ドマさんの徒然なるままに【第3話】



第3話:リーサル・アカン2/そりゃないぜ!

前々回の第1話「リーサル・アカン」の続編である。今回も筆者の経験した「アッと驚く驚愕の状態」を紹介する。ただ、第1話にも記したように、ここで紹介するものは、GMPとして課題となるポイントを絞り、かつ読者への分かり易い“読み物”として適度の脚色も加えている。そのため、決して冷やかしでなければ、まして誹謗・中傷ではない。あくまで、「こんなことをしてはいけない」ということ。と同時に「もし似たようなことや近いことをやっているようなら即刻改善したほうがよい」というアドバイスのつもりでお伝えするものであることを理解して頂きたい。

さて、医薬品製造業者の原材料や製品の倉庫って、どこの会社も似たり寄ったりではあるが、見れば見るほど、色々な問題点を見つけてしまう施設でもある。推奨やマイナーな指摘で済まされる場合は良いが、「ホンマかいな!」と思ってしまうこともある。以下に、国内外で遭遇した「あらまーっ、なんでっか?」といった“倉庫の怪”ともいえるのを列記する。


●倉庫に天窓?
保管状態は特に問題がない。サンプリング室もキチンとしている。倉庫としてよく見かける光景と言える。何気なく天井を見上げる。な、な、なんと、天窓があり、しかも開いている。

「あれは何ですか?」と筆者。
「天窓です。」と応対者。
「防虫防鼠の観点から屋外とのオープン状態はマズイのでは?」と筆者。
「いや、今日は天気が良いので虫干ししているだけですが。」と何事もないように答える応対者。

確かに、日差しが何とも心地よい秋晴れの欧州の某国の出来事であった。チャン・チャン。。。

ちなみに、本邦で天窓のある倉庫に遭遇したことはない(閉めきりとはしているが横窓が付いている原材料倉庫には何度か遭遇したことがある。この手の窓付き倉庫、明かり取りとして設計された旧いタイプのもの、あるいは元は何か別の用途の施設を倉庫に転用したものと想像する)。まして、天窓が開いているなんてことは、後にも先にも、この1回だけである。


●完璧(?)な防虫防鼠対策
倉庫における最大の問題は、入出庫の管理と保管状態の管理、そして防虫防鼠。

「防虫防鼠の対策は?」と筆者。
「米国FDA認定の電磁波装置による対策を施している。」と応対者。
ちょっと高い位置に明かり取りと思われる窓がある。だが、ガラスが割れている。
「あの窓のガラス割れていますよね?」と筆者。
「大丈夫、電磁波による対策がなされている。」の一点張り。

そう言いつつ、入って来た入出庫口のドアは開けっぱなしで閉める気配もない、割れたガラス窓付近には鳥の糞らしき白い斑点も・・・。
アジア圏某国の原薬工場のことでした。さすが、太っ腹で、島国育ちの筆者の感覚とはかなり違っておりました。チャン・チャン。。。

ちなみに、当該倉庫、PTJ ONLINEコラム「GMDPおじさんのつぶやき」の第3話「工場の中の懲りない面々・その1」の中で紹介した某国原薬工場の倉庫である。


●倉庫内UV捕虫器の性能は完全
防虫防鼠に関して、もう1点。結構見かけるタイプ。

「防虫防鼠の対策は?」と筆者。
「荷受け場所にUVランプを設置しています。」と応対者。
「アレとアレですか?」と設置場所に向いつつ筆者。
「そうです。」と胸を張って答える応対者。
近づくと、捕虫器の真下にタップリと虫の死がいが・・・。

捕虫器やトラップ設置することだけが防虫防鼠じゃないですよ。日々、清掃状態の確認と合せて、捕虫器やトラップの作動状態の確認も含みますよ。今回の場合、機能としては生きていたようであるが、印象が悪いほどの虫の死がいですからね。アラートレベルを超えてアクションレベルだと思うので、業者と相談したほうが良いでは? その年や時期に限った異常発生かもしれませんが、「今まで経験のない異常値」では済まされないと思いますよ。そのための防虫防鼠ですからね。状況によっては、別の対策を講じる必要があるんじゃないでしょうか。

ちなみに、この小話の冒頭に記したように、防虫防鼠対策としてトラップやランプを設置してはいるものの、完全に業者任せ(丸投げ)で、日常の点検(清掃時の点検といったもの)を実施していない会社様を少なからず見かける。トラップやランプを付けてりゃいいって話じゃないと思いますよ。それって、「責任者を置いた、SOPを作成した、だからGMP対応してます」っていうのとまったく同じで“形だけ”の見せかけなんじゃあーりませんかね!? 


●クモさんは作業員よりも仕事熱心
防虫防鼠に関して、さらにもう1点。原材料の倉庫内の話。原材料倉庫のため、一画に試験用サンプリング室が設置されている。うーん。いいねー。

「サンプリング室を拝見させて頂いて宜しいですか?」と筆者。
「はい、こちらです。」と応対者。
カーテンを開けて室内を見る。目の前にクモの巣が・・・。これを見て、応対者もさすがに焦ったんだろう。
「この辺は周囲が山野のためか虫が多くて。クモの巣、取っても取っても、直ぐに張るんでよね。」と応対者。

そういうことじゃないと思いますよ、悪いけど。平常は毎日清掃してないんじゃないのかと勘繰られても仕方ないのでは? 前日の作業終了後から翌朝までにクモの巣が張ることは往々にして起こりうるので、事実としてはクモさんのほうが元気に活躍しすぎだっただけのことかもしれませんけど。ただ、誤解を受けそうな言い方とはなるが、「少なくとも、監査があると分かってるんだから、当日の朝に(せめてその日くらいは)清掃でもしておけば」と思ってしまう出来事でした。普通は、しておくと思うけどね・・・。


と言うことで、今回もちょっとしたことが大誤解を生んだり、不安・不信の元になるといった事例を挙げてみた。前回も記したが、なんだ大したことないじゃないかという感覚でおられるのであれば、あなた、それ病気とも言える状態です。しかも、完治不能、まさに致死的(リーサル)な状態です。

どれだけ注意を払うべきか、対策を講じておくべきかは、その施設の状況や周囲の環境などに依存するが、それこそリスクマネジメントの最たるものなのでは? 

では、また。See you next time on the WEB.

【徒然後記】
前々話(第1話)で、筆者の母が大変強い“リーサル・オカン”であることを紹介した。筆者がまだ20代半ばの頃、この母と親子喧嘩となった。喧嘩の発端が何であったかは覚えていない。そもそも、親子喧嘩に限らず兄弟喧嘩でも夫婦喧嘩でも、事の発端となる理由は、傍から見れば、極めてくだらないことが多い。この時もそうだった。ただ、その時の一言が今でも忘れられない。「私はお前みたいな変人を産んだ覚えはない!」 決め台詞である。が、息子からすれば、完全なフリーズ状態である。売り言葉に買い言葉の中での一言であることは理解できる。が、実の母から面と向かって言われたのである。その際の喧嘩はそれで終わった。筆者、幼少期から近所の人は言うに及ばず、学校の先生からも「勉強は出来るけど、変わった子」と言われ続けていた(当時は学校の先生も本音が言えた。ある意味、素晴らしい時代であった)。母もそれは知っていた。だからこそ、そのインパクトは半端なかった。でも母が逝った年齢を超えた現在、マザコンと言われてもいい。“おかあちゃん”、そんな、あなたが大好きだった。

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