【第9回】GCP-SOPライティング - GCPで必要なSOPと作成技法 -

 今回は、モニタリングと監査の手順についてGCPのSOPに記載すべき項目について触れてみたい。

モニターの要件
 GCP省令第21条(モニタリングの実施)に「モニタリングに関する手順書を作成し、当該手順書に従ってモニタリングを実施しなければならない」と記載されている。したがって治験依頼者はモニタリングの手順書を作成しなければならないということであり、さらにこのSOPにはモニターの要件を記載しておくことも定められている。モニターの要件とは、適切な訓練によって科学的及び臨床的知識を有することとされており、この要件を満たしている者を治験依頼者はモニターとして指名する必要がある。
 GCP上はモニターに学歴や職歴や医療資格は求めてはいないものの、大学で「理系」の学問を専攻したことをモニターの要件として求めている治験依頼者は多いようだ。さらに、能力や行動に関する記載もみられる。すなわち、倫理観、誠実さと信頼性、傾聴力、課題発見解決力、分析力、交渉力などがモニタリング手順書に記載されていることもある。

モニタリングの手順
 治験が適正に行われることを確保するために、治験の進行状況を調査し、治験がGCP及び治験実施計画書、手順書に従って実施、記録及び報告されていることを保証する活動のことが「モニタリング」だというとが、GCP省令第2条(定義)に記載されている。
 さらに第21条第2項のガイダンスでは「モニタリングは、治験開始前、実施中及び終了後に実施医療機関及び治験に係るその他の施設において実地に行う」と記載されており、時期と場所に関しても記述されている。しかしGCP省令や同ガイダンスには具体的なモニタリングの対象や方法の記載はないが、ICH-GCPではMonitor's Responsibilities(モニターの責務)として大小合わせて20以上の項目が記載されている。また、同様の内容が答申GCP(中央薬事審議会答申)の8-1-22「モニタリングの範囲及び方法」に記載されている。これらを参考としてSOPを作成しても良いだろう。

 令和元年(2019年)7月にGCPガイダンスが改正され、さらに同日付けで併せてリスクに基づくモニタリングに関する基本的考え方について通知された。したがって、リスクに基づくモニタリング、いわゆるリスクベースモニタリング(RBM、Risk Based Monitoring)の観点で手順を記載することになる。最終的な成果物を点検評価する「出口管理」だった従来のモニタリングから、RBMでは最終成果物に至るまでの「プロセス管理」に着眼すべきであるといわれている。このプロセスにおいて潜在的に高いリスクと重要なデータを特定し、そのリスクレベルを評価する。同意説明文書の不備や同意取得手順の適切性、治験実施計画書からの逸脱の発生、あるいは有害事象の報告や評価等々の一般的なリスクの他、さらに治験特有で発生するリスクも考えられる。これらのリスクを特定した後に、それぞれのリスクを評価することになるのだが、それらの方法をSOPに定めておこう。このリスクレベルの評価によって優先順位付けを行う。そのレベルを例えば、許容できない高レベル、注意を要する中レベル、許容し対応不要な低レベルの指標に分類し、それぞれの分類に応じたモニタリング活動を行うことになる。

モニタリング計画書
 モニタリング戦略はモニタリング計画書に記載すべきであると通知された。モニタリング計画書とは「治験のモニタリングの戦略、方法、責務及び要件を記述した文書をいう」とGCP省令第2条ガイダンスに記載されている。さらに治験固有のリスクに応じて作成することが第21条のガイダンスに書いてある。したがって、治験ごとに作成するモニタリング計画書にはどのような項目を書くのかということを、モニタリング手順書で定めることになる。
 米国FDAではCentralized monitoringとOn-site monitoringの2つのモニタリング方法を推奨している。Centralized monitoringは、実施医療機関以外の場所から遠隔で実施するものであり、以前は電話やFAXが用いられたこともあったが、近年ではweb会議システムやリモートSDVシステムを利用することになろう。そしてOn-site monitoringは実施医療機関を訪問して実施する従来のモニタリングである。どちらの方法を、あるいは両者を合わせた方法を採用するのかは、治験の規模や領域やデータ収集システムなどによって異なるものであり、どのような治験の場合にどの方法で行うのかをモニタリング手順書で定めておく。 

モニタリング報告書
 実施医療機関及び治験に係るその他の施設への訪問又は治験に関連した連絡を行う度に、治験依頼者にモニタリング報告書を提出することがGCP省令第22条(モニターの責務)で規定されている。モニタリング報告書は任意の様式に記載することはないので、記載すべき事項を網羅した様式をひな形として、あるいはシステムを用いても良いが、その方法をSOPに定めておく。
 モニタリング報告書には、治験依頼者による点検とフォローアップが必要とされており、これらの手順に盛り込む必要がある。さらに、モニタリング実施後何日以内にモニタリング報告書を作成し、何日以内に点検するのかを規定しておくのも一般的である。

監査担当者の要件
 GCP省令第23条(監査)第1項のガイダンスに「治験依頼者は、治験のシステム及び個々の治験に対する監査について、監査の対象、方法及び頻度並びに監査報告書の様式と内容を記述した監査手順書を作成し」と記載されている。前述のモニターと同様に監査担当者の要件を監査手順書に記載しておくことになっており、監査担当者の場合は教育訓練と経験が要件として求められている。モニターには知識が、監査担当者には経験が、それぞれ要件としてGCP省令で求められているということになる。
 多くの治験依頼者では、新卒の社員を数か月間にわたって教育して知識を身に付けさせてモニター認定をしていることが多い。一方で監査担当者の場合は新卒者ではなく、モニタリングや薬事などの経験者を監査部門に社内異動させていることが多いようだ。監査手順書に記載する監査担当者の要件については、背景(学問領域、業務経歴)、教育訓練、能力・行動の3つに分類される事が多い1)
 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます