いまさら人には聞けない!微生物のお話【第33回】

2. 微生物試験における安全管理

微生物試験に限りませんが、試験を安全に行うには、正しい手順を遵守しなければなりません。重要なのは、なぜその手順が正しいのか、それを遵守しないとどのような危険があるのかを理解することです。加えて微生物試験においては、物理/化学試験にはない「バイオセーフティ」の観点が必要になります。微生物ラボのセーフティ指針として、世界保健機関(WHO)の「実験室バイオセーフティ指針−第4版」注)が公表されていますので、参考にしてください。

注)実験室バイオセーフティ指針−第3版は、Webで公開されています。
https://apps.who.int/iris/bitstream/10665/42981/6/9241546506_jpn.pdf

以下にその主なポイントを解説します。

(1)    適切な設備

一口に微生物ラボといっても、クリーンルームもあれば微生物を培養するための部屋もあります。それらに対する要求は、決して同等ではありません。感染リスクの低い微生物のみを扱う一般の微生物ラボであっても、部屋の目的により望まれる空調、換気回数、室圧設定などが変わってきます。また更衣、手洗い、局所排気などの設備も必要です。そのため新たに微生物ラボを作る場合は、できれば企画や設計段階から実績のあるエンジニアリング会社と協議しながら、全体のレイアウトや各部屋の仕様を決めることをお勧めします。

(2)    禁止事項

①    飲食、喫煙

一般の微生物ラボでも、感染リスクは低いものの、ある程度の病原性のある微生物は使う機会があります。たとえば微生物試験で要求される培地の性能試験では、Staphylococcus aureusCandida albicans などを使いますが、これらはリスクレベル2の病原体です。(リスクレベルについては後述) これらの微生物をラボで使う以上、ラボ環境にはこれらが存在する可能性があるということを前提に、ラボを利用しなければなりません。その際まず重要なのは、ラボ内での飲食や喫煙の禁止です。非病原性の微生物のみを使う場合であっても、食べかすなどがこぼれた場合、そこで微生物が増殖してしまう可能性がありますので、微生物ラボでは、飲食や喫煙は禁止です。

②    ラボ内でのメイク、コンタクトレンズの着脱

病原微生物は健康な皮膚から直接感染することは稀ですが、粘膜からの感染は非常に起きやすいことが知られています。注)そのため微生物ラボ内で化粧をすることやコンタクトレンズの着脱を行うことは、感染する可能性がありますので、これらの行為は禁止です。

注)細菌類に関しては皮膚からの感染は稀ですが、皮膚疾患の原因となるような真菌類は、皮膚から感染します。

③    口を使ってのピペット操作

微生物試験ではピペットで液体を分注する操作を行うことが多くあります。その際、感染防止(誤飲防止)、逆に口から試験系への汚染防止のために、ピペットを口で操作することは禁止です。液体の分注操作には、安全ピペッター、ディスペンサーピペットなどを使うようにしてください。

④    サンダル履き

これは微生物ラボに限りませんが、サンダル履きの場合、ラボ設備に足を引っかけて転倒させるなどすることがあります。ラボ内に入出する際に、ラボ専用の滑り難いクツに履き替えるようにしましょう。

(3)    更衣/手洗い

微生物ラボに入室する時、また微生物ラボから退出するとき、必ずやらなければならないのが更衣と手洗いです。
微生物ラボに入る時には、実験衣への更衣、グローブ、保護メガネ(ゴーグル)、キャップの着用、クツの履き替えなどを行います。ラボから出るときは、これらは外します。そして入出の際には、必ず手洗いを行います。入室時の手洗いは外部の微生物を除去するため、退出時の手洗いは使用した菌を室外に持ち出さないためです。もちろん通常行う石ケンによる手洗いでは、付着している微生物を100%除去することはできませんが、リスクを低減させるため、絶対に必要なことであると認識しましょう。

(4)    準備と後片付け

微生物試験に限らず、試験の準備と後片付けは必須です。これは試験を安全かつ効率的に進めるとともに、ミスや汚染を最小限に抑えるために必要なことです。


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