GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第61回】

品質システム

1.チームビルディング
 TBS火曜ドラマ「ユニコーンに乗って」第6話で、広末涼子が演じる羽田早智社長が、永野芽郁が演じる成川佐奈へのアドバイスとして「チームビルディング」が大事であることを告げる場面があった。「チームビルディング」について、次のようなコメントを見つけた。

チームビルディングとは、「メンバーの能力や経験を最大限に引き出し、高いパフォーマンスを上げるチームを作る」ことです。
チームビルディングの目的
・コミュニケーションの活性化
・組織としての結束力を高める
・目標達成の確率を高め
 

 製造所の責任者から現場の従業員に対して、手順書を守らない、衛生管理を理解していないなんて言葉をよく聞く。現場の作業者からは、手順書が分かりにくい、指示が的確にでないなど、上司に対する不平不満も耳にする。誰が悪いのかすぐ犯人捜しを始めたがる経営陣も多いだろう。そして、教育訓練が不足していると安易な結論となる。これこそ、チームビルディングができていないのではなかろうか。
 GMPが求める教育訓練を精神論的なものや規律を正すものにしたがる人も多いように思う。GMPの基礎教育で、ヒューマンエラー防止ができるようになる文書管理を求める人は多い。ヒューマンエラーが起きるのは、上司の指図を100%理解していないためである。口頭ではなく、手順書や指図書など紙面で伝えたから100%理解できるものではない。それは、受け手の理解力だけの問題ではない。各人の経験や知識により、理解した程度に差が生じる。話し手と受け手の間で、何を伝えたいのか、何を理解したかの確認が必要となる。つまり、コミュニケーション不足なのである。ヒューマンエラーが絶えない職場は、チームビルディングができていないのである。
 GMP省令が改正されて、教育訓練における実効性評価が盛り込まれた。PIC/S加盟時に実効性評価は求められたが、その評価方法に悩まれている製造所も多いことだろう。実効性評価とは、その教育訓練のシステム、プログラムが実務に反映されていることを確認することにある。もし、その教育訓練を受けた者の理解が不十分で、ヒューマンエラーが発生した時、その教育訓練システムを否定した実効性評価を下さなければならないだろうか。その教育訓練を受講した者が10人いて、10人全員がヒューマンエラーを起こしていたなら、そのシステムは実効性評価として、問題となり、改善しなければならない。しかし、9人は問題なく、その作業を行っており、ヒューマンエラーを起こした者1人だけならば、システムが問題とは言えない。ただし、その教育訓練を受けて、そのスキルを習得したと判定したことに問題がある。受講した者の習得度について再評価をし、習得度の判定方法を是正する必要がある。習得度判定において、受講者がその作業について十分理解できたか確認するためにコミュニケーションを取る必要があろう。
 コミュニケーションの活性化、組織としての結束力を高め、目標達成の確率を高めるために、ぜひ、チームビルディングを成し遂げていただきたい。チームビルディングは、1回で済むものではない。継続的改善として、PDCAサイクルのように、循環していかなくては達成できない。達成できたと思った瞬間に、そのサイクルは止まってしまう。チームビルディングのサイクルの構築を図るべきである。
 

 

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