製薬工場におけるヒューマンエラー対策の考え方【第1回】はじめに

●要旨
 医薬品の製造現場におけるヒューマンエラーの発生は、製品回収や営業停止などを招き、大きな経済損失につながるだけでなく、その企業の品質保証体制に関する信頼失墜という致命的な問題に発展する場合もあります。人間は本来、不完全でミスを起こすものであります。一方、医薬品は人間が直接、人体に適用し人命に直接関与するもの(生命関連物質)であり、その有効性、安全性確保のための品質を保証することは極めて重要となります。
 ヒューマンエラーの低減化対策は製薬工場の最重要課題であり、この課題に対しこれまでの経験・知見を基礎に、人間本来の持つ特性を含め様々な観点から考察し、ヒューマンエラーの具体的な低減対策を考えていきたいと思います。

●はじめに
 ヒューマンエラーと聞いて皆さんは何を想起されますか? 
 そうですね、ヒューマンエラーという言葉を聞いて先ず思い出されるのは、航空機など交通の事故と患者の取り違えなどの医療過誤、この2つだと思います。前者の最近の事例としては、昨年12月に沖縄うるま沖で発生したオスプレイの墜落事故、もう少し時間を遡ると同じく昨年1月に軽井沢で起きたスキーバスの転落事故があります。
 また、医療過誤としては、昨年7月に同じ公立の医療センターで発生した2件の投薬ミスや、一昨年12月に発生した、乳がん患者を取り違え手術に及んだ某がんセンターでの患者取り違え事件があります。
 これらは、いずれも人命にかかわるため、一旦、発生すればマスコミ報道され、巷間、その原因に関し様々な意見、情報が飛び交います。そして、識者がテレビなどで、原因に関する考察などをコメントする際、この「ヒューマンエラー」という言葉が使用されます。
 
 時事報道を主体としたテレビのワイドショーなどでは、「失敗学」の専門家などを交え、持てる知識、知恵を出し尽くし時間を掛けて再発防止策についても議論が尽くされます。しかし、こういった、いわゆる「ヒューマンエラー」は忘れたころに再発し、報道も同じことを繰り返しているのが現状です。
 このように、人命に関わり、本来、特に慎重な対応が必要なことが周知であるにもかかわらず、再発防止が容易でないのが「ヒューマンエラー」です。

 一方、今回の課題である「製薬工場におけるヒューマンエラー対策」は、上記のような人命に直結する事故や事件とは少し趣を異にしますが、その最終の目的とするところは同じで、やはり人の生命の安全や健康の確保につながります。

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