーん!」と叱って、教えてくれる便利なツールです。「修正までしてくれると有り難い。」ってか。「甘えるんじゃない!」と、またドラえもんに叱られますよ!
⑧ 窮状処理
モンスターカスタマーのようなクレイマーによる苦情も含め、窮状を救ってくれる、大助かりなレスキュー処理のためのツールです。ただ、大事なことは、窮状にならないように普段から注意を怠らないことですので、本末転倒にならないように心掛けましょう。
⑨ お利口ル
回収(リコール)に至らないように、作業に細心の注意を払ってウォッチしてくれる、素晴らしい、お利口さんなツールです。注意すべきことは、使いすぎると、職員全員が何もしなくなってしまい、結果的に逆効果を招いてしまうことです。
⑩ 恐育訓練 or 共育訓練*1
通常の教育訓練を素直に受けない職員に対して、「おまえなー!」とジャイアンのように強制的に恐育してくれるツールです。ただ、ジャイアンのような、何となく人懐っこい、時に優しい思いやりがあるかどうかは疑問です。
それには耐えられないという方へは、職員全員に共通の大事な事項を教えてくれる、しずかちゃんのように心優しい共育訓練というツールもあります。こちらの難点は、使いすぎると、トレーナーとなりうる職員が育たないということです。
⑪ 部分書管理
SOPや記録などの文書の漏れや抜けが生じないように、何か不備があるとその場で教えてくれる便利グッズです。ただ、あくまでアラートとして教えてくれるだけで、穴を埋めてくれるわけではありません。漏れ・抜けのない正確な文書作成の支援ツール(教育訓練用)であり、不備の責任は自己責任となりますことをお忘れなく。
⑫ せんじょう度測定器
3種類のモード切り替えにより、パワハラ度、セクハラ度、およびモラハラ度が測定できるシロモノです。
[質問]さて、ここでクイズです。3種のモードの名称は何というでしょうか?
[答え]順に、「戦場モード」、「煽情(扇情)モード、「洗浄モード」」です。
最後のモードは何だってか?
あなたの心身がどれだけ洗い清められているかを測定するのです。
2番目は逆なんじゃないかってか?
こんなハニートラップに引っ掛かるような下心が問題なんですよ。
ちなみに、最初のは、上司のパワハラ度だけじゃなく、査察や監査の(実施する立場&応対する立場の両方で)ドタバタ度合いのチェックにも使えます。
⑬ 正常度検査器
職員の適正検査器とも言えます。Job Descriptionに見合っているかどうかが一発で判ります。教育訓練の結果判定も可能です。オプションとして、「性情検査器」をアタッチすると、性格まで判定してくれます。「うちにはマトモな奴がいないから、それじゃ、うちでは適格な職員がいなくなっちゃう。」ってか!? うーん、諦めてください。
⑭ 不安定モニタリング
担当を問わず、職員の精神的安定度を知らせてくれるメンタルヘルスチェックに活用できる便利ツールです。不安定で当日の作業に不向きの場合はアラートを発して知らせてくれます。「うちは、ほぼ全員が無気力なので、確実に引っ掛かる。」って!? お気の毒様としか言いようがありません。
ちなみに、作業前の健康チェック表がありますが、アレは基本的には自己申告なので、(皮膚病や出血しているほどのケガは別として)どれだけ意味があるか疑問を感じるというのが本音です。ましてや、委託先オーディターや査察官などを含む外部ビジターも作業域への入室の際、同様に自己チェックをお願いしたりしますが、よほどのことが無い限り、それを目的に来たのですから、多少無理してでも仕事するんじゃないでしょうかね*2。そうは言いつつ、過去の会社でも実施していましたけど・・・。
もし翌日にでも「インフルエンザや新型コロナウイルスに感染していました。」なんて連絡があったら、どうするんでしょうかね?*3
⑮ スタスタビリティー
