知的生産性を革新する組織構造・空間構造【第8回】

8. 空間構造の結論

6.5.空間構造の結論

空間要素はこれですべてではない。他にも独自の要素を取り込んだ施設もあるが、これまで述べた空間の要素を巧みに構成して理想的な空間構造が出来たとしても、組織構造や文化がリンクしていなければ、成果を上げることは出来ない。
一例としてC社の経験を紹介する。
C社の研究所は吹き抜けを中心にオフィスを配し、階段を設置し、さらに上下階から見える広い打ち合わせコーナーを階段の中間階に配置した。
そこには自動販売機も設置し、コーヒーも飲めるようになっている。
上下階を行き来するとき互いに視線が合い相手を視認でき、自然に出会いが増加し、異部門のコミュニケーションの機会が増える空間構造を実現した。しかし当初、期待したようにコミュニケーションが行われなかったのである。
その理由は研究者がインタラクション・コーナーで話をしていることが、研究をしないで業務を怠けているように見えると考えていたからである。
C社には、先ほどのB社のコーヒーショップカルチュアのような組織文化と組織構造がなかった。空間構造が如何に優れていても組織文化と組織構造がこれにリンクしていなければ組織能力はすぐに発揮できない一つの例である。
これをわかりやすく、スポーツの能力に例えると、空間構造は身体能力であり、
組織構造は技術の能力であり、組織文化は気力ということになる。
身体能力がいかに優れていてもそれだけでは競技に勝つことは出来ない。技術能力が高くても、同じ技術能力を持つ身体能力の高い相手には勝つことが出来ない。両方の能力を持っていても、更に気力の高い選手に勝てない。また、団体競技でマネジメント能力や組織アルゴリズムがなければ勝てない。
高い身体能力、技術能力に強い気力、優れたマネジント、組織アルゴリズムがあれることで、競争に勝つ条件が揃うのである。
 
終わりに
知的生産性の向上は知識経済社会の中、研究開発だけでなく、製造やサービスから物流、販売にいたるまで、知識の運用が必要なのである。知識統合経営は経済開発の内容を変え、新しい状況を創り出しつつある。グローバルな統合文化と新しい社会構造の発見が未来の希望的時代を構成する。日本だけでなく世界の既存システムが破綻を見せ始めている。懐古的帝国主義的な危険な思想や主張がその隙に蔓延ろうとしている。利己的資本主義経済から一段高い理念の資本主義経済への民主主義の発展がなければ、世界の危機から逃れることは困難である。
科学、テクノロジーの更なる発展による恩恵だが人間の進歩を表しているのではない。人類全体の前進はその恩恵や機会を等しく分けることできるモラルの進歩が重要なもう一つの恩恵なのである。
単なる知識から叡智へ発展させるプロセスが2つの恩恵の統合による進歩になる。

―――

参考文献
糀谷利雄/野間彰(2008)『ダイレクトコミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる研究開発革新』日刊工業新聞社
トーマス・J・アレン/グンター・W・ヘン(2008)『知的創造の現場』(糀谷利雄/冨樫経廣 訳)ダイヤモンド社
 

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