医薬品工場建設のノウハウ -プロジェクトの成功に向けて-【コラム-5】

コラム-5 プログラムと設計

はじめに
本コラムでは、医薬品の生産施設、研究所など多数のプロジェクトに建築意匠設計の立場から参画し、施設のコンセプトを構築してきた経験から、各計画・設計の段階について述べるとともに、製薬企業と設計者が共有すべき事項を考えたい。
 
医薬施設を計画する際には、生産・流通、研究開発、管理施設を単にGLP,GMP適合施設として構築をするだけでなく、3つの要素が相互に関係し合い新しい価値を生みだす複合施設として成立させることが重要と考える。
各要素が関連し合った複合施設が、会社を発展させる生産能力、開発能力、管理能力を促進し、その主体である組織、空間、行動原理を体系化(アルゴリズム)する。
施設の構成はこの体系化の考え方の反映であり体系化の促進である。
具体的には、課題、条件の整理からコンセプトの創出までのプログラムの作成、さらに基本構想(CD; Conceptual Design)を行うことで、施設構成の基本的な考え方が出来上がる。更に基本計画(SD; Schematic Design)まで行うことで体系化した施設構成が確定する。次の工程の基本設計(BD; Basic Design)・詳細設計(DD; Detail Design)で設計組織が変わっても、基本的な目的は達成される。なお、CD、SDの要素をまとめてCDまたはSDと呼ぶ場合が多い。
 
プログラムの作成
施設を構成する多様な要素を整理し、施設構成の理念、原則を確定することがプログラムの作成である。最適なプログラムの作成は成功する施設の第一条件である。プログラムがなければ施設の設計は迷走する。プログラムは施設設計のバイブル(原典)である。
初めに各々の構成要素の課題は何かを見つけ、それを解決し各々の最適化を実現することが必要である。しかし各々の構成要素の最適化が必ずしも全体の最適化をもたらすものではない。部分最適を全体最適に繋げるためには体系化が必要である。しかしながら体系化のプロセスで、全て合理的な決定ができるわけではない。全体最適は永遠に完成しないが、完成に向かって努力し続ける目標である。この非合理的な努力が創造性を生み出し企業の競争力を生み出すのである。完全な全体最適はないが、あり方(方針)の決定が必要となり、意志決定者がある段階で決定しなければならない。これはどの様な理念、原測で全体最適化を進めるかを決めるプログラムの重要課題である。
プログラムは基本構想から工事完了まで、施設計画の決定に関わるクライアントとプログラム作成者の共通コミュニケーション・ツールである。プログラムはプロジェクトをスムーズに進めるために立ち返る共同の規範である。

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