【2016年発行EUのNon-Compliance Report】ASTROM通信<105号>

株式会社プロス発行のメールマガジン『ASTROM通信』のバックナンバーより記事を抜粋し、一部改編をしたものを掲載いたします。

本稿は【2016.9.1】に発行されたものです。
記事の原著は、こちらでご確認下さい。 ASTROM通信バックナンバー


こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

夜になると虫の声が聞こえ、夏も終わりを実感するこの頃ですが、いかがお過ごしですか?

さて、これまで何度かFDAのウォーニングレターを見てきましたが、今回は、EUのノンコンプライアンスレポート(Non-Compliance Report)を取り上げてみたいと思います。

ノンコンプライアンスレポートは、Part1に確認した当局の名前、製造業者の名前、製造所の住所等、Part2にノンコンプライアントな製造オペレーション、Part3にノンコンプライアンスの種類、EUの対策等が書かれた3部構成になっています。
査察結果を報告するという点ではウォーニングレターと似ていますが、ウォーニングレターに比べて、指摘の内容があまり詳しくありません。また、不備を、クリティカル(Critical)、メジャー(Major)、その他(Others)に分類して、何件あったかといった情報は明記しているという特徴があります。

ノンコンプライアンスレポートは、2016年になってから、8月27日時点で合計15件発行されています。今回はそのうちの6件について、Part3部分をみていきたいと思います。

EU-GMP査察ではどのようなことが指摘されるのか、ウォーニングレターとどこが違うのかなどを感じて頂きながら、最後までお付き合いいただければ幸いです。


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Report No.INS16-001c スペインの製薬会社 2016/1/13査察終了
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■クリティカルな不備
a)効果的な製薬品質保証システムの欠如。
b)製造手順を完了せず、品質保証部門のチェックと承認なしで、製品を出荷。
c)適格性評価のされていないクロマトグラフの装置を、誤った操作で、バリデートされていないコンピュータ化マネジメントシステムと共に品質管理に使用。結果として、データの完全性・信頼性・最新性・原本性・真正性が保証できない。
d)適切な管理方法の移管や、関連する保健当局の許可なしに、第三者に医薬品の最終的な品質管理の分析の一部を譲渡。
e)適切にバリデートされていない、または、定期的に再バリデートされていない手順で医薬品を製造。
f)OOS(Out of Specification)となった前の試験結果の根本原因を究明するための詳細な調査に取り組まずに、繰り返し行われる最終製品の分析や滅菌試験の結果を採用。
g)注射剤の外観検査は多数のクリティカルな品質の欠陥を示していたが、逸脱を開示せず調査しなかった
h)外観検査をパスした注射剤の統計サンプルの品質管理を実施しなかった。
■メジャーな不備
a)製造した医薬品の品質の年次レビュを実施しなかった。
b)製造過程での逸脱の適切で詳細な調査がされなかった。
c)製造エリアの空気処理システムが、“停止中”にのみチェックされ、“運転中”はチェックされていないということで、”適切に適格性評価がされていなかった。
d)医薬品販売承認書類で定められた状態に従わずに 及び/または 定められた工程管理を実施せずに医薬品が製造された。
e)医薬品の各バッチの製造及び品質管理の文書が正しくファイルされていない。
f)関連保健当局の許可なしに設備が改修された。
g)滅菌試験、無菌製造工程のシミュレーション、重要製造エリアの環境管理に使用される培地の成長促進試験が実施されていない。
h)製造に使用される原料に関する全ての規格のパラメータを分析していない。
■対策
・製造許可の一時停止
・2014年~2016年に製造された出荷済バッチの回収
・供給禁止
■出典
http://eudragmdp.ema.europa.eu/inspections/gmpc/searchGMPNonCompliance.do?ctrl=searchGMPNCResultControlList&action=Drilldown&param=33564


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Report No.Insp GMP 20181/88564-0006 NCR 
インドの製薬会社 2016/1/22査察終了
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■不備
製薬品質システムが、患者の安全を守るための適切な方法で運用されていなかった。また、前回の査察で発生したデータの完全性のクリティカルな問題の根本原因に対処したエビデンスがなかった。
1.コアなシステムを含む品質マネジメントシステムに広範囲な欠陥があった。
2.電子データとラボシステムの管理が堅固でなく、データのトレーサビリティやセキュリティを保証できなかった。
3.汚染を管理するためのシステムが不完全で、交差汚染のリスクの適切な評価が保証できない。
4.包装エリア内の重要管理が堅固でない、または、管理されていない。
5.管理の教育に関する堅固な手順がなく、教育されていない分析者が分析を実施しているため、教育が不完全である。
■対策
・供給禁止
■出典
http://eudragmdp.ema.europa.eu/inspections/gmpc/searchGMPNonCompliance.do?ctrl=searchGMPNCResultControlList&action=Drilldown&param=34550


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Report No.16MPP005NCS インドの製薬会社 2016/2/12査察終了
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■不備
査察において全体で24の不備がみつかった。
[クリティカル]
有効成分を微粉末化しヨーロッパに輸出する、または、ヨーロッパに輸出する販売業者に販売している製造元(すなわち、製造者の名前、オリジナルのバッチナンバーや分析証明書)ついて、有効成分のユーザに情報を伝達していない。一部の有効成分は、他の製造元で微粉末化されていた。
さらに、一部の有効成分については、EU-GMPに準拠していない製造元で微粉末化され、違う製造業者の名前でヨーロッパに直接輸出されていた。
[メジャー1]:文書管理の欠陥
いくつかの文書は壁の反対側のがれきの山の中から見つかった。これらは、保管が義務付けられている再包装の記録や、2013年からの有効成分の注文書を含んでいた。
[メジャー2]:プロセスバリデーションの不備
微粉末化したバッチの混合に関するバリデーションデータが入手できなかった。微粉末化に使用するエアジェット・ミルの洗浄バリデーションの記録が入手できなかった。回収酢酸エチル溶媒の軽減試験に関する添付資料が入手できなかった。
■対策
・GMP証明の撤回
・QRMの原則による出荷済バッチの回収の検討
・医薬品販売承認の変更要求
・供給禁止
・CEP(Certification of suitability)の一時停止または取り消し
■出典http://eudragmdp.ema.europa.eu/inspections/gmpc/searchGMPNonCompliance.do?ctrl=searchGMPNCResultControlList&action=Drilldown&param=34511

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