業界雑感 【2022年9月】

2022/10/07 その他

アンジェスが臨床試験を進めてきた新型コロナウイルスワクチンが期待した効果が確認できず、開発を中止するとの発表があった。

 アンジェスが臨床試験を進めてきた新型コロナウイルスワクチンが期待した効果が確認できず、開発を中止するとの発表があった。いち早く開発に名乗りを上げ、しかも「大阪産ワクチン」として期待と注目を集めていただけに大変残念な結果ではあるが、医薬品開発の常としては致し方ないのだろう。ただコロナ感染拡大から2年半余りが経過する中、ファイザー・モデルナをはじめとして国内承認されている新型コロナワクチン5種類が全て海外製薬メーカー由来というのも寂しい。開発費や基盤技術・治験環境の問題もあるのかもしれないが、それより問題なのは官民ともに意思決定やビジネスプロセスのスピード感の違いなのではないだろうか。オミクロン株「BA.5」による第7波がようやく収束の兆しが見えてきたところで「BA.1」対応ワクチンの接種がようやく始まるというのもちぐはぐな気がしている。
 2021年度に医療機関に支払われた医療費(概算)が約44兆2千億円で過去最大になったとのこと、統計としては全額自費となる診療などを除いたものなので、国民医療費としては45兆円を超えることになりそうである。2020年度はコロナ感染拡大による受診控えによって一旦減少しているが、その特殊要因を除けば順調(?)に右肩上がりの増加をしているということになる。
 医療費が増加を続けているにもかかわらず医薬品市場は横ばいの状況が続いている。物量が増えても価格が下がれば売り上げが伸びないのは当然で、わが国の医薬品市場はグローバルのシェアのなかでも地盤沈下を続けている。薬価の話はここで何度も書いてきてもはや「愚痴」レベルにしかならない気がするのでやめておくが、最近になって薬価制度改革や流通マージンに関する議論も進んでいるようなので、注目していきたい。

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執筆者について

村田 兼一

経歴 村田兼一コンサルティング株式会社代表取締役。
1978年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。注射剤製造、無菌バリデーション技術開発、FDA対応、基幹システム(SAP)開発等に従事後、生産本部にて中期戦略企画、工場分社化推進・合併準備委員会に携わる。合併後のアステラス製薬では、戦略企画の後、製造委受託の推進を担当する。
2012年に退社し、村田兼一コンサルティング株式会社設立。工場の原価をはじめとする計数マネジメントを中心に、SAP開発を含むサプライチェーン全般の管理・改善を専門とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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