GxPデータインテグリティガイドラインの概要
1 はじめに
近年、データインテグリティに関する問題は増加しつつあり、いくつかの規制当局や団体がデータインテグリティに関するガイドラインを発行している。2015年にMHRAとWHOはドラフトガイドライン1,2を発行、2016年にはFDAとPIC / Sも、やはりドラフトガイダンスを発行し、MHRAとWHOは改訂したガイダンスを発行した3,4。 PIC / SおよびWHOガイドラインは最も包括的であり、データインテグリティのリスクとコントロールの詳細な例を提供している。すべてのガイドラインで、リスクベースのアプローチによりデータインテグリティの管理を実施することができ、GxPデータのインテグリティを確保するために、紙ベースの記録にのみ依存することは困難であることが示されている。この記事では、データインテグリティの主要概念の概要を説明し、データインテグリティをサポートするために使用できるリスクベースの管理について述べる。
2 データインテグリティの概念
2.1 定義
データインテグリティのガイダンス文書は、データインテグリティに関連するいくつかの鍵となる定義を提供しており以下の表1に要約した。FDAガイダンスは生データやデータの定義を提供していない。しかし、FDAのGLPレギュレーションでは、生データの定義が提供されており表に示した。ガイダンスでは定義については「データ」という用語に焦点を当てており、WHOおよびFDAの定義に示されているように、これはGxP規制の対象となるすべての記録も指している。ガイダンスには、医薬品業界でよく使われる用語ではあるが、GxP記録の定義はない。一般に、GxP記録の用語にはデータと生データが含まれ、以下GMP環境で見られるさまざまなタイプの文書を包含したGMP特有の他の定義を示した。
2.2 データライフサイクル
データライフサイクルはガイダンスに記載されており、データが最初の作成から最終的な廃棄に移行する各段階を指す。典型的な段階は以下に示したが、他には、異なるフォーマットへの移行(例えば、紙フォーマットから電子フォーマットおよびその逆)、異なる所有者への移行、あるシステムから別のシステムへの移行、および異なる構造への変換 (例えば、データベースなどの操作構造からxmlなどの長期アーカイブ構造へ)。
- 最初の生成、収集と記録
- 伝達
- データ処理(変換および移行を含む)
- 報告と使用
- 保持、アーカイブ/検索
- 処分
データライフサイクル全体を通じて、データの内容と意味は一貫していなければならず、動的な性質とメタデータとの関係を維持する必要がある。データの動的性質は、フィルタリングや処理などの相互作用の能力である。たとえば、CSVデータファイルの動的性質には、ソート、フィルタリング、および再分析が含まれる。しかしながらPDF形式の同じデータでは、これらの動的機能は保持されない。
2.3 データインテグリティの属性 (ALCOA)
データインテグリティの定義は表1に示したが、すべてのガイダンスでデータインテグリティを特定するためにALCOA属性を参照している。 ALCOAは、1990年代初めにFDAの検査官によってデータインテグリティに必要な特性を説明するため作成された。以来、追加のデータインテグリティ属性が追加され、今日では「ALCOA +」という用語がよく使用される。ALCOA +属性の解釈に関してはガイドラインの間で若干のバリエーションがあり、以下の表2にガイドラインに基づいてそれぞれのALCOA +属性の一般的な説明を示した。
2.4 データインテグリティガバナンス
データインテグリティガバナンス(またはデータガバナンス)は、ライフサイクルを通じてデータインテグリティを保証するためのルールと手順である。データガバナンスの基本的なルールと組織構造は、上位の方針や標準書に規定されており、データインテグリティを保証するための詳細な手順は、工程のSOPおよび/または特定のSOPに組み込まれている。高レベルでは、ルールは独立した文書(例えば、データインテグリティポリシー)として文書化されてもよいし、品質マニュアルや文書/記録管理基準のような別の文書に組み込まれてもよい。データ保全ポリシーの重要な要素は次のとおりである:
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