業界雑感 2017年9月

2017/10/06 その他

 今さらながら、であるがGMPの目的は、医薬品の製造および品質管理において
 1 人による間違いを最小限にする。
 2 医薬品が汚染されたり、品質が低下するのを防ぐ。
 3 高い品質を保つ仕組みをつくる。 
とされている。少々長いので、新人へのGMP教育などでは、もっと端的にわかりやすいほうがよいと思い「正しい指図」「正しい作業」「正しい記録」の3点と言い換えて説明している。

 その「正しい」の根拠となるのが、品質マネジメントシステムや種々のバリデーション、ハード・ソフトの管理等々といったことになるのだが、製品ごとにみると製造承認から紐づけされ、GMP省令第7条で製品ごと、製造所ごとに作成、保管、品質部門による承認が義務付けされている「製品標準書」ということになる。製品標準書の記載内容の一つに「標準的仕込み量およびその根拠」があり、これが「正しい指図」の出発点と考えている。

 ある製品の技術移転資料に、10mg製剤でロットあたり40kgの原薬に対し乳糖や賦形剤も合わせた総仕込み重量が404kgとなり、理論収量が404万錠となる記載があるのを発見し、問題にしたことがあった。製造承認書は一錠あたりの主薬や副原料の含量が記載されているので、標準的仕込み量はそれを仕込みロットサイズに合わせて比例計算により算出することになる。四捨五入の関係などで、そうなってしまっていたと記憶しているが、逆算すると一錠あたりの主薬含量は9.9mgということになってしまい、指図段階から「正しい指図」がされていなかったといわれても致し方ないことになる。製造のバラツキの結果として試験サンプルの含量が9.9mgだったというのとは許されても、最初から9.9mg相当分しか仕込まないというのは許されないはずだ。

 今話題の固形製剤の連続生産においての混合や造粒工程では、原料の供給に定量フィーダーを使用するが、スタートアップ時とシャットダウン前にフィード量が安定化せず一定の時間(フィード量)が必要という。当然不安定な時間分は廃棄とするよう考えられているのだとは思うが、廃棄末の組成は安定化した際の組成と違うと考えるのが普通なので、それを前提とした標準的仕込み量を事前に製造指図することは困難なのではないかと考えてしまう。注射剤の製造やバリデーションを担当していた頃は、溶かして混ぜれば均一系であり、粉末充填でも充填末は100%原薬なので、初流カットや残液の組成も均一と考えられ、あまり気にもしていなかったのだが、固形製剤の連続生産の初期・終期の原料カットは注射剤のそれとは性格が違うと思う。主薬濃度についてはNIRで連続モニタリングしているので問題ないとするのであれば、製造プロセスがどうであろうと結果として品質規格に適合していれば問題ない、というGMP・バリデーション以前の考え方と同じとも言える。連続生産における経口固形製剤の標準的仕込み量およびその根拠に関して、公に議論を巻き起こす気は毛頭ないが、この雑感を読んで、既にこの件に解をお持ちの方がおられたら、是非ご教授いただきたいと思っている。

※この記事は「村田兼一コンサルティング株式会社HP」の記事を転載したものです。

執筆者について

村田 兼一

経歴 村田兼一コンサルティング株式会社代表取締役。
1978年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。注射剤製造、無菌バリデーション技術開発、FDA対応、基幹システム(SAP)開発等に従事後、生産本部にて中期戦略企画、工場分社化推進・合併準備委員会に携わる。合併後のアステラス製薬では、戦略企画の後、製造委受託の推進を担当する。
2012年に退社し、村田兼一コンサルティング株式会社設立。工場の原価をはじめとする計数マネジメントを中心に、SAP開発を含むサプライチェーン全般の管理・改善を専門とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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