GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第66回】

QA活動

1.安定供給
 GMP省令が改正され、昨年、事例集も交付された。製造販売承認書との齟齬等、特にジェネリック医薬品の品質問題で、医薬品の供給不足が続いている。中国でも、コロナ感染の影響もあり、解熱鎮痛剤等の医薬品不足が報道されている。抗コロナウイルス薬等も開発されているが、対処療法薬など、多くの医薬品が供給不足に陥っている。効能効果が同じで、有効成分が同じであっても、患者にとって、飲みなれた薬と異なれば、不安となるのは当たり前である。
 供給不足に陥った原因は、GMP違反を起こした製薬会社からの出荷が停止となり、他の製薬会社への発注が集中したことによるとの厚生労働省の見解である。多くのジェネリックメーカーでは、少量多品種生産である。1ロットの生産規模も少なく、ロットスケールを変更するにも、製造販売承認事項の変更が必要で、安易な変更が許されない。薬事手続きをしても、その申請等が認められるまで、ロットスケールの変更ができず、キャンペーン生産して、凌ぐしかない。安定供給をすることは、製薬企業としての責務である。しかし、現状、医薬品の供給不足が生じている。QA部署は、安定供給に責任がないかと問われると、責任がないわけではない。ただ、QA部署として、品質に疑問があるものは出荷することは認められない。品質に疑問とは、そのロットの品質に問題がないことを保証できない場合になる。その工程で、トラブル等が生じて、品質が担保できていない場合、出荷を停止する責任がQA部署にある。異物が発見されたり、試験検査結果が規定内であっても、通常と異なるならば、その原因を探り、ロットとしての品質を担保できていることを確認するのは、QA部署の役割である。その意味で、QA部署は、品質が担保された製品の安定供給に責任がある。
 回収になった時、当局からそのロットに限定する根拠を求められる。異物が混入したとクレームがあり、回収する場合、混入した経路、原因を探る。混入したロットの前後に清掃、洗浄等の実施状況からロットを限定していく。異物の混入が均一になるわけがないので、JISの抜き取り検査基準等により、ロット内の異物の混入を確認することになろう。ある工場で、ないこと0(ゼロ)である照明ができないと主張されたが、無菌の保証で、10-6のような考え方をすることも根拠となる。その根拠を示し、品質を担保し、安定供給することがQAの業務である。
 現状の医薬品供給不足を招いたといわれるGMP違反は、品質システムが適切に稼働しておらず、QA活動が十分、機能していなかったことによるといわれている。自己点検やCAPA、変更管理におけるリスクマネジメント等、QAとしてのチェック機能が働いていなかったために引き起こされた。そのため、当局は、QAの増員を求めている。しかし、QAスタッフをただ増員しても、そのスタッフにそのスキルがなければ、効果は得られない。スキル習得には時間がかかる。スキルを習得し、チェック機能が働くまで、安定供給ができなければ、困るのは患者である。QA活動が十分機能できる体制づくりが早急に必要である。安心安全な医薬品の安定供給体制を構築できるようQA活動、人材育成を緊急に構築すべきである。
 

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