安定性モニタリングで絶対に規格外れしないという優れモノです。外れそうになると、すたこらさっさと時を速めてしまい、結果的には規格内に収めるというツールです。えっ、そうじゃないって!? 見た目の規格収めじゃ意味がないって? 言われれば、そうですね。医薬品としての物質の安定性ですから、その性質を弄れば別のモノになってしまうので、別の承認を取得しなければならないですよね。失礼しました。マジメに安定性試験データを収集して承認申請をし、安定性モニタリングでは外れないように改心します。
なんだ、ドラえもんの“あったらいいなツール”じゃなくて、単なるオヤジギャグじゃないかって? まぁー、そんな固いことは言いっこなしということで・・・。言い訳ですが、よく読んでいただければ、単なるダジャレではなく、「こんなことしちゃダメですよ!」と痛いところを突いていたりもしませんか? すべてではないですが、押さえるべきポイントも何気なく示しているつもりです。実際のGMPの運用に当たっては、本質を突いたポイントを押さえることが大事だと思います。
もし本当にドラえもんがいたら、“どんな病気でも治せる特効薬”を出して欲しいですね。もしそうであれば、「世界中の製薬会社が倒産してしまう」ってか!? でも病気で苦しむ患者さんがいなくなれば、それはそれでいいんじゃないかと思います。ただ、悲しいことに、ある病気を克服しても、別の新たな病気が出現してしまう。新型コロナウイルス感染症がそうであるように、予期できない、突発的なものもある。その意味では、ドラえもんのポケット自体に継続的改善が求められているのかもしれません。
では、また。See you next time on the WEB.
【徒然後記】
地球愛
郷土愛の強い方がおられる。SNSなどを閲覧していると、それを感じさせるものが掲載されていたりする。筆者の場合、生まれ育った場所⇒大学生活での下宿⇒就職⇒国内外留学⇒転勤・転職などがあったことで、現在の住まいも含めて郷土愛的なものがない。逆に言えば、どこに住んでいた時も、「住めば都」と思っていた。そもそも何かに熱中するタイプの人間ではなく、所謂“推し”も無い。どちらかと言えば何事にも冷めた人間と言える。
今年2024年にはパリオリンピック・パラリンピックが開催される。別に見るとはなしに何となくTVを観ることになるのであろう。各種スポーツのワールドカップもそうであるように、日本チームや選手たちの頑張る姿、さらにはメダル獲得。毎度のように、それらに感動して応援している自分がいると想像する。
郷土愛のような地域的なものは薄いものの、国別対抗ということでか、日本人としてのDNAが沸き立ち、愛国心を感じたりする。もし敵対意識のない友好的宇宙人が現れ交流が深まったら、地球愛を感じるのだろうか。ふと、そんなことを考えてしまう。
国だ、領土だ、なんてことを飛び越え、「私は地球人だ!」と言える、そんな時代が来るのだろうか。いや、もし私が異星人ならば、「地球って、美しく観えて誘惑されるけど、いつもどこかで戦争している野蛮で物騒なヤバい星だよ!」と言って近寄らないんじゃないかと思う。
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*1:「恐育」も「共育」も造語ですが、辞書にも掲載されている一般用語です。
*2:(天の声)お前、「今日は体調がすぐれないので、入室は止めておきます。」とか
なんとか言って、サボるだろう。
(筆者) そんなことするか!?
(天の声)お前はしそうだわ。
(筆者) こう見えて、仕事は熱心なんだよ。
(天の声)ふーん、仕事だけじゃろ。そもそも仕事のレベル低いし。
(筆者) うっせー!
*3:作業員であれビジターであれ、ほとんどの場合、直接手を触れるとか、作業室内でマスクを外すといった、製品の品質に影響を及ぼすような行為は無いと考えます(むしろ影響するような事態があれば、エリアの環境管理に問題があるように思います)が、書面調査の場では、狭い部屋に複数名が、しかも対話形式で進めるとなると、ちょっとリスクは高まるような気がしないでもありません。まぁー、そんなことから「リモート監査・査察」に至ったわけですが・・・。
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