ラボにおけるERESとCSV【第33回】

■F社 2016/3/18 483
施設:OTC工場
1) 電子的に生成した記録用紙をQCラボで使用しているがその管理が手順化されてい
ない。QCラボの分析者はコンピュータから非管理状態の記録用紙を印刷できる。
2) 分析の計算に使用するスプレッドシートがバリデートされていない。
★解説:
1)項について
▷ 送付する記録用紙の各頁に、頁番号、総頁数、送付者のサインを記入して
おく
▷ 送付枚数は要求枚数より若干多目にしておく
▷ GMP作業完了時に、送付した全記録用紙を送付部門が回収し、全数回収を
確認する
■ G社 2016/4/8 483
施設:原薬工場
Observation 2
予想外の不一致(unexpected discrepancy)に対する調査が不完全である。OOT(Out Of Trend)処理を開始したが、最初のテスト結果を正当化することなく棄却し、再テストだけを報告している。
★解説:
以下の点から良いとこ取りをしているのではないかと疑われている。
▷ 予想外不一致の原因を明確にしないまま再テストを行い、良い結果が出た
ら正式記録としている
▷ 最初のテスト結果を破棄し、再テストの記録しか残していない
FDAは「Guidance for Industry, Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production」においてOOS処理のガイダンスを示している。このガイダンスにはその根拠法令(連邦食品・医薬品・化粧品法、cGMP)も記載されている。このガイダンスを参照し、法令違反とならないようなOOS処理手順とする必要がある。
Observation 3
LIMSとLabSolutionsにおけるユーザーアクセス権限が適切ではない。例えば;
● LIMSにおいて、システム管理者権限が7名のQC職員、1名のエンジニアリング
職員、1名の製造職員に与えられている。このシステム管理者権限によりLIMSの
マスターファイルを生成・削除でき、工程内試験、リリース試験、安定性試験の
判定基準を変更できてしまう。
● LabSolutionsにおいて、QCラボのスーパーバイザーがシステム管理者、テスト
スーパーバイザー、分析者の権限を持っている。
● LIMSとLabSolutionsにおいて、QCラボの分析者がシステム管理者と分析者の
両権限を持っている。
★解説:
システム管理者権限を持っていると以下の様なことができる場合がある。
▷ 時刻設定の変更
▷ 監査証跡機能の設定変更
▷ 監査証跡データの削除
▷ メッソドの変更
▷ レシピ(処方)やパラメータセットの変更
▷ 設定値の変更
▷ マスターファイルの変更
▷ データの変更・削除
従って、GMP従事者がこのようなシステム管理者権限を持っていると、自らもしくは同僚が関与したデータの改ざんや不都合隠蔽ができてしまう。従って、システム管理者権限をGMP従事者に与えてはいけない。システム管理者権限を必要とする作業は、GMP業務を行わない管理部門やIT部門などにゆだねるべきである。しかし、あまたあるQCラボ機器のシステム管理をGMP業務を行わない部門にゆだねるのが難しい場合がある。そのような場合の対応方法がMHRA(英国医薬品庁)から以下の様に提案されている。
▷ 異なる権限の2つのアカウントを付与し、アカウントを使い分けることによ
り対応する
▷ たとえば
◇ 測定時は測定者権限、システム管理を行う場合はシステム管理者権限で
ログインする
◇ システム管理者権限でログインしたときは測定を行ってはいけない
◇ システム管理者権限により行われたすべての変更は可視化しておき、
品質システムにおいて承認する
詳細は連載第13回(2016年1月掲載)を参照されたい。
施設:OTC工場
1) 電子的に生成した記録用紙をQCラボで使用しているがその管理が手順化されてい
ない。QCラボの分析者はコンピュータから非管理状態の記録用紙を印刷できる。
2) 分析の計算に使用するスプレッドシートがバリデートされていない。
★解説:
1)項について
未記入の記録用紙(ブランク書式)を自由にコピーできると、都合の悪い記録を破棄し新たな記録用紙に都合の良い記録を記載できてしまう。MHRA、WHO、FDA、PIC/Sのいずれのガイダンスにおいても、このような事を防ぐよう記載されている。この対策の一例を示す。
▷ GMP作業を行わない部門が記録用紙を用意しGMP作業部門に送付する▷ 送付する記録用紙の各頁に、頁番号、総頁数、送付者のサインを記入して
おく
▷ 送付枚数は要求枚数より若干多目にしておく
▷ GMP作業完了時に、送付した全記録用紙を送付部門が回収し、全数回収を
確認する
PIC/Sのガイダンスは、ブランク書式の元ファイルの管理にも言及している。連載第21回(2016年9月掲載)および連載第25回(2017年1月)を参照されたい。
2)項について
繰り返し使用するスプレッドシート(表計算シート)はバリデートしておくのがよい。バリデートされたスプレッドシートを使用する場合、正しくデータ入力されたかどうかだけを確認すればよい。バリデートされていないスプレッドシートを使用する場合は、計算内容をその都度確認し(電卓等で検算し)確認の記録を残さねばならない。本指摘は、「バリデートされていないスプレッドシートを都度検算することなく繰り返し使用している」とのことであると推測する。
■ G社 2016/4/8 483
施設:原薬工場
Observation 2
予想外の不一致(unexpected discrepancy)に対する調査が不完全である。OOT(Out Of Trend)処理を開始したが、最初のテスト結果を正当化することなく棄却し、再テストだけを報告している。
★解説:
以下の点から良いとこ取りをしているのではないかと疑われている。
▷ 予想外不一致の原因を明確にしないまま再テストを行い、良い結果が出た
ら正式記録としている
▷ 最初のテスト結果を破棄し、再テストの記録しか残していない
FDAは「Guidance for Industry, Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production」においてOOS処理のガイダンスを示している。このガイダンスにはその根拠法令(連邦食品・医薬品・化粧品法、cGMP)も記載されている。このガイダンスを参照し、法令違反とならないようなOOS処理手順とする必要がある。
Observation 3
LIMSとLabSolutionsにおけるユーザーアクセス権限が適切ではない。例えば;
● LIMSにおいて、システム管理者権限が7名のQC職員、1名のエンジニアリング
職員、1名の製造職員に与えられている。このシステム管理者権限によりLIMSの
マスターファイルを生成・削除でき、工程内試験、リリース試験、安定性試験の
判定基準を変更できてしまう。
● LabSolutionsにおいて、QCラボのスーパーバイザーがシステム管理者、テスト
スーパーバイザー、分析者の権限を持っている。
● LIMSとLabSolutionsにおいて、QCラボの分析者がシステム管理者と分析者の
両権限を持っている。
★解説:
システム管理者権限を持っていると以下の様なことができる場合がある。
▷ 時刻設定の変更
▷ 監査証跡機能の設定変更
▷ 監査証跡データの削除
▷ メッソドの変更
▷ レシピ(処方)やパラメータセットの変更
▷ 設定値の変更
▷ マスターファイルの変更
▷ データの変更・削除
従って、GMP従事者がこのようなシステム管理者権限を持っていると、自らもしくは同僚が関与したデータの改ざんや不都合隠蔽ができてしまう。従って、システム管理者権限をGMP従事者に与えてはいけない。システム管理者権限を必要とする作業は、GMP業務を行わない管理部門やIT部門などにゆだねるべきである。しかし、あまたあるQCラボ機器のシステム管理をGMP業務を行わない部門にゆだねるのが難しい場合がある。そのような場合の対応方法がMHRA(英国医薬品庁)から以下の様に提案されている。
▷ 異なる権限の2つのアカウントを付与し、アカウントを使い分けることによ
り対応する
▷ たとえば
◇ 測定時は測定者権限、システム管理を行う場合はシステム管理者権限で
ログインする
◇ システム管理者権限でログインしたときは測定を行ってはいけない
◇ システム管理者権限により行われたすべての変更は可視化しておき、
品質システムにおいて承認する
詳細は連載第13回(2016年1月掲載)を参照されたい。
